メイドインジャパンでナイキに挑む!ミズノ「謎の白い靴」開発秘話 | FRIDAYデジタル

メイドインジャパンでナイキに挑む!ミズノ「謎の白い靴」開発秘話

『厚底』が席巻した箱根駅伝で唯一区間賞を記録 ! 「謎の白い靴」がベールを脱いだ

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ミズノ大阪本社にある「バイオメカニクス実験室」でウエーブデュエル ネオの試作品を履いて計測を行う、レーシングシューズ開発担当の梶原遥氏。「ここで酸素消費量、接地場所など様々なことを計測します」(梶原氏)
ミズノ大阪本社にある「バイオメカニクス実験室」でウエーブデュエル ネオの試作品を履いて計測を行う、レーシングシューズ開発担当の梶原遥氏。「ここで酸素消費量、接地場所など様々なことを計測します」(梶原氏)

「7月1日にミズノ公式オンラインショップで先行予約受け付けをしたのですが、1時間で全サイズが完売したんです。思った以上に待っていたお客様が多かったんだと嬉しい気持ちになりました」(ミズノ シューズ企画担当「ウエーブデュエル ネオ」開発チームの益子勇賢氏)

昨年から世界中を席巻したナイキの「厚底シューズ」。それは正月の箱根駅伝でも例外ではなかった。が、全区間中の最終10区だけは〝非ナイキ〟のシューズを履いた選手が区間賞を獲得。それがロゴもわからない真っ白なシューズだったため注目を集めたのだ。その「謎の白い靴」=「ウエーブデュエル ネオ」が、この夏、市場に登場し、ランニング愛好家の間で話題となっている。益子氏が続ける。

「ランニングシューズの試作品(プロトタイプ)は黒色が多く、白は珍しい。真っ白にしてミステリアスにしたいという気持ちもありましたし、さらには市場の7~8割が厚底という現在の状況をオセロのようにひっくりかえしたい、という思いを込めたのです」

底の厚さが27.5㎜と時代の逆をいく薄底タイプであるのも大きな特徴だ。

「開発当初はカーボンプレートも試作したのですが、ミズノのシューズの良さとは違う、と封印しました。弊社のシューズの特徴は〝ランナーの走りを妨げない〟ということです。厚底シューズは厚底にあったベストなフォーム、接地で走れた時に最大の反発を得られますが、20㎞、あるいは42.195㎞という長丁場のレースで常に同じ接地を続けるのは難しい。

ウエーブデュエル ネオは、序盤にはつま先着地で、後半は疲れてかかと着地になったとしても反発力を受け続けられる設計になっています。それが一番の違いで、強みでもあると思っています」(益子氏)

昨夏、益子氏らは箱根駅伝参加校の夏合宿に赴(おもむ)き、試作品を何十足も持ち込んで、履いてくれる選手を地道に探した。「同じ走法のままなのに反発力が違う」「スパイクみたいなグリップ感がある」と、試作品はすぐに捌(さば)けた。が、本番での着用は4大学7選手にとどまった。

「それでも今年の大会で結果が出たことで、来年の箱根へのアピールもできました。ナイキの厚底は価格が3万円台でこれまでの常識から考えると高いですが、結果を出せば売れるということを証明し、市場価格を引き上げてくれた。今、各メーカーとも素材開発に拍車がかかっています。4年ほど前までは箱根駅伝でのミズノのシェア率は1位だったんです。〝本気の反撃〟というキャッチどおり、箱根のシェアを取り返し、業界自体を盛り上げていきたいと思っています」

(右)高反発の新素材「ミズノエナジー」を搭載した試作品。600㎞走行しても反発力が持続すること、という同社の独自基準に沿っている (左)市販品の「ウエーブデュエル ネオ」。試作品から微調整を繰り返した。アッパーはニット素材のハイカットだ
(右)高反発の新素材「ミズノエナジー」を搭載した試作品。600㎞走行しても反発力が持続すること、という同社の独自基準に沿っている (左)市販品の「ウエーブデュエル ネオ」。試作品から微調整を繰り返した。アッパーはニット素材のハイカットだ
1月3日、箱根駅伝10区を走り区間新を叩きだした創価大学の嶋津雄大選手。真っ白な足下に注目が集まった
1月3日、箱根駅伝10区を走り区間新を叩きだした創価大学の嶋津雄大選手。真っ白な足下に注目が集まった
開発を担当した、グローバルフットウエアプロダクト本部・益子勇賢氏
開発を担当した、グローバルフットウエアプロダクト本部・益子勇賢氏

『FRIDAY』2020年9月4日号より

  • 撮影加藤 慶

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