コロナ禍で一気に注目度上昇の「意外な郊外都市」の名前 | FRIDAYデジタル

コロナ禍で一気に注目度上昇の「意外な郊外都市」の名前

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神奈川県逗子市から見える富士山。こうした絶景を見ることをのぞんで移住する人も増えるかもしれない(写真:青木紘二/アフロ)
神奈川県逗子市から見える富士山。こうした絶景を見ることをのぞんで移住する人も増えるかもしれない(写真:青木紘二/アフロ)

不動産の動きが止まっている。東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が7月に発表したデータによれば、2020年4~6月期の首都圏中古マンションの成約件数は前年同期比マイナス33.6%、中古戸建は前年同期比マイナス22.1%となった。四半期の減少率としては1990年以降、過去最大という。

市場が冷え切る一方で、活況を呈しているエリアもあると、不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏は語る。

いくつかの不動産会社に確認したところ、長野県の軽井沢や、神奈川県の逗子、葉山、横須賀、三浦、茅ヶ崎といった湘南エリア、千葉県の房総エリアなどで住宅購入の問い合わせが急増しているようです」

通勤重視の家選びから、生活重視の家選びへ

その背景には、コロナ禍での在宅勤務やテレワークの拡大がある。緊急事態宣言で半ば強制的にテレワークを始めたところ、多くの人が「出社しなくてもある程度は仕事はできる」と実感することになった。

テレワークで仕事が完結するのだから、満員電車に長時間揺られて都心のオフィスまで通勤する必然性はなくなる。毎日の通勤を前提としないのであれば、家に対するニーズは変わる。生活環境の良い街や、自分のライフスタイルに合った街で、テレワークに適した広い家に住みたいと思うようになる。

とはいえ、いくら生活環境を重視したとしても田舎暮らしは無理がある。そこで候補に挙がってくるのが、自然が豊かで、かつひと通りの生活機能がそろっていて、都心まで無理なくアクセスできるエリアだ。軽井沢や湘南エリア、房総エリアの人気が高まっているのはそういう理由だ。

「たとえば三浦半島の逗子などがいい例です。新宿や大手町まで電車で1時間強かかる場所ですが、月数回の通勤なら耐えられる範囲といえます。そして海や山に囲まれていて住みやすい。100坪程度の中古戸建が3,000万円くらいで買えるので、家庭菜園をしたり、釣りやサーフィンなどの趣味に熱中したりしながら、ストレスのない生活を送れます。そういうライフスタイルを選ぶ人が増えているのではないでしょうか」(牧野氏)

通勤の拠点だったベッドタウンが発展!?

また牧野氏は、それらのエリアよりももう少し都心寄りの、船橋、柏、川口といった衛星都市での住宅ニーズが今後高まっていくと予想する。これらのエリアは都心部への通勤圏だが、都心部よりも住宅価格は安く、商業施設などの機能はひと通りそろっているので生活利便性は高い。

こうした衛星都市の駅前に、コワーキングスペースのオープンが相次いでいるというのだ。「自宅ではネットワークや机など仕事をする環境が整っていない」、あるいは「常に在宅勤務ではストレスが溜まる」というテレワーカーのニーズに応えるものと考えられる。

コワーキングスペースまで自転車などで出勤し、子供がいる場合は併設された託児所に預ける。そして仕事を終えたら、子供と一緒に自宅に帰る。あるいはコワーキングスペースで知り合った人と飲みに行ったり、スポーツを楽しんだりする。そんな風景が当たり前になるだろう。そうなると、これまで通勤途中の乗り換えで通過するだけだった衛星都市の駅前が、思わぬ発展を遂げるかもしれない。

さらに牧野氏は、「通勤不要な生活の浸透は、サラリーマンのあり方を大きく変える可能性もあります」とも語る。

社員がオフィスに出勤しないと、会社からは社員の働き方が見えない。そこで社員には、仕事の成果がより明確に求められるようになる。そうなると、成果の出せない社員は淘汰される一方、実力のある社員はより責任ある仕事を任され、高い報酬を得られるようになる。

そのような人材は、1社にしばられる必要はない。週に2日はA社、3日はB社というように、テレワークを駆使しながら複数の会社をまたいで仕事をする、独立自営型のワーカーも出てくるだろう。

奇しくも働き方改革の流れのなかで、副業・兼業を解禁する企業が増え、職務の内容を明確にして成果で評価する「ジョブ型雇用」の導入も活発になってきた。新型コロナウイルス禍は、住宅選びだけでなく、人々の働き方や仕事観にも大きな影響を与えることになりそうだ。

◆牧野知弘(まきの ともひろ)

東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て、1989年に三井不動産入社。不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年、日本コマーシャル投資法人執行役員に就任し、J-REIT市場に上場。2009年、オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任する。著書に『空き家問題』(祥伝社新書)、『2020年マンション大崩壊』(文春新書)、『老いる東京、甦る地方』(PHPビジネス新書)、『こんな街に「家」を買ってはいけない』(角川新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)などがある。

◆取材・文:平 行男(たいら ゆきお)

フリーライター。社内報などの企画制作会社を経て2005年からフリーランスに。企業の広報・販促コンテンツの制作を支援するほか、各種メディアでビジネス、IT、マネー分野の記事を執筆している。ブックライティングも多数。

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東京都北区の岩淵水門付近から望んだ埼玉県川口市(アフロ)
東京都北区の岩淵水門付近から望んだ埼玉県川口市(アフロ)

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