コロナ感染者再拡大の日本が真っ先に採るべき「一つの方策」

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東京都の新型コロナウイルス感染者は400人を突破してしまった。そんななか、特別な対応策を示さずにGo Toキャンペーは進められ、政府内ではいまだに8000万枚の“アベノマスク”に関して与野党が戦っている…。

そんなことより、現実問題として気になるのは、今はどのような状況なのかということ。 市中感染の状況は? Go Toキャンペーンを進めて大丈夫なのか? 医療ガバナンス研究所理事長の上昌広(かみ・まさひろ)氏に聞く。 

“夜の街”での感染者数は氷山の一角

新型コロナウイルスの感染は、日本各地で急速に拡大している

7月31日に東京都の新型コロナウイルス感染者は400人を超え、大阪府では29日に過去最多の221人の感染者が報告された。都は一時、「感染者が増えたのは、PCR検査数が増えたため」「病床数も余裕がある」と言っていたが、7月15日には警戒レベルを4段階でもっとも警戒度の高い「感染が拡大していると思われる」に引き上げ、31日には現状を「感染拡大特別警報」と表現し危機感をあらわにした。感染経路不明者も増えている。感染者は全国各地に広がり、これまで感染者ゼロだった岩手県にも陽性者が出てしまった。

「第一波のときは疑わしい人だけ検査していたから、それを考えると、確実に市中感染は広がっています。

もはや“夜の街”だけで広がっているわけではない。東京都は検査数を増やしたと言ってるけれど、それでも1日3000~4000件。人口2000万人の北京では1日最大370万人以上がPCR検査を受けられる体制を整えて、7月22日現在9000万人がPCR検査を受けたと言われています。

1日3000~4000件の検査で感染状況がわかるはずがない。“夜の街”は氷山の一角である可能性が高い。歌舞伎町をターゲットにして、陽性になった人を悪者扱いしている。ああなると、みんな隠しますよね。自分が陽性になりたくないので。そうなると、ますます潜りますよね。感染は急拡大していると思います」 

7月31日、過去最多463人の感染者数だった東京都は、再び飲食店などに営業時間の短縮を要請

ニューヨークでは、750ヵ所で24時間、無料でPCR検査が受けられる

4月上旬に1日の新型コロナウイルスによる死者数が500人を数えたニューヨークでは、州内に750ヵ所に、24時間、いつでも、だれでも、無料でPCR検査が受けられる体制を整えた。その結果、7月22日は死者ゼロになった。

ドイツでも1日18万件のPCR検査が行われているという。対して日本では、7月13日現在のPCR検査の1日あたりの最大能力は3万1000件余り。欧米には遠く及ばない。PCR検査の必要性が語られてから何ヵ月もたつが、なぜいまだに同じことが議論されているのか。

「厚生労働省は、PCR検査をしても、現在の検査キットでは感度が70%ぐらいで、100人の陽性者のうち30人ほどを見落とす可能性があると言っています。また、誤って陽性となる疑陽性の確率は1%ほどあることも、広くPCR検査を行なわない理由としているようです。

しかし感度が低ければ、繰り返し行うというのが、世界的な科学研究誌『ネイチャー』にも発表されている世界的な常識です。仮に3割エラーが出るとして、2回PCR検査を受けて、エラーとなる確率は9%、3回受ければ1%以下になる。疑陽性者も何度も検査することで、正確なことがわかる。どんどん検査すればいいんです」 

PCR検査で陰性であっても、その後感染しないとは限らない。そのためニューヨークでは、何度でも受けていいことになっている。

日本でも医師が認めれば、保険適用でPCR検査を受けられるようになったはずだ。けれど、

「実態は、以前と変わっていません」

新型コロナウイルスは感染症法で、「指定感染症」に定められている。「指定感染症」とは、医師が必要だと認めれば、隔離措置をとることができ、その際の入院費用は公費負担になる。さらに、診断した医師は保健所や行政に届け出ることが義務になる。

