藤井聡太ブームで思い出す女流棋士・林葉直子にＮＹで振り回され…

＜芸能リポーター・石川敏男の芸能界”あの出来事のウラ側は……”⑭＞

17歳11か月の藤井聡太７段が、現在「将棋界で一番強い」と言われている渡辺明三冠との５番勝負を３勝１敗で破り、30年ぶりに最年少記録を塗り替えた。コロナ禍に藤井「棋聖」の誕生は将棋界だけでなく日本中が沸いた。

現在進行中の王位７番勝負もすでに３連勝。もしかしたらこちらも手に入れてしまうかも。

18歳の２冠は、誰もがなしえなかった大記録。そこで思い出したのが、12歳でプロ棋士になり、14歳で女流王位に就いた天才少女・林葉直子さんのことだ。

その後も女流王将10連勝などして将棋ブームの牽引役を担っていた。

しかし、その彼女が‘94年5月29日、対局をすっぽかして失踪してしまう。林葉さんのスキャンダル人生の幕開けだった。

年齢は26歳。林葉さんには

「インドのサイババに会いに行った」
「結婚情報が流れていた医者との駆け落ち」

なんて噂も流れたが、周囲に内緒でイギリス、アイルランドに旅をしていた。

「こんなに大騒ぎされるとは思わなかった」

とあっけらかんと言った林葉さんに、日本将棋連盟は３か月の出場停止処分を科す。その後復帰するが、唯一持っていたタイトル「倉敷籐花」も清水一代さんに取られてしまう。

翌年、日本将棋連盟を退会。小説家になったり、「将棋を世界に広めよう」（林葉談）とヘアヌード写真集を発売したりもした。

15年後、棋士に復帰するがあえなく惨敗。極めつけは‘98年4月の週刊文春の記事。林葉さんと中原誠永世名人との５年にわたる“不倫”が明らかになったのだ。中原さんが、

「これから直子邸に突撃します。事件になっても知りませんよ」
「私は林葉直子の愛人でしたと週刊誌に売ります」

などと、林葉さんの留守番電話に残したテープが流失。中原さんは自宅の庭で会見をすることになる。彼は不倫を認め、

「林葉から脅迫まがいの無心を受け、１千万円以上を渡していた」

と告白。

この時、林葉さんは逃避行を兼ねてアメリカを旅行中だった。

ニューヨークにある国内線空港・ラガーディアに到着することを確認したオレは、ニューヨークのケネディ空港に向かう。機内では故・梨元勝さんに出会った。

これまでの海外出張は現地にコーディネーターがいて、番組ディレクターと一緒。渡航先での経費や取材クルー、スケジュールなどすべて任せてきた。

だから、クレジットカードを持たないと、飛び込みではホテルにも泊まれないことも知らなかった。機内から日本への国際電話も掛けられない。そのくらいの緊急出張だった。

梨元さんがクレジットカードを貸してくれたことで事なきを得たが、ケネディ空港に着いたらオレのコーディネーターが居ない。聞いてきた携帯にも自宅の電話にも出ない。

梨元さんは迎えのコーディネーターと林葉さんとの待ち合わせのホテルに向かった。仕方なくオレはラガーディア空港に。機内で、林葉さんと面識のなかったオレに梨元さんは

「林葉さんに連絡とれた時、日本の放送時間に合う方に出てもらおう」

と提案してくれていた。で、オレがタクシーでラガーディア空港に着いたとき、林葉さんは他局のテレビ局員に誘導され番組に出演しようとしていた。

飛行機から降りてきた林葉さんに

「梨元さんと約束していたんじゃないの」

と声をかけた。

「はい。待ち合わせしてますよ」

と彼女。ホテルで待っていた梨元さんに連絡し、他局のニューヨーク支社の前で林葉さんを確保。梨元さんの番組、そしてオレの番組にも続けて出演してもらえることになった。

オレの番組では30分くらいのコーナーだったはずが、生放送が始まったら東京からは「続けるだけ続けて」の指令。何を聞いても自分流の説明しかしない林葉さん。

ＣＭを挟んで約２時間。後でわかることだが、視聴率は地を這うほど低かった。林葉さんの言葉に具体的な中身がなかったから、なのかな……。

その後、金銭に窮した林葉さんはヘアヌード写真集を出版。さらには自己破産も経験した。

そして彼女は今、生まれ故郷・福岡の友人宅で、重度の肝硬変と戦っている。将棋界が盛り上がっているだけに、元気になって戻ってきてほしいね。