発売から33年を経て「伝説のクソゲー」がいま復活の理由 | FRIDAYデジタル

発売から33年を経て「伝説のクソゲー」がいま復活の理由

理不尽で、難しすぎてファミコンファンが泣いた『星をみるひと』が、まさかの再リリース

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この夏、33年の時を経て復活した『星をみるひと』
この夏、33年の時を経て復活した『星をみるひと』

1987(昭和63)年といえば、『ドラゴンクエストⅡ』や『ファイナルファンタジー(FF)』第1作が大ヒットした、日本のロールプレイングゲーム(RPG)にとって記念碑的な1年。

そしてこの年、「伝説のクソゲー」と呼ばれるRPGもリリースされた。

その名も『星をみるひと』。

「冒険心あふれる子供たちを絶望の淵に追い込んだ」

といわれるこのゲームが、この夏、再び任天堂switchで発売されたというのだ!

「世間の理不尽さを教えてくれた」

『星をみるひと』は、荒廃した未来の巨大都市を舞台に超能力を持つ主人公たちが、敵と戦いながら仲間と謎を解き明かしていく――というストーリー。

『ドラクエ』『FF』同様、敵を倒して主人公をレベルアップさせ、アイテムや武器を手に入れ、クリアを目指すRPGだ。

だが、あまりにも難解だったがゆえに、「クソゲー」と呼ばれることに。一例をあげよう。

・ゲームのオープニングがなく、いきなりフィールドの中央からゲームスタート。何の話なのか、何をすればいいのか、まったくわからない

・マップの一コマを動くのに約1秒かかる。すぐに親指が悲鳴をあげる

・敵と戦っても「逃げる」コマンドがない。一定のレベルが上がるまでは、出てくる全部の敵と戦い、勝ち続けないといけない。もちろん負けたらゲームオーバー

・クリアに絶対必要なアイテムがノーヒントで隠されている。偶然でしか発見できない

『星をみるひと』のすごさを、3万本以上のゲームソフトをコレクションする“ファミコン芸人”フジタさんもこう語る。

「『星をみるひと』が世間の厳しさや理不尽さを教えてくれました。だからボクにとっては恩師のような存在。今回、数十年ぶりに恩師に再会したような気持ちなんです。ゲームをスタートすると、誰もなにも説明してくれず、わけがわからないうちに絶対に勝てない敵と出くわして、死にます。

こんなことが2、3度続けば『いったい何をどうすればいいんだ!』って混乱しますが、それでもこのゲームは正解を教えてくれない。何度挫けても諦めずに自分でなんとかするしかない。これってまさに人生そのものじゃないですか!」

”復活”に世界中が沸いた

一方で、『星をみるひと』は多くのファンをひきつけている。

今夏の発売が発表されると、たちまちSNS上で大きな話題に。Twitterでは『星をみるひと』がトレンド入りをはたした。ゲームの壁紙としても使用するイラストコンテストには世界中から応募作が殺到した。

また、『星をみるひと』をオマージュしたゲームはこれまでたくさん作られてきたが、それらはいずれもクオリティが高い。開発者たちの情熱と、『星をみるひと』への愛が感じられるのだ。

このあまりに複雑な魅力をもったゲームの任天堂switch版を、さっそくプレイしてみよう。筆者はかつて『FRIDAY』誌で「『星をみるひと』(ファミコン版)を完全クリアする」という企画を担当したことがある。10数年ぶりの再会。すこし緊張する。

スタート画面からBGMが流れ出した。ああ、あの曲だ。

編集部の狭い会議室に閉じ込められて、「クリアするまで一歩も出るな」と編集者にカギを掛けられた数日間がフラッシュバックする……。

でも、待てよ、この曲イイじゃないか! ちょっと幻想的でせつなくて、郷愁も誘われる。サントラが発売されているのも納得できる、名曲と言っていいだろう。

ゲームが始まった。……変わっていない!

戦闘で「逃げる」コマンドはないし、敵は33年たっても相変わらず強い。多くの謎はノーヒント。ひたすらマップ上を歩き、ストーリーを進めていかなければいけない。

セリフが全部ひらがなであることも、そのセリフがときにシュールで、ときに含蓄のある深いものであることも変わらない。セーブする際の判読しにくいパスワードも昔のままである。

スタート画面。ファミコン版と同じだ。背景のイラストは当時の取扱説明書から復刻されたもの
スタート画面。ファミコン版と同じだ。背景のイラストは当時の取扱説明書から復刻されたもの

このゲームはやみつきになる

続いてゲームの新機能を試してみた。

さいこうぉーく…移動速度が約2倍になり、ふつうのRPG並みになる。指の痛みはなくなる

さいこりばーす…最大約16秒、ゲームを巻き戻せる

さいこめもりー…クイックセーブ機能

どれもものすごく便利だ。ファミコン版の使い勝手の悪さだけが修正されている。

この新機能を使いながらゲームを進めていく。必要のない戦闘などがパスできる分、ストーリーが理解しやすくなり『星をみるひと』の世界にぐいぐいと引き込まれていくのがわかる。

そして、エンディングへたどりついた。

ファミコン版『星をみるひと』は当時としては珍しいマルチエンディング(エンディングパターンが複数あること)を採用していた。

ファミコン版では3つのエンディングを選べる。しかし巷では「実は第4の『幻のエンディング』が存在する」と噂されていたのだが……。

クリア特典として、第4のエンディングが見られるではないか!

その内容は、実際クリアしたあとでぜひ見てもらいたい。

最後に『星をみるひと』の魅力について、発売元の「シティコネクション」社に聞いてみた。

「このゲームは単純に消費されるだけじゃなく、いろんな人たちに影響を与えています。私たちもその魅力に取り憑かれました。難しさや不条理さの中にも、人をひきつけるがものが『星をみるひと』にはあると感じています」

新機能「巻き戻せる」を使ってみる。一気に操作性がアップする
新機能「巻き戻せる」を使ってみる。一気に操作性がアップする
ファミコン版のパッケージなども見ることができる
ファミコン版のパッケージなども見ることができる
「『星をみるひと』は人生の恩師」と語るファミコン芸人・フジタさん
「『星をみるひと』は人生の恩師」と語るファミコン芸人・フジタさん
  • 取材・文横浜大輔

    事件からサブカルチャーまで幅広く取材するフリー編集記者。元『FRIDAY』『週刊現代』記者。2016年からはノンフィクション専門の出版社「若葉文庫」代表としても活動中。https://www.wakaba-books.com

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