「最初はよくわからない感染症だったため、“感染症法”で『指定感染症』にしてしまったのですが、速やかにインフルエンザと同じカテゴリーにしなければいけなかった。それをしなかったために、保健所では濃厚接触者や感染が疑われる人などにしか、いまだにPCR検査を認めていない。現状、無症状の人はPCR検査を自費で受けるしかないんです。 

海外ではエッセンシャルワーカーと呼ばれる、社会の機能を維持するために働いている人たちにまずPCR検査を受けてもらうのに、日本では医療従事者すら公費でPCR検査を受けることはできないんです」 

ニューヨークでは美容院をオープンするためには、美容師がPCR検査を受けることが義務づけられているほどなのに……。

1日の検査数は6万件を超えているニューヨーク州。クオモ知事は、自身のTwitterで毎日の検査数、陽性者数、陽性率等を発表している。店内での飲食が禁止されているマンハッタンでは、道路の一車線がテラス席用のスペースとして提供されている

インフルエンザの季節には1日30万人のPCR検査が必要

しかし、国が迷走を続けているなかでも、私たちは身を守らなければならない。どうすればいいのか。

「プロ野球球団や相撲部屋では自費でPCR検査を行っています。同じように、企業や団体が費用を負担して、雇用者を検査してもらう方法があります。けれど、企業にしても、病院にしても、民間でやることには限度がある。 

世界各国で使われている全自動でPCR検査ができる日本製の機械あります。なぜ、それを病院に導入して、病院で検査できるようにしないのか。ロックダウンすることを考えたら、はるかに少ない予算で導入できる。

インフルエンザのピーク期になると毎日30万人が検査を受けます。今年の冬は、その人たちは新型コロナに感染している疑いがありますから、全員にPCR検査を受けてもらわなければならない。今のままではどうにもなりません」 

コロナ抑制優等生だったオーストラリアだが、冬を迎える現在、1万2000人以上の人が感染し、再び都市封鎖を行っている。 

PCR検査で陰性だったら、海外からの人も受け入れるというのが、世界の共通になってきている。ところが、日本では無症状の人はPCR検査を自費で受けることになっている。 

成田の検疫所はやっと1日1万件。これで足りるわけがない。海外に行くこともできないし、海外からの人を受け入れることもできない。これでは鎖国するのと一緒なんです」

エッセンシャルワーカーをはじめ、感染したら収入が途絶える人や、子どもをおいて入院できないシングルマザーなど、社会的弱者を守るためにもPCR検査は必要だ。

「特別なことをやれと言っているわけではありません。世界で行われていることを日本でもやればいいだけなんです」

アビガンの治験が進まなかったのは、PCR検査数が少ないので治験者の数を揃えられなかったのが理由のひとつと言われている。そんな弊害も出ている。

国境をまたいでの移動が始まったヨーロッパでは、PCR検査での陰性を証明する「ヘルスパスポート」が公的機関から発行されている。写真はデンマークで

「今でも感染を防ぐためにステイホームが言われている。在宅ワークで通勤がなくなったせいで、多くの人が運動不足になっている。脳卒中や心筋梗塞を起こす確率も高くなる。がん検診を受けにいかなくなったり、新型コロナウイルスに感染しなくても、ほかの病気にかかる可能性が高くなっているんです。

そんなことを防ぐためにも、PCR検査をどんどん行い、安心して活動できるようにすべきだと思います」

上 昌広 特定非営利活動法人 医療ガバナンス研究所  理事長。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の診療・研究に従事。2005年より東大医科研探索医療ヒューマンネットワークシステム(後に 先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年3月退職。4月より現職。星槎大学共生科学部客員教授、周産期医療の崩壊をくい止める会事務局長、現場からの医療改革推進協議会事務局長を務める。著書に『病院は東京から破綻する』(朝日新聞出版)など。

  • 取材・文中川いづみ写真アフロ

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