「拷問だった」大学を訴えた職員らが明かす「人格否定研修」の中身

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「4年前のきょうは、退職強要研修の真っ最中でした。私は『あなたは腐ったミカンです』『戦力外です』と言われ続けたことで、パニックになりました。長時間にわたって、参加者全員に人格否定の言葉が浴びせられるのを聞くのはつらかった。はっきり言って、あれは拷問です」

学院を訴えた3人

こう話すのは大阪府の学校法人「追手門学院」に勤務していた40代の元職員。8月24日、この元職員と休職中の職員2人が、違法な退職強要を受けたなどとして、追手門学院と学院の川原俊明理事長、コンサル会社のブレインアカデミーなどを相手取り、慰謝料など約2200万円の損害賠償を求める訴えを大阪地方裁判所に起こした。

問題の経緯はこうだ。2016年6月、学院の総務室長から専任事務職員に対し、「面談と指名研修を行う」という通知があった。そこには「学校経営は極めて厳しい時代となっています。(中略)『求められる職員像』に達していない方には、今後の職のあり方もご検討頂かなければなりません」と書かれていた。

翌月、18人を対象に学院が面談を実施。「2017年3月末までにやめていただきたい」と、退職勧奨が始まったのだ。

「2019年春に新キャンパスをオープンすることもあり、大学側は人件費を削減し、財政の安定化を進めたかったのでしょう。18人のなかには複数の管理職経験者や、昇進したばかりの人も含まれていました」(大学関係者)

面談が行われた後、この18人に対して追手門学院は「研修」を実施する。その際、自分たちの手で進めるのではなく、この研修を外部に委託。請け負ったのが、「ブレインアカデミー」という教育系のコンサル会社だ。

今回、追手門学院とブレインアカデミーを提訴した3人は「この研修によって体調を壊し、休職を余儀なくされた、と主張する。3人は提訴後、匿名を条件にメディアの取材に応じた。裁判所に提出された訴状に記されたのは、追手門学院とブレインアカデミーによる執拗な「退職強要」と彼らが受けたという、耳を疑うような「研修内容」についてだった。

訴状によると、始まりは4年前の2016年8月22日のこと。対象となった18人が「研修」を受けるために大阪市内のビルの一室に集められた。「研修」とは名ばかりで、その内容は「5日間計40時間にわたって退職を繰り返し強要する」ものだった、とのことだ。

学院から委託を受けたブレインアカデミー所属の講師は、参加した職員に対して業務とは関係ない人格否定を繰り返した、という。

「あなたのような腐ったミカンを追手門の中に置いておくわけにはいかない」
「戦力外なんだよ」「老兵として去ってほしい」「虫唾が走る」
「賞味期限切れちゃったかな」

暗幕で外の光を遮断した部屋では、このような講師の怒鳴り声が響き、水を飲むことも、トイレに行くこともはばかられる雰囲気。参加者の多くは頭痛や吐き気を起こすなど、体調に異常をきたした。なかには泣き出す職員もいたが、同席していた学院執行部は止めるわけでもなく、「ただ監視していただけ」(関係者)だったという。

その研修の末に原告の1人が受け取った「退職勧告書」には、「物事の本質を理解する能力が欠落している」「思考が浅く幼い」など、誹謗中傷ともいえる言葉が並んでいる。

信じがたい言葉が並んだ「退職勧告書」

退職を強要された18人のうち9人が心療内科などにかかり、うつ病などと診断された。その後、2017年3月末で10人が退職することに。冒頭の元職員も休職に追い込まれ、今月、追手門学院から休職期間が満了したとして解雇された。

「あの研修がきっかけでうつ病になりました。いまでも当時のことを思い出すと、体が動かなくなります。何とか職場に戻ろうと思っていましたが、バッサリ切られて、悔しいし、悲しいです」

裁判は、退職強要が社会常識的に逸脱したものであるかどうか、また違法性が認められるかどうかが争点となるだろう。原告の弁護団は「悪質で違法性が高い」とその問題点を指摘している。原告3人は現在労基署に労災を申請中だ。

一方、追手門学院は筆者の取材に対して「本件につきましては訴状が届き次第、内容を確認して、対応してまいります。多くの皆様方にご心配とご不快な思いをさせましたことをお詫び申し上げます」と述べるに留まった。これまでの経緯から、全面的に争うことが予想される。

しかし、そもそも学校法人が外部講師を雇って退職を強要すること自体、問題があるのではないだろうか。関係者の証言によると、この時の研修費用は最大で約3000万円になることが、学院内で承認されていたという。「受講者に自律的キャリア形成への変化が認められた場合」、1名につき税込みで108万円支払う契約が結ばれていた…とのことだ。

言葉は選んでいるが、簡潔に言えば「一人退職させれば、約100万円が報酬として支払われる」契約だった可能性が高い、ということだ。筆者が入手した資料などから判断すると、2016年の年末までにブレインアカデミーに少なくとも700万円が支払らわれた可能性がある。

原告側の弁護団

どのような理由があったにせよ、このような「研修」が行われていたのなら、問題アリといわざるを得ない。同大学は理念の一つに「自他の人格を尊重」すると記しているが、こうした訴訟が起こされるということは、その理念を忘れたのではないか、と疑われても仕方がないだろう。

  • 取材・文田中圭太郎

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