「暴走あおり運転男」が初公判で語った理解不能な言い分

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茨城県守谷市の常磐道をはじめ、3県の高速道路であおり運転を繰り返したとして、強要と傷害の罪で起訴されていた、会社役員・宮崎文夫被告(44)の初公判が7月27日に水戸地裁(結城剛行裁判長)で開かれた。

昨年の夏、世を騒がせたこの事件。宮崎被告は2019年8月10日、常磐道で当時24歳男性の運転する車に対してあおり運転を行ったうえ、男性を殴りつけて逃走。傷害容疑で指名手配され同月18日、大阪市内で逮捕された。

昨年8月20日、茨城県警取手署から送検された宮崎容疑者

坊主頭にスーツ姿で起訴事実を全て認める

当時、被告が行ったあおり運転の映像をニュースで目にした人も多いことだろう。昨年の逮捕時は警察官に対し「やってない」と叫んでいた宮崎被告。この日は坊主頭にスーツ姿で法廷に現れ、罪状認否では「間違っているところはありません」と全ての起訴事実を認めた。マスクをつけており、若干声がこもる。

宮崎被告はこの常磐道でのあおり運転だけでなく、昨年7月に静岡県浜松市の東名高速、愛知県岡崎市の新東名高速でもあおり運転を行っており、合計3件の強要罪と1件の傷害罪で起訴されている。いずれの事件でも、自分が運転していた車を、被害者らが運転していた車やトラックの前に割り込ませたうえ、急に減速、蛇行したりするなどして、被害者らの運転車両を大幅に減速および停車せざるを得ない状況に追い込んだという。

常磐道では被害男性の運転していた車を停めさせたのち「てめえ、降りろ、ぶっ殺すぞ、謝れ」「お前が俺の邪魔した、降りてこい、ぶっ殺してやる」などと言いながら男性の車のドアを開けようとしたうえ、開いている窓から男性の顔面を拳で5発殴った。

「殺されるかと思った。命を落とす事故が起きていてもおかしくなかった。とにかく許せない。事件の報道で、あおり運転が危険であると注目された。厳しい処罰を望んでいる」

と、男性は調書で述べている。また、いずれの事件でも宮崎被告が運転していた車には女性の同乗者がいたが、彼女は調書で、宮崎被告が今回起訴された事件以外にも、危険な運転を繰り返してきたことを明かした。

「接触の恐怖があったが、被告は怒ると手がつけられなくなり、暴力をふるわれることもあったので、注意しなかった。運転席から顔を出して大声で何か言っていたが、こうした出来事はしょっちゅうだったため、何を言っていたか記憶にない」(同乗者の調書)

「平成31年に知り合ってから被告は運転時に、蛇行や急ブレーキなどで後続車を止めたりすることが何度もあった。高速では5〜6回か、もしかしたら10回くらいかもしれない。一般道をあわせると数はわからない。車を止めて相手のところに文句を言いに行く時、先に私におりて撮影するように言っていた」(同)

「やられたら何倍もやり返してしまう……」

一歩間違えれば死傷者の出る大事故につながりかねない、あおり運転。危険な行為を繰り返していた理由について宮崎被告は「自分の思いを分かってほしかったからだ」と語った。被告人質問では、マスクからフェイスシールドにつけかえ、声も聞き取りやすくなる。

「きっかけとしては、事件前、自分が追い越し車線を走っていたら、走行車線から相手の車が急に車線変更してきて、自分が急ブレーキを踏む、そういったこと、何度かありました。その場は立ち去ったんですが、同じことされたら嫌な思いをすると思い、分かってほしかった、分かってもらうために割り込み、ブレーキ……するようになった」(宮崎文夫被告)

今回の一連の事件でも、前方を走っていた被害者らの車が、車線変更してきたことに立腹、この気持ちをわからせるためにと行った行為だったようだ。しかし本人も「今振り返ってもやっぱり、やられたら何倍もやり返してしまう……」と語るように、過剰に“分からせよう”としてきたらしい。

1年近くにおよぶ勾留生活により、公判までに様々なことを考えたのか「怖い思いをさせてしまい申し訳なく思っています」と、被害者らに深々と謝罪する様子も見られた。反省を深めたように見える被告に対して、質問は続く。

昨年の報道で“あおり運転”そして宮崎被告の存在が大きく報じられたことを、質問者はもとより、宮崎被告自身も重々理解しているようだ。

弁護人の質問

弁護人「3件のあおり運転だけじゃなくて、振り返って、生き方や考え方、全て修正しないと今後生きていけないよ! 日本一有名ぐらいになっちゃってるんですよ。今日も私、常磐道を走ってきたけど『ストップあおり運転』って標識に書いてますからね!」

被告「自分のせいです」

弁護人「あなたはいつか社会復帰しますが、ものすごくバッシングされると思います。覚悟してます?」

被告「これだけのことをやっているし、日本中を恐怖の渦に巻き込んだことを認識してます」

弁護人「一生針のむしろですよ、おそらく!」

検察官の質問

検察官「あなた今回の事件で免許は欠格になりましたね。免許はしばらくないのに、車は所有してる状態になります。無免許運転が心配なんですが大丈夫?」

被告「自分は無免許運転いままでやったことないんで」

検察官「それは今まで免許あったからでしょ!」

被告「すいません、信じてもらえないかもしれませんが、これだけのことをやってしまって、名が知れ渡ってしまった。もやる気にならないし、それでなくとも、もう運転する気持ちはないです」

裁判長の質問

裁判長「あなたね、各事件起こした時、相当腹立ってたんじゃないですか?」

被告「だと思います」

裁判長「腹立ってる状態で運転すること自体が危ないですよね? ましてや、やり返すのは危険極まりないですよ。頭に来ないことが必要ですし、そこをちょっとなんとかしないといけないですよね」

被告「はい」

弁護人からの被告人質問の最後に、宮崎被告はあらためて「ドライブレコーダーの映像を通じて、日本中の方々を恐怖の渦に巻き込んでしまったことを痛感しています」と、謝罪を述べた。次回公判は8月31日に開かれる予定だ。

  • 取材・文高橋ユキ

    傍聴人。フリーライター。『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)、『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)、古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など殺人事件の取材や公判傍聴などを元にした著作多数。

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