悪者扱いを受ける現役ホストの言い分「僕らの仕事は社会に必要」

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歌舞伎町のホストたちの心情を代弁する杉崎達也氏
7月25日夜の歌舞伎町。土曜の夜だけあって奥にむかう通りは人が多い。そんな中、マスクもせずに歩く男性もいた

7月に入って東京都内の新型コロナウイルスの新規感染が止まらず、22日の時点で月別の感染者数はこれまで最多だった4月を超えてしまった。東京都の小池百合子都知事はその主な原因として「夜の街関連」という表現を繰り返し、主にホストクラブやキャバクラを槍玉にあげている。

日本最大の繁華街、歌舞伎町の現役ホストや彼らをサポートする業者はこの現状をどう受け止めているのだろうか。

頻繁に目撃される医療関係者たち

「名指しで言われていることについては正直、勘弁していただきたいです。うちは元々、1部(19時〜0時)営業だったのですが、発表によって、メディアからも『夜の街は〜』『ホストが〜』と攻撃されるので、来店されるお客様の事も考えた上で、今は2部(7時〜14時)営業という時間帯に変わりました。

僕自身、このホストという仕事をはじめる前は正直、チャラチャラした男たちが女の子を騙して…みたいなイメージを持っていましたが、実際は違う。それを続けていては仕事として成り立たない。熱心にお客様満足度を考えて、プロとして仕事をするのがホストなんだと思ってやってます」

歌舞伎町にあるホストクラブ『J』(仮名)に勤める一生元気さんは、ため息交じりにこう明かす。

どうして一方的に「悪者扱い」されているのか。5月25日に緊急事態宣言が明けた直後の6月4日東京都は28人の感染者を確認。うち9人が同じパーティーに参加していた「パーティークラスター」が発生し、その中にホストがいた。さらにその直後にホストクラブ『TOP DANDY-1st-』で12人の集団感染が発覚したことによって、東京都が監視の目を厳しくしたと思われる。

まだ感染者が1人も出ていない『J』では、以下のような対策を続けてきている。

・入店前にお客さんに実名を一筆もらう
・店内に入るときの検温
・マスクでの接客
・アルコール除菌
・お客様をテーブルに通すたびに、テーブルをアルコール消毒する
・グラスに入れるマドラーをキャスト用とお客様用に分ける

入店前に、お客さんから実名を一筆もらうことは、客商売としてはすすんでやりたいことではないだろう。それでも実施をきめたのは、万が一、店で感染者が出たときに追跡調査をして原因究明するためだ。感染者が出た後、店ごとに後から原因を探っていくと、感染者が出た店の中にはホストではく、お客の側に新型コロナに感染していた人がいてその人からうつされた可能性もあるという話がホストの間で流れている。

歌舞伎町に260近くあるホストクラブのうち、100以上の店舗にパーティープランや店舗消毒作業で出入りするイベント会社、KABUKICHIの代表取締役、杉崎達也氏はこう明かす。

「ホストクラブを利用されるお客様を見ると、19時から24時の『1部』の時間帯に来る人は昼のお仕事に従事している方、朝方の7時-12時の『2部』の時間帯は風俗関係の仕事についているお客様が多いのですが、集団感染が発生したお店は『1部』の時間帯です。しかも、共通する職種のお客様がいたことが気になっています」

歌舞伎町関係者の話を総合すると、医療関係者や法曹関係者だという。ホストクラブの場合、初回は比較的安い値段で入れるお店が多く、最近多く見られるのは「一見さん」として入り、一晩でいろんなお店を転々とする人たちだという。さらに、夜勤明けの医療関係者も、昼間から飲みに行きたいと思えば、2部の時間帯に営業するホストクラブに顔を出す。新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、ひっ迫した医療現場での仕事が続いていた医療関係者も、やはりストレスは溜まっているのだ。

ただ、ホストクラブを“はしご”する一部の医療関係者が、新型コロナウイルスを保菌している可能性は否定できない。さらに来店客の中には、風邪の症状を自覚する客の中に、入店直前に解熱剤を服用していた例もあったという。ただ、店で感染者が出た原因がお客様にあった、と後からわかったとしても、ホストクラブ側がその事実を公表することはない。それは「お客様のせいにはできない」というサービス業としてのプライドがあるからだ。

歌舞伎町のホストたちの心情を代弁する杉崎達也氏

杉崎氏は全国的にマスク不足に陥った4月、自らの仕事上のつながりを駆使して、1万9000枚のマスクを購入。110万円も費やしたが、希望するホストのみならず、困っていた保育施設等にも配って回り、感染拡大予防を下支えしてきた。それだけに、仕事仲間のホストが必要以上に肩身の狭い思いをしている現状に、悔しさが募る。

「最近までGOTOキャンペーンをこの時期に本当にやるべきなのか、と議論されていましたが、それは旅行を促すことによって感染拡大が再び一気に進む可能性があるからです。でも私たちはどこにも出かけません。お店に来て下さるお客様をもてなし、しかも最近は“一見さんお断り”を打ち出す店も出てきました。感染拡大防止の対策も、他の飲食業やサービス業とは比べ物にならないぐらい、かなり厳重にやっていると思いますが、感染者が出れば、私たちが叩かれる。政府は、感染拡大を促す危険性がある政策を実行しているんですけどね……。

『夜の街』と注意を促す東京都も、たとえば職員の方が歌舞伎町の入り口に立って検査するとか、感染拡大防止のために具体的に動いている姿を拝見できたらまだ、納得がいきますが、残念ながらそういう職員の方を見たことない。他県などは自治体主導で手を打って予防につなげているところもありますから」

小池都知事に言いたいこと

たとえば感染者が5人にとどまっている鳥取県などは、2009年に新型インフルエンザが県内に蔓延した教訓を生かし、自治体主導で「疑わしきはPCR検査をする」という態勢を作った。4月上旬の時点でPCR検査のドライブスルー方式やウォークイン方式を導入し、医療現場の負担軽減につながる施策を先に打っていた。東京都と鳥取県では、人口密度や保有するPCR検査の機械台数も違うため単純比較はできないが、リスク回避を目指す自治体の緊張感には差がある。杉崎氏が続ける。

「確かに、歌舞伎町で働く人全員が全員、ルールを守れているわけではないかもしれないので、ホストの中には若気の至りで行き過ぎた行動をとり、結果的に感染につながった例もあるとは思います。でも歌舞伎町で働くホスト、ホステスの多くは生きていくことに必死で、真面目に仕事に向き合っています。中にはここでしか暮らせない子たちもいる。稼いだお金を地方に住む親に仕送りしている子もいます。どうして彼らの息の根を止めようとしているのだろうか、と感じてしまうんです」

ホストクラブ『J』はコロナの影響でお店の売り上げは例年の60%にとどまっている。世間の眼差しは冷たく、厳しい。それでも一生元気さんは今日もホストの仕事に向かう。

「僕たちはお客様の承認欲求を満たすために、明日につながる今日を提供することが仕事で、世の中の『必要枠』だと考えています。お客様の中には職場や家族の悩みなど誰にも相談できないことを僕らには打ち明けてくれて『ここが居場所』『私の家』と言ってもらえることもあって、それはうれしいことです。ホストクラブは、厳しい世の中を生き抜く上でストレスを発散するはけ口のひとつになっていると思いますよ。

小池都知事も大変だとは思いますが、まず東京都のために頑張ってほしい。そしてぜひウチの店に来ていただいて、おもてなしさせてもらいたいです」

彼らの心の叫びを、小池都知事はどう受け止めるのだろうか。

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