香川照之 父に2歳で見捨てられるも『半沢直樹』ばりの倍返し人生

芸能リポーター・石川敏男の芸能界”あの出来事のウラ側は……”⑰

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作中では猿之助(左)演じる伊佐山に裏切られるも、半沢と組んで倍返しをすることに成功した香川(右)演じる大和田。ドラマを離れると、バラエティー番組の撮影の合間も親しげだ(’20年)

<芸能リポーター・石川敏男の芸能界”あの出来事のウラ側は……”⑰>

高視聴率ドラマ『半沢直樹』が絶好調だ。

主演の堺雅人さんを囲む俳優陣の中でも、ひときわ目に着くのが香川照之さん。今や演技派俳優として順調に地位を確立している。

歌舞伎役者としても「9代目市川中車」を名乗り、確実に歌舞伎の世界にも香川さんの居場所が生まれているのだ。すべて、香川さんの演技力がものを言っている気がするね。

その香川さんは、女優の浜木綿子さんが育てた。お父さんは三代目市川目猿之助さん(現猿翁)。

猿之助さんと浜木綿子さんが3年間の結婚生活で離婚したのは‘68年1月。香川さんがまだ2歳の時だった。

離婚の理由は、猿之助さんが女優・藤間紫さんと不倫に走っていたからだ。と言うよりも、二人の仲は猿之助さんが浜さんとする結婚前から続いていた。

両親の離婚後、母の手で育てられた香川さんは東大を卒業、母の反対を押し切り俳優の道を選ぶ。香川さんの中には、自分の父親がスーパー歌舞伎のヒーロー・猿之助さんだということは当然知っていた。

俳優デビューして2年後の‘91年に香川さんは“絶縁状態”の父に会いに行くんだけど、猿之助さんからは付き人を通じて、

「あなたは息子ではない」
「二度と会うことはない」

と、冷たく言い放たれてしまう。本人に会うことすらできなかった香川さんにとっては、それは相当ショックだったことだろう。

それでも、ご自分の長男・正明ちゃん(現・五代目市川團子)を連れて歌舞伎の世界に飛び込もうと決心する。当然、浜さんも香川さんの妻(‘14年に離婚した元CAのT子さん)も大反対するが彼の意志は固かった。

歌舞伎座の楽屋に父を訪ねること数回。なかなか会ってもらえないという状況が続いた。その香川さんの思いに心打たれたのが紫さんだった。

離婚してから一度も会ったことがない息子を拒否する猿之助さんに

「たった一人の息子じゃないの。ちゃんと会って話を聞いてあげなさい」

と、強くアドバイス。紫さんの言葉に折れた猿之助さんは、香川さんと会うことを決める。香川さんも40代になっていた。

自分の身勝手から猿之助さんと浜さんを引き離し、猿之助さんを奪ってしまった紫さん。彼女の中にも、役者として成長する香川さんの姿が焼き付き「早く猿之助に合わせたい」と言う気持ちが大きくなっていったのだろう。若い頃から紫さんと親交のあったオレにとっては、それが痛いほど感じたね。

「息子に会わないのは、猿之助さんが自分の存在を気にしている」

と、感じていた紫さんの応援がなかったら親子の交流は成立しなかったと思う。
最初の親子の対面からは、香川さんの息子も加わり30年以上離れていた実の親子の溝が埋まってく。

歌舞伎座の楽屋でも新橋演舞場の楽屋でも香川さんと正明くんの姿が多く見かけられるようになる。芝居の跳ねた後は、猿之助さん、紫さん、香川さん、團子ちゃんに弟子たちを加えての食事会も行われていた。実の親子の姿だ。

ただ、残念ながら、そういった席に浜木綿子さんの姿はなかった。それだけ、猿之助さんを奪い家庭を壊した紫さんを許せなかったんだろう。

そこに持ち上がったのが、香川さん襲名の話だった。松竹にとっても悪い話じゃない。問題は歌舞伎役者の子供ではあるが、歌舞伎とは無縁だということ。

「映画、ドラマの俳優として生きてきた彼を、歌舞伎役者の子供だからと言って素直に歌舞伎に入れてもいいのか」

という梨園からの声もあった。しきたりを重んじる歌舞伎には先輩の名俳優たちが沢山いる。

そういう声を払しょくしたのも、紫さんの功績が大きい。松竹と掛け合って実現させた。

そして、猿之助さんが「猿翁」に、猿之助さんの実弟・段四郎さんの長男で、香川さんの従弟・二代目市川亀治郎さんが「四代目猿之助」、香川さんが「九代目中車」、香川さんの長男・正明くんが「五代目團子」にという襲名が‘11年に発表された。

いまは、コロナの影響で、歌舞伎の大名跡「十三代目市川團十郎・白猿」の襲名興業も行われていない歌舞伎界。恐ろしいコロナ禍の影響で、先が見えない興行界だけど、香川さんをテレビで見かけるたびに、猿之助さんのスーパー歌舞伎を松竹に認めさせ、香川さんの卓越した才能を見抜き歌舞伎の世界に勧めた紫さんの顔が浮かぶ。

そして、香川さんは、その紫さんの期待を裏切らないように、「大人の階段上る」ってCMじゃないが、確実に映画・ドラマ俳優と歌舞伎役者の階段を。頂点に向かって上っている。まさにドラマ顔負けの“倍返し”人生だ。

それもすべて澤瀉屋(おもだかや・屋号)を、身をもって支え続けた藤間紫さんがいたからだったのだろう……。

  • 取材・文石川敏男

    46年生まれ、東京都出身。松竹宣伝部→女性誌記者→芸能レポーターという異色の経歴の持ち主。『ザ・ワイド』『情報ライブ ミヤネ屋』(ともに日本テレビ系)などで活躍後、現在は『めんたいワイド』(福岡放送)、『す・またん』(読売テレビ)、ラジオは福井放送、ラジオ関西、レインボータウンFMにレギュラー出演中

  • PHOTO原一平

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