TOKIO脱退 長瀬智也の「高い演技力」を再評価すべき理由 | FRIDAYデジタル

TOKIO脱退 長瀬智也の「高い演技力」を再評価すべき理由

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来年3月いっぱいで独立することになったTOKIOの長瀬。リーダーの城島はグループ解散を頑なに否定したとか……
来年3月いっぱいで独立することになったTOKIOの長瀬。リーダーの城島はグループ解散を頑なに否定したとか……

「ジャニーズで一番演技がうまいかも」

TOKIOの長瀬智也(41)が、来年3月いっぱいをもってジャニーズ事務所を退所し、グループから脱退する。同4月以降はフリーとなり、裏方としてクリエーターになるという。

『宙船(そらふね)』(2006年)など数々のヒット曲を持つグループのメインボーカルであるため、本人の希望であろうが、裏方という選択を惜しむ声が音楽界内には強い。

残念がるのはドラマ・映画関係者も同じ。グループがCDデビューする前年の1993年に『ツインズ教師』(テレビ朝日)へ出演してから、2017年の『ごめん、愛してる』(TBS)まで、長瀬はほぼ毎年、ドラマに登場していた。

長瀬は「本業はTOKIOというバンドの一員」(長瀬)と強調してきたが、役者としても高い評価を受け続けていた。かつて日本テレビのスタッフは「ジャニーズで一番うまいかもしれない」と評していた。決して、オーバーではないだろう。

事実、長瀬は医者などのインテリが演じられる(フジテレビ『フラジャイル』2016年)。一方で無教養な不良も得意(同『3億円事件 20世紀最後の謎』2000年、ほか)。専業のベテラン俳優でもインテリも無教養な人物も出来る人はそう多くない。

また、シリアスなラブストーリー(フジ系『砂の上の恋人たち』1999年、ほか)もやれるが、コメディ(TBS『タイガー&ドラゴン』2005年、ほか)もOK。この幅の広さもベテラン役者並みか、それ以上だ。

実のところ、本人はラブストーリーだけは嫌だったらしく、出演に違和感を抱いていた時期もあったという。

「恋愛に左右される男なんてだせぇと思っていた」(2017年7月23日付読売新聞朝刊)

もっとも、自分は表現者だと気づいたことで、役柄への拘りはなくなったそうだ。

ドラマ史に残る大ヒット作となったTBS『池袋ウエストゲートパーク(IWGP)』(2000年、2003年)は、長瀬が主人公のトラブルシューター・真島誠に扮していなかったら、成功していたかどうか分からない。凡作になってしまった気がする。

誠は男気と正義感が強いものの、照れからそれを隠し、口癖は「めんどくせぇ!」。だが、助けを求められると、すぐに立ち上がり、捨て身でその相手を守る。相手がヤクザであろうが、ストリートギャングだろうが、ひるまない。誠に平成のニューヒーロー像を見た人は少なくなかったはずだ。

長瀬が誠役を成功に結び付けられたのは、高い演技力を持っていることに加え、自身のキャラクターも誠役に合っていたからに違いない。

長瀬は誰もが認める二枚目であるものの、現代風のすっきり爽やか系ではなく、野性味がある。この顔と雰囲気でなかったら、ストリートギャングらに迫力負けしていただろう。すっきり爽やか系はヤクザとの対峙も似合わない。

また、誠はときに頭脳戦を演じたが、これも長瀬だからハマった。野性味オンリーの役者では難しかった。医者役も出来る長瀬だからこそ、知恵比べに不自然さを感じさせなかった。おまけに長瀬はコメディも得意だから、シリアスなストーリーに挿入される息抜き的な場面で、見る側を笑わせることもできた。

ちなみに長瀬自身のストレス解消法はこうなんだそうだ。

「パンツ1枚になって爆音で音楽を聴くとスカッとします。あ、靴下もはきます、足元が冷えないように。ジャンルはジャズからメタルまで何でも」(同)

どうやら素のキャラクターはやはり誠に近いらしい…。

そもそもTOKIOに所属する音楽人という意識が強かったため、ずっと役者をやっていくつもりはなかったようだ。

「役者じゃないからこそ、今までもできてきた気がする。僕の場合は主演でやらせてもらうのがほとんど。自分というキャラクターを使って、このメッセージを伝えるんだという気持ちでやらせてもらっている。僕が役者だったら、ほかの作品で脇役をやったりしていますよ」(2017年7月7日付、スポーツ報知)

音楽人としてはヒット曲の作詞・作曲を手掛け、役者としては簡単に名演を見せる。天才肌なのだろう。勿体ないが、クリエーターとして裏方にまわりたい気持ちもうなずける。

やはり名作の誉れ高い『白線流し』(フジテレビ、1996年)も長瀬の存在が極めて大きかった。長瀬の多面性が生きていた。

長瀬の役柄は松本市の松本北高校の定時制生徒・大河内渉。母親が家を出て行ったあと、父親が病死し、引き取られた親戚の家で肩身が狭い思いをしたため、中学卒業後は工場(相馬製作所)で働きながら高校に通っている。夢は天文台で働くこと。

抱えているものが一般的な高校生よりずっと大きいため、笑顔を見せているときも陰がある。孤独も抱えている。長瀬は繊細な演技を求められたわけだが、見事に演じきった。

酒井美紀(42)や柏原崇(43)らが全日制に通う友人たちの役を好演したこともあって、視聴者はこのドラマの続編を希望。シリーズは2005年まで制作が続いた。見る側は10年にわたって渉たちがどう成長するのか楽しみにした。制作者と長瀬ら出演者、視聴者が幸福な関係で繫がったドラマだった。

また、視聴者の年齢層が比較的高い放送枠で流されたため、それまではアイドルに興味がなかったものの、このドラマを見て長瀬のファンになったという人は多かったようだ。今も「TOKIOのほかのメンバーにはあまり関心がないが、長瀬のドラマは必ず見る」という人は少なくないはずだ。

1993年以降、ほぼ毎年ドラマに出演していた長瀬が、『ごめん、愛してる』を最後にドラマに出ていなかった。これもジャニーズ事務所退所の予兆だったのかもしれない。もともと長瀬にとって関心が薄かったドラマに対し、気持ちが向かわなくなっていたのかも知れない。

それにしても役者・長瀬智也がもしもこのまま消えてしまうのだとしたら、あまりに惜しい。

  • 取材・文高堀冬彦

高堀 冬彦

放送コラムニスト、ジャーナリスト。1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部記者、専門委員、「サンデー毎日」編集次長などを経て現職。スポニチ時代は放送記者クラブに所属

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