錦戸亮ファンミーティングがコロナ禍でも成功した理由

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組織に所属していてはできないことがあるのかもしれない。

8月2日、横浜に今年オープンしたぴあアリーナMMで開催された錦戸亮のファンミーティングに参加して、そう強く感じた。

事務所独立後初のファンミーティング東西9公演で、2万人以上を動員した錦戸亮

新型コロナ感染拡大の中での決断

コロナ禍での開催は、かなり勇気がいったはず。実際、参加する側である筆者も、前日のギリギリまで、「行かないほうがいいのでは?」と迷っていた。でも、参加した人たちの呟きを見ていると、クラスターを発生させないための対策が徹底されていることがわかり、思い切って参加することにした。そして、結果として、「行ってよかった」と思った。

そこでしかできない体験ができたことや彼が演奏し歌った曲が心に響いたことはもちろんだが、何より錦戸亮というアーティストの人間性に、グループ時代よりも深く触れられた気がして、それが嬉しかった。

ファンミーティングの開催が発表されたのは、感染者の数が今ほど増加の一途を辿っていない時で、8月になれば、1万人収容の会場で、キャパシティーの半分に当たる5000人規模のイベントなら、普通に開催されるものだと思っていた。だから、あまり深く考えることなく応募することにした。ただ、座席の種類にはS席とA席があり、どちらもサイリウムやマスク、フォトブックなどのグッズが漏れなくついてのチケット料金だったのだが、A席でも手数料などを加えれば1万円越えなのは、少し高いな、という印象だった。

土曜日は1日3公演だったので、1回1時間半程度のステージだとして、座席は半数でグッズ込みにしても、「カラオケで、アルバムの曲をちょっと歌って、質問コーナーか何かのトークメインだったら、“ぼったくり”って思っちゃいそう……」などと不穏な想像をしたりもした。そして出した結論が、「これでつまらなかったら、次のファンクラブは更新しないことにすればいいか」だった。また、公演1週間前には、2日おきに、健康チェックのアンケートに答えなければならず、「たかだかファンミでこんなに面倒臭いのか」とも思っていた。

当日も、会場に入るまでが一苦労。入場チェックを受けるまでにも炎天下をかなり蛇行しながら移動させられ、検温、手指消毒、写真つき身分証のチェックなど、諸々厳重。でも、少しずつ進みながら、黙々と働く大勢のスタッフを見ているうちに、「これだけの規模のイベントを、しかも全部自分で責任を持って仕切っている彼はすごいな」と感じ始めた。

会場も、てっきり座席数の半分近くは客を入れていると思いきや、「感染防止対策のために、スタッフも含めて2500人以下に止めています」というアナウンスがあり、アリーナは座席の列の間隔が広く取られているだけでなく、隣も一席ずつ空けている。スタンドも、例えばもともと5列あった3階は、1、3、5列だけ座席が用意されていて、2列と4列には座れないことになっていた。それで、隣も1席ずつ開けるのだから、空間感覚としては、1人で4席独占、といった感じだ。

“歌うたい”錦戸亮が見せたセンスの良さ

バンドのチューニング音が響いて、「カラオケだったらぼったくり」などと考えていた自分を恥じたが、いざファンミーティングが始まり、1曲目の「silence」が演奏されると、通常のバンド編成に加え、4人のストリングス隊がめっちゃいい音を鳴らしていることに気づく。これはファンミではなくライヴだ。この4ヵ月、配信ライヴに慣れきっていたが、配信では目と耳だけが便りなのが、実際のライヴでは、嬉しいとかカッコいいと思う心の動きが、ゾクゾクと肌に伝わってくる。この感じが懐かしい。

それにしても、これだけ完成度の高い曲を、初日のわずか2日前に仕上げ、ストリングスのアレンジまで加えるのだから、錦戸亮恐るべしである。

基本、ステージの錦戸以外は声を出さないように、という不文律があるようで、錦戸が何か質問して、イエスなら拍手、ノーならサイリウムを振る、というようなルールを課されるのだが、喋っている本人もすごくもどかしそうだ。

ただ、音楽を演奏し歌っている時は、距離は離れていても、こちらの高揚感は伝わっているのだろう。好きな歌だから知ってもらいたいと吉幾三の「とも子」というラブソングを切々と、でもユーモアも交えながら歌い上げ、盟友・赤西仁の「Hey What’s Up?」をノリノリで披露するなど、新曲「キッチン」も含め、バリエーション豊富な楽曲群で、昨年11月のZeppツアーとはまた違った“歌うたい”で“ギタリスト”で“ソングライター”で、“プロデューサー”の顔を見せてくれた。

照明の効果もとてもドラマチックで、あらゆる演出に、彼のセンスの良さと人を楽しませようという心遣いが読み取れた。

「この借りは必ず返します」という挨拶で見せた誠実さ

終盤の挨拶で、「本当によく来てくれた。ありがとう。きっと、『危ないよ、行かないほうがいいよ』と止められた人も大勢いたやろ。でも、誰かが一歩踏み出さないといけないから。こういう大規模なイベントをやると、いろんな仕事が発生したりもするわけで、コロナで仕事がない人を助けることにもなると思う。こうやって開催できたのは、チケットを買って、来てくれたみんながいたから。大きな借りを作っちゃったね。この借りは必ず返します」と誠実に語った彼。

訥々と語る言葉を聞きながら、「確かに、これはジャニーズにいたらできなかったな」と思った。

大きな組織では、誰が先陣を切るかは、上の偉い人が決める。現場を作っていくのはタレント本人だけれど、「俺がやりたいです、やらせてください」と言って通るものではない。ましてやグループに所属していれば、メンバーの了承も取り付けなければならない。

8月6日夜、錦戸のツイッターに掲載された「FAN MEETING2020 全9公演終了いたしました。お越しいただきました皆様には、非常にたくさんのご協力をいただき、本当にありがとうございました。錦戸、スタッフ一同、感謝の気持ちでいっぱいです」という文言を読み、公演の成功を心から安堵した。

ここからは蛇足に過ぎないけれど、元NEWSということで錦戸亮と手越祐也を同じくくりにする人がいるが、笑止千万。組織を離れて、自分の力を試そうとしている錦戸と、組織から見放され、でも組織にいたときのネタを燃料にして炎上商法を続けている手越とでは、アーティストとしての格や才能以前に、人間として本来持っている資質が格段に違う。

錦戸にしても、新しい地図などジャニーズを去った他のタレントにしても、音楽や芝居をちゃんと愛しているからこそ、ファンの信用を勝ち得ていると思うのだ。これまた蛇足だが、長瀬智也がどこにいても楽しくやっていくだろうと思えるのも、そういう点で信用できるからだ。

ところで、錦戸亮という人は、とてもせっかちだ。無為な時間を過ごすのが大嫌いで、兎にも角にも仕事が早い。確かに、ジャニーズを辞めてからの彼は、とても精力的に活動していて、これが彼本来の働き方なのだろうと思う。

5人になった関ジャニ∞も、今は不思議と、デビューから3年目ぐらいの時に見せていた泥臭さ、汗臭さ、いい意味での不器用さみたいなものを取り戻していて、さらに魅力的に、さらにパワーアップしている。

結局、錦戸が関ジャニ∞を離れたことは、双方にとってWIN-WINだったのかもしれない。今は少しそう思う。

  • 取材・文喜久坂京

    ジャニヲタ歴25年のライター。有名人のインタビュー記事を中心に執筆活動を行う。ジャニーズのライブが好きすぎて、最高で舞台やソロコンなども含め、年150公演に足を運んだことも。

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