『愛の不時着』超えの大ヒット『夫婦の世界』が日本では微妙なワケ

韓国で一大ブームとなっても、日本ではウケない作品も……次にくるドラマはいったいどれ?

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Netflixで配信中のドラマ『愛の不時着』で、財閥令嬢と恋に落ちる北朝鮮の将校を演じたヒョンビン。『私の名前はキム・サムスン』(2005年)でブレイクし、日本でも絶大な人気を誇る 写真:Lee Jae-Won/アフロ

日本で人気となった韓国ドラマ『愛の不時着』『梨泰院(イテウォン)クラス』だが、韓国ではとっくにオワコンとなっている。

それもそのはず、韓国では次から次へと新たなドラマが放送され、いつまでも『愛の不時着』の余韻には浸っていられないからだ。

『愛の不時着』や『梨泰院クラス』終了後は新たに『夫婦の世界』が話題となり、歴代ケーブルドラマの視聴率記録をいとも簡単に塗り替えてしまった。

というわけで、今年の韓国エンタメの話題の中心はすっかり『夫婦の世界』となってしまい、『愛の不時着』も『梨泰院クラス』もすでに過去のものに。

では、日本でも次に来るコンテンツは『夫婦の世界』なのだろうか?

韓国の視聴者を釘付けにしたドラマも、日本でヒットするとは限らない

韓国で空前のヒットとなった『夫婦の世界』だが、日本でも同様の結果になるかどうかは微妙だ。

韓国ではストーリーありきで、俳優の演技力も重視されるが、日本では“イケメン俳優”ありきの傾向にあるからだ。コンテンツの面白さよりはキャストに左右されがちなので、それゆえに韓国でウケたものが確実に受け入れられるとは限らない。

コン・ユ『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』ヒョンビンの『愛の不時着』、パク・ソジュンの『梨泰院クラス』のようにストーリーと同じぐらい俳優も魅力的でないと、日本ではなかなかヒットしそうにない。

韓国の人気WEB漫画を実写ドラマ化した『梨泰院クラス』。主演のパク・ソジュンは映画『パラサイト 半地下の家族』にも出演。主演映画『ディヴァイン・フューリー/使者』が8月14日(金)よりシネマート新宿ほか全国ロードショー 写真:Lee Jae-Won/アフロ

『夫婦の世界』は英国BBCのドラマ『女医フォスター』をリメイクしたもので、韓国では放送前から注目度が高かった。いざ放送されると、ケーブルテレビドラマ史上最高の視聴率28.4%を記録。2018年に社会現象を巻き起こした『SKYキャッスル』の23.8%という視聴率を塗り替えた。

とはいえ、『SKYキャッスル』と同様、日本人の目から見ると若干、キャストが渋い。そのためか、韓国の上流社会と熾烈な受験戦争を描いた『SKYキャッスル』さえも、日本ではブームとならなかった。

『夫婦の世界』の主演女優キム・ヒエは日本で例えるなら鈴木京香あたりになるだろうか。若手女優ではないし、相手俳優のパク・ヘジュンもまた日本での知名度は低い。

また、テーマは“不倫”だ。現実社会で不倫がご法度の韓国と違い、日本は芸能人の不倫があとを絶たないぐらい新鮮味に欠ける。不倫に対して免疫がありすぎる日本人にとって、イマイチ目新しさが感じられないのではないか。

それでも斬新なストーリー展開やテンポの早さはさすが韓国ドラマ。こうしたスリリングなドラマを見慣れた韓国人でさえも毎回唸ったほどの出来栄えだ。結末も英国のオリジナルとは違った展開になっており、最後まで視聴者を夢中にさせた点はさすがといえるだろう。

面白さを追求するのであれば、「見なきゃ損」のドラマであることは間違いない。

もう一つ韓国で話題になったといえば、去年の秋から放送されていた『椿の花咲く頃』だ。

地味な印象を拭えないタイトルだが、韓国では思いのほかウケた。初回6.3%だった視聴率も最終話は23.8%まで上昇。今年6月の「百想芸術大賞」ではドラマ部門の大賞に輝いている。

『椿の花咲く頃』はただのロコ(ロマンチックコメディ)と思って見始めると、後半はいい意味で裏切られる。特に12話以降はそれまでの展開とはまったく違った様相を見せ、最終話までハラハラさせられるだろう。

韓国人は「スリリングな事件がある一方で、人情味にあふれている。これこそ韓国人が好きなドラマ」という。

だが、『愛の不時着』や『梨泰院クラス』と比べると主演俳優カン・ハヌルのキャラクターが三枚目すぎる。ヒョンビンやパク・ソジュンのように日本の週刊誌の表紙になるとは思えない。

韓国のドラマアワードを独占したドラマ『椿の花咲く頃』主演のカン・ハヌル。韓国で大ヒットを記録し、日本でも現在リメイクドラマが放送中の映画『ミッドナイト・ランナー』(’17年)ではパク・ソジュンと共にW主演を務めた 写真:Lee Jae-Won/アフロ

人気俳優の除隊後初のドラマ、その行方は―

イケメン俳優イ・ミンホ主演の『ザ・キング』も放送前は何かと話題になった。イ・ミンホにとっては除隊後初のドラマ。それだけにファンの期待も大きかった。

ところが、パラレルワールドを素材にしたストーリー展開がお粗末と批判された上、間接広告がやたら多いと不評を買うことに。韓国での人気はガタ落ちとなった。

一方、今月9日に韓国で放送が終了したばかりの『サイコだけど大丈夫』は、キム・スヒョンの除隊後初の主演ドラマだ。

まるで大人の童話ともいえる不思議な物語は、注目度が高かったわりに視聴率が伸び悩んだが、そもそもファン層はリアルタイムでドラマを見ない世代。ドラマの掲示板は大いに盛り上がり、視聴率以上に反応が大きかったといえる。
同じ注目作でもイ・ミンホの『ザ・キング』とは真逆の結果に終わった。

『サイコだけど大丈夫』主演のキム・スヒョン。『太陽を抱く月』『星から来たあなた』など、日本の韓流ドラマファンにも人気の高い作品に多数出演している 写真:Lee Jae-Won/アフロ

あまり冒険したくないという人は、あえてヒョンビンやパク・ソジュンの過去の主演作を見るという選択肢もある。

ヒョンビン主演の『アルハンブラ宮殿の思い出』は韓国での評価が低く、物議を醸したが、少なくともヒョンビンのカッコ良さには癒やされる。

パク・ソジュン主演の『キム秘書はいったい、なぜ?』は人気Web漫画が原作のロコで、ドラマのほうも好評だった。

あちらこちらで紹介されている『愛の不時着』や『梨泰院クラス』はもうお腹いっぱい。そんな人でも次に見るべきドラマの選択肢は多い。

ここ数年の韓国ドラマはジャンルも多岐にわたり、特にサスペンスやミステリーは完成度が高くて驚かされる。キャストを選ばなければ存分に楽しめるだろう。

  • 児玉愛子(ライター、韓国コラムニスト)

    韓流エンタメ誌、ガイドブック等の企画、取材、執筆を行う韓国ウォッチャー。
    新聞や雑誌、Webサイトで韓国映画を紹介するほか、日韓関係についてのコラムも寄稿。

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