9月から空室続出か…オフィス市場が抱える「ヤバい爆弾」

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
8月上旬、都心にある某大手電機機器メーカーのオフィス。リモート勤務が定着し、オフィスが不要となりつつある今、経営者はオフィスの解約や移転にむけて水面下で動いている(写真:アフロ)

 新型コロナウイルス対策で、会社にテレワークが導入され、在宅勤務にすっかり慣れてしまった人も多いことだろう。そうなるとムダに思えてくるのが、オフィスの家賃だ。実際に多くの企業でオフィスを解約する動きが相次いでいる。

たとえば富士通は、国内従業員の勤務をテレワーク中心にすることで、オフィスを半分程度に減らすと発表した。飲食店情報サイトのぐるなびも今年末に、本社オフィスを約4割縮小するという。

こうした動きはIT企業やベンチャー企業で顕著に表れていると、不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏は言う。

「IT企業は優秀な人材を獲得するために、渋谷などの大型ビルに入居して、オフィス機能を充実させてきました。しかし今回のコロナで、リモートワークでも仕事は回せることがわかった。であればオフィスを一部解約して固定費を下げたいと考えるのも当然です。フットワークの軽いベンチャー企業も同様の判断でオフィスを解約しはじめています」

実際の退去がはじまるのは解約を申し込んで半年後

オフィスの空室増加はデータにも表れている。オフィス仲介会社の三鬼商事が発表した2020年7月時点のオフィス空室率は、東京地区で2.77%(前月比0.80%増)、大阪地区で2.71%(前月比0.25%増)といずれも上昇した。

数値だけを見れば、まだまだ騒ぐような水準ではないが、状況は日を追うごとに悪化していくだろう。オフィスの普通借家契約では、通常、解約は6カ月前に通告するルールになっている。したがって、コロナ禍が始まってすぐの3月に解約したいと申し出ても、退去できるのは9月。つまり、9月頃から実際の空室が増えていくからだ。

さらに数年先の2023年には、オフィス空室率は一気に上昇する可能性があると牧野氏は指摘する。

「最近のオフィスの契約は、普通借家契約ではなく、定期借家契約が主流になりつつあります。2023年頃に定期借家契約の期間満了を迎える企業が増え、そのタイミングに合わせて、より小さい面積のオフィスに移転するケースが相次ぐと考えられます」

オフィスの契約形態には、普通借家契約と定期借家契約(定借)がある。定借では、3~5年の契約期間を設けて、その期間が終了した時点で契約は終了し、更新されない。途中解約すると残りの家賃を全額払う必要があるので、基本的にテナントは契約満了まで入居しつづける。

現在のオフィスに定借で入居している企業が、契約期間満了を機に小さなオフィスに移転するとすれば、その時期は2023年あたりが中心になると考えられる。加えて2023年は、港区・虎ノ門や渋谷区・桜ヶ丘などで大規模オフィスビルが多数開業する予定だ。オフィスの需要減少と大量供給のダブルパンチが、2023年にやってくるというわけだ。

オフィス解約が続出すると何が起こるのか

「オフィス内でのソーシャルディスタンスを保つために、増床しようという企業もある。ゆえにオフィスのニーズはそこまで減少しない」という観測もあるが、これに対して牧野氏は疑問を呈する。

「ソーシャルディスタンスのためにオフィスを増床できるような体力のある企業はひと握りでしょう。多くの企業は、コロナ禍でダメージを受け、少しでも固定費を削減したいとオフィス縮小を検討するはずです」

企業のオフィス解約が続けば、どうなるか。ハイグレードなオフィスビルのオーナーは、グレードの低いオフィスビルに入居するテナントを引き抜こうと、営業をかけるかもしれない。しかし、ハイグレードなオフィスに入居できるような、資金に余裕がある企業は多くはない。

では、オーナーがなりふり構わず家賃を下げるかというと、そうもいかない事情がある。昨今のオフィスビルは建築費の高い時期に建てられているため、家賃を下げれば事業採算性が合わなくなる可能性もあるからだ。

「ホテルや商業施設の需要は、一時的に落ち込んだとしてもやがて戻ります。人々が旅行や買い物をしなくなるわけではないからです。しかし、ワークスタイルの変化によって不要になったオフィスの需要は、戻らない可能性もあります」(牧野氏)

オフィスビルの賃料は、大手不動産会社にとっては収益の柱の一つ。2023年を機にオフィス市場が崩壊することになれば、不動産市場のみならず日本経済全体に大きな影響を与えることになるかもしれない。

昨年8月から着工され、2023年3月に竣工予定の「虎ノ門・麻布台プロジェクト」の工事風景。オフィス、ホテル、住宅、学校と多種多様な都市機能を融合させた「ヒルズの未来形」が売りだが、コロナ禍で需要に大きな変化が出てくることは免れない(撮影:平行男)

◆牧野知弘(まきの ともひろ)

東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て、1989年に三井不動産入社。不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年、日本コマーシャル投資法人執行役員に就任し、J-REIT市場に上場。2009年、オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任する。著書に『空き家問題』(祥伝社新書)、『2020年マンション大崩壊』(文春新書)、『老いる東京、甦る地方』(PHPビジネス新書)、『こんな街に「家」を買ってはいけない』(角川新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)などがある。

◆取材・文:平 行男(たいら ゆきお)

フリーライター。社内報などの企画制作会社を経て2005年からフリーランスに。企業の広報・販促コンテンツの制作を支援するほか、各種メディアでビジネス、IT、マネー分野の記事を執筆している。ブックライティングも多数。

ビジネスライター・平のブログ

Photo Gallary2

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事