ついにレース復帰!池江璃花子 劇的回復を促した「希望の力」

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’19年8月25日、家族とともにタレントのなべおさみ氏らと待ち合わせし、なべ氏の自宅へと向かう池江璃花子選手の姿を本誌は捉えていた(『FRIDAY』2019年9月13日号より)

急性リンパ性白血病から再起を目指す競泳・池江璃花子は昨年2月に病魔に侵されていることを告白。同年12月に10カ月の闘病生活から退院し、7月2日には練習を公開した。

今月29日に行われる東京都特別大会(東京辰巳国際水泳場)での復帰が決まるなど嬉しい知らせが聞こえてくる一方で、白血病は「完治はない」とされる。近い将来、レースに戻るであろう池江は、再発の恐怖を抱えながらも、五輪の檜舞台に舞い戻ろうとしている。

<(中略)大きな目標が目の前から、突然消えてしまったことは、アスリートたちにとって言葉に出来ないほどの喪失感だったと思います。私も白血病という大きな病気をしたからよく分かります。思っていた未来が、一夜にして、別世界のように変わる。それは、とてもないキツい経験でした>(東京五輪大会組織委員会が開催した、五輪1年前セレモニーに登場した池江璃花子のメッセージから抜粋)

7月23日の午後8時、国立競技場でたった一人で訴えたこのメッセージ動画は130カ国の国と地域で配信され、当日の視聴回数が国内だけで500万回にも達した。このメッセージを終えた後には、涙をこらえる必死の姿が印象的だった。

感情を抑えきれなくなるのも仕方がない。思えば白血病発症から始まった過酷な治療やリハビリがあった。2月にテレビ朝日の単独インタビューの時には「本当に一番しんどい時は死にたいと思いました」と語るほど思いつめられた時期もあったのだ。

「血液の癌」として知られる白血病は不治の病とされたが、今は違う。2019年2月に入院し、化学療法を行った。一般的には、抗がん剤を投与されるが、それは体の中にある良質な細胞も殺すことも意味し、頭髪が抜けるなど、副作用に苦しむ患者は多い。池江の場合、合併症を併発したため、池江はドナーによる骨髄を移植する造血幹細胞移植を選択した。

「池江さんが死にたい、そう思うのは当然のことです。私もそうでした。白血病で経験したあんな思いはもう2度としたくないし、思い出したくもない」

こう話すのは、元サッカー日本代表・ジーコ監督の通訳を30年間務めている鈴木國弘氏だ。その鈴木氏も2013年12月に急性骨髄性白血病を発症。およそ6カ月にわたる入院だった。鈴木氏の場合は赤ん坊のへその緒の新鮮な血を移植する『臍帯血移植』、池江の場合は『造血幹細胞移植』という骨髄移植と治療法の違いはあるが、闘病の過酷さは重なる部分が多い。鈴木氏が振り返る。

「ヘビーだったのが抗がん剤の投与でした。副作用は出方は個人差があるようですが、私の場合は酷かった。倦怠感や吐き気、そして味覚異常が辛かった。病院食は味がしなくて、全て紙を食べているような感覚でした。ならば食べたくない。でも気持ちが悪くて吐きたくても、胃の中には何もない、もう死んだ方がマシ、楽になりたい。そう思うのが普通です。

白血病は免疫力が限りなくゼロになるわけですから、退院できても1年半ぐらいはステイホーム生活でした。マスクは手放せず、人混みにもいけない。そんな憂鬱な日々が続きました」

入院中、鈴木氏は「もう一度立ち上がろう」という気持ちを持つ人たちの生命力の強さをまざまざと感じさせられたという。

「テレビで見た池江さんは水泳を行うための筋肉が落ちていたように見えましたし、一時はもうフラフラだったはずです。私も体重が20㎏近く落ちてしまい、歩くというより、1歩動くことさえ嫌でした。ですから、入院していた大学病院から勧められたリハビリは思うようにできなかった。

でもね、同じ病院にいた女性の患者さんたちは皆さん、違ったんです。体に痛みがあったり、意識ももうろうとしているはずなのに、与えられたメニューをしっかりこなしていました。たまにリハビリ専用の部屋に行くと、不思議と男性は1人もいなくて、女性ばかりでした。生命力の強さを見せつけられた瞬間でした。ましてや池江さんの場合、五輪を目指す舞台にもう一度戻りたい、という気持ちが回復を早めたんじゃないでしょうか」

不治の病ではなくなった白血病だが、後遺症が残ることもあるという。鈴木氏も退院時、味覚障害などが永遠に残る可能性も示唆された。

「池江さんを見て驚いたのは、その後遺症を一切感じられなかったことです。もっと驚いたのは、(2019年2月に)白血病を発症して、翌年の3月にプールに入れていることです。水の中にもきっといろんなウイルスがいて感染リスクは高いので、退院してから1年半、ステイ・ホームを余儀なくされた私から見ると、奇跡に思えますよ。

幸い、私も後遺症は残りませんでした。今、白血病と闘っている人たちにとって、池江さんの存在はもの凄い励ましになるはずです」

10月のインカレ(大学選手権)出場を目標にしている池江だが、インカレには昨年4月以降、長水路(50mプール)で上位32人(種目によっては40人)に入らないと個人種目参加資格を得られない。そこで今月29日に行われる東京都特別大会にエントリーし、新型コロナウイルスへの感染予防に細心の注意を払いながら、月1回の通院、週4日のプールでのトレーニングをこなし、レース復帰を目指している。

