韓国の超エリート・ソウル市長が命を絶った「本当の理由」

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7月13日に営まれた告別式はインターネット上でも中継された。出棺の際には泣き崩れる支持者の姿も見られた。画像:ロイター/アフロ

「すべての人に申し訳なく思う」

遺書にはそう綴(つづ)られていた。

7月10日未明、韓国・ソウル市内の山中で、現役市長だった朴元淳(パク・ウォンスン)氏(64)が遺体で発見された。朴氏は9日午前から行方がわからず、捜索が続いていた。姿を消す前日の8日、元秘書の女性が朴氏からのセクハラ被害を訴える告訴状を警察に提出しており、それを受けて自ら命を絶ったとみられている。元秘書はSNSで下着姿の写真を送り付けられたほか、膝のアザにキスをされたり、市長室のベッドルームで身体を触られたこともあると、被害の実態を告発している。

亡くなった朴氏の経歴について、コリア・レポート編集長の辺真一氏は次のように語る。

「彼は人権派弁護士として、韓国初のセクハラ訴訟で被害者を弁護し、勝訴しました。〝セクハラは犯罪〟という認識を韓国社会に浸透させた、まさに女性の味方です。’11年の市長選で後に保守派ナンバー2となる女性議員に圧勝。以来二度も人気候補を打ち破って再選し、三期連続でソウル市長を務めていました」

’15年、韓国でMERSウイルスが蔓延した際に、朴氏は政府の対応策に背(そむ)いて市独自の対策を打ち出し、防疫を成功させている。今回のコロナウイルスに関しても、状況をうまくコントロールして感染拡大を防いでいると、世間はソウル市の対策を高く評価していた。人気も実力も兼ね備えた彼は、さらに上のポストを目指していた。辺氏が続ける。

「以前から大統領選への野心を見せていて、実際に朴槿恵(パククネ)元大統領が弾劾された際にも手を挙げています。その時は党内基盤が弱く、結局文在寅(ムンジェイン)大統領が候補となりましたが、最近ようやく、党内に派閥を築くことに成功していました」

山中から遺体を運び出す警察官たち。捜索にはドローンや警察犬も導入された 写真:時事通信社

大統領選へ向け着々と地固めをしていた朴氏だったが、セクハラの告訴からわずか一日でこの世を去ることとなった。日本の政治家なら、知らぬ存ぜぬを押し通して政界に居座りそうなものだが、彼はなぜ命を捨てる決断をしたのだろうか。

「今回はセクハラの問題なので、代表的な保守系新聞はもちろん、中立系や現政権寄りのメディアも、朴氏を叩かざるを得ません。全マスコミが手ぐすね引いて構えているわけですから、耐えられなかったのだと思います」(前出・辺氏) 

在韓ジャーナリスト・李正宣氏も、韓国独自の文化についてこう指摘する。

「韓国には亡くなった人を非難しないという社会的な雰囲気があります。かつて盧武鉉(ノムヒョン)元大統領が賄賂(わいろ)を受け取った疑惑を受けて自殺した時には、事件そのものがなかったことになりました。今では国民が尊敬する大統領として語られています。朴氏も、自殺によって自身の名誉を守ろうとしたのではないでしょうか」

生きていれば糾弾され続けるが、死んでしまえば英雄になれる。そんな韓国社会の風潮が、朴氏が自殺を選択する大きな理由になったのかもしれない。

『FRIDAY』2020年7月31日・8月7日号より

  • 写真ロイター/アフロ AFP=時事

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