冒頭で紹介したメッセージ動画の中には池江のこんなコメントもある。

<もちろん、世の中がこんな大変な時期に、スポーツの話をすること自体、否定的な声があることもよくわかります。ただ、一方で思うのは、逆境から這い上がっていくときには、どうしても、希望の力が必要だということです>

白血病から回復して不自由なく日常生活を送れるようになっても「完治」ではなく、「寛解状態」と処方される。それはいつ再発してもおかしくない恐怖との戦いがあることも示す。過酷なハードルを超えて心身ともに強くなった池江が、これからも見えない「敵」と向き合いながら世界最高の戦いの場に戻ろうとするその姿こそ、世界のネガティブなムードを吹き飛ばす“希望の力”である。

家族と一緒に、ニンテンドースイッチのソフトをあれこれ指差しながらショッピングを楽しんでいた池江選手(『FRIDAY』2019年9月13日号より)
2018年アジア大会 競泳女子50m自由形決勝。24秒53の大会新記録で金メダルを獲得した池江璃花子。本大会では史上最多の6冠を達成した  写真:森田直樹/アフロスポーツ
2018年アジア大会 競泳女子50m自由形、表彰式で満面の笑みを見せた池江璃花子 写真:AFP/アフロ
2019年1月11日、「第53回テレビ朝日ビッグスポーツ賞」表彰式に出席した池江璃花子 写真:西村尚己/アフロスポーツ

東京オリンピック 活躍が期待される女性アスリートたち

ゴルフ:渋野(しぶの)日向子

「アース・モンダミンカップ」(6月25日~29日)ではまさかの予選落ちした渋野日向子。新型コロナウイルスの影響で今後のツアーの開催自体も不透明、と厳しい状況が続いているゴルフ界だが、動向に注目したい

サーフィン:松田詩野(しの)

’19年のサーフィン世界選手権でアジア最高位に輝いた現役女子高生サーファー・松田詩野(しの)。今年のワールドゲームで7位以内に他の日本人選手が2人以上いなければ、代表確定という条件付きで内定していた。五輪延期に伴い、この条件付き出場権を維持している

 

ビーチバレー:坂口佳穗

ビーチバレー代表候補の坂口佳穗。高校時代は大手芸能事務所でタレント活動をしていた。5月開催予定だった五輪代表決定戦が中止となり、代表は現段階で未定。10月から国内ツアーが再開予定(8/5JVA発表) 撮影:LUCKMAN ヘア&メイク:萩村千紗子

女子新体操:皆川夏穂

’19年に行われた世界選手権で個人総合13位となり、五輪出場枠を獲得した皆川夏穂。新体操日本代表「フェアリージャパン」のエースである 写真:時事

マラソン:一山(いちやま)麻緒

’19年3月に開催された名古屋ウィメンズマラソンで2時間20分29秒で初優勝し、17年ぶりに国内最高記録を更新した一山(いちやま)麻緒。代表枠最後の1枠に滑り込んだシンデレラガールだ(※写真右は永山忠幸監督) 写真:森田直樹/アフロスポーツ

スポーツクライミング:野口啓代(あきよ)

東京五輪から正式種目に採用されるスポーツクライミング。代表内定している野口啓代は、’08年ボルダリングW杯で日本女子として初優勝し、「初代アジア女王」にも輝いた世界トップクラスのフリークライマー。初代五輪女王の有力候補である。写真:松尾/アフロスポーツ

空手:清水希容(きよう)

東京五輪の新競技・空手。技の正確さや速さを競う空手の「形」で金メダル獲得が期待されている清水希容(きよう)。普段の穏やかな笑顔から「空手界の綾瀬はるか」とも呼ばれているが、競技中は凛々しい姿に 写真:森田直樹/アフロスポーツ
美しい「形」を繰り出す清水希容(きよう)選手 写真:千葉格/アフロ

フェンシング:宮脇花綸(かりん)

フェンシング女子フルーレ、五輪代表候補の宮脇花綸(かりん)。5月にはフェンシング選手10人による「人狼ゲーム」を日本協会の公式YouTubeチャンネルで配信し、宮脇選手はゲームマスターを務めた 写真:西村尚己/アフロスポーツ

スケートボード:西村碧莉(あおり)

東京大会からの新競技・スケートボード。日本代表候補の西村碧莉(あおり)は、7歳から競技を始め小学5年生で全国大会優勝。’19年にはリオデジャネイロで行われた世界選手権で優勝するなど、世界クラスの実力を持つ金メダル候補だ 写真:長田洋平/アフロスポーツ
2019年9月22日、ブラジルのサンパウロで開催されたストリート・リーグ・スケートボーディング世界選手権女子決勝での西村碧莉(あおり)。本大会では3位に。 写真:AFP/アフロ

女子やり投げ:北口榛花(はるか)

女子やり投げの日本記録保持者である北口榛花(はるな)。すでに東京五輪の参加標準記録は突破しており、投てき種目で日本人女子初となるメダル獲得が期待されている
「陸上界のニューヒロイン」北口榛花(はるか)。昨年’19年6月に行われた日本選手権では大会新記録で初優勝したが、観客をほっこりさせたのが「もぐもぐタイム」。ベンチでカステラを取り出し、満面の笑みで口に運び、周囲の選手におすそ分けしていた
  • 撮影蓮尾真司、小松寛之、LUCKMAN、荒川祐史写真アフロ、時事

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