横浜流星、佐藤健、野村周平…人気俳優たちの「和装」作品特集
新型コロナウイルスと例年にない長梅雨で、夏らしい夏をなかなか体感できなかった2020年の日本列島。花火大会やお祭りも中止となってしまい、浴衣に一度も袖を通さないまま夏が終わってしまった……という人も多かったのではないだろうか。
せめて映像のなかで、「和」を感じたい……! ということで、今回は「若手人気男優の和装が楽しめる」作品を、いくつかピックアップしてご紹介。
なお、今回はあくまで筆者の独断と偏見で選出した。皆々様方の中に「この作品の着物&浴衣姿も捨てがたい……」も大いにあるかと思うが、何卒ご容赦いただきたい。
横浜流星『私たちはどうかしている』

まずは、8月12日から放送開始したこのドラマをご紹介。飛ぶ鳥を落とす勢いの若手実力派・横浜流星と人気女優・浜辺美波が共演したことでも話題を集めているが、見目麗しい2人の和服姿が堪能できる作品でもある。
和菓子の世界で、とある殺人事件の容疑者の娘と被害者の息子が愛憎関係を繰り広げる恋愛ミステリー。横浜は本作で、創業400年の老舗和菓子屋の跡取り息子・椿を演じており、洗練された和装や、紋付袴の着こなしを見せつけている。紺の着物に、たすき掛けというスタイルも、鍛え上げられた身体が浮き彫りになり美しい。
職人気質な性格で、「美しくなければ和菓子ではない」と言い放つ孤高の男・椿。壮絶な過去を背負ったシリアスなキャラクターという役どころもまた、ファンにはたまらないのではないか。横浜が醸し出す雅な香りに惑わされ、猛暑でうだる心を収めてくれる時間となったことだろう。
伊藤健太郎『アシガール』
『弱虫ペダル』や『宇宙でいちばんあかるい屋根』など話題作への出演が続いている伊藤健太郎。その伊藤は、戦国タイムスリップドラマ『アシガール』で戦国武将に扮している。2017年の作品だが、緊急事態宣言の自粛期間に再放送されたため、記憶に新しいのではないか。
本作は、脚力が自慢の女子高生が戦国時代にタイムスリップし、“足軽”として愛しの若君を支えていく物語。本作で伊藤は、容姿端麗で勇猛果敢な大名の跡取りを熱演。殺陣や乗馬、所作や発声に至るまで稽古を積み、心身ともに武将になりきっている。
伊藤の様々な着物姿を見られるのも見どころの一つで、颯爽と馬を操り、長髪がたなびくさまは神々しささえ漂う。かと思えば、すっきりした烏帽子姿も披露。こちらは端正な顔立ちが引き立ち、ファンを悶絶させた。
伊藤といえば、7月17日に公開された出演映画『今日から俺は!!劇場版』が新型コロナによる座席制限下にもかかわらず、9月10日時点で興行収入50億円を突破し、2020年公開映画のなかで1位という大ヒット中。若手注目株の筆頭といえよう。
また、11月には映画『十二単衣を着た悪魔』も公開予定で、伊藤は「源氏物語」の世界にタイムスリップし、ひょんなことから陰陽師となる男を演じる。平安時代の装束である「狩衣(かりぎぬ)」をまとう伊藤にも注目だ。

佐藤健・神木隆之介・窪田正孝『るろうに剣心』

そして、やはり和装といえばこのシリーズは欠かせない。漫画の実写映画としても圧倒的な人気を誇る『るろうに剣心』だ。
佐藤健は、幕末最強の暗殺者であり、時代が明治に移ってからは弱者を助ける“流浪人”・緋村剣心を体現。彼のトレードマークである赤い着物を違和感なく着こなし、驚異的な再現度で魅せる。着物&草履姿で繰り出す超高速の剣技もすさまじく、見た目のカッコよさ・アクロバティックなアクションの双方で、観る者を楽しませてくれるだろう。
対する神木隆之介は、着物の下にシャツ+袴の「書生スタイル」で登場。一見温厚な好青年だが、感情が欠落した人斬りであり、時に観る者を戦慄させる凄みを見せる。剣心を圧倒する俊足が武器で、神速で移動しながらも汗ひとつかかないという超人的なキャラクターだ。
ちなみに本シリーズ、第1作に窪田正孝も出演している。出番自体は多くはないのだが、来年公開の最新作に繋がる重要なキャラクターを熱演しており、彼の着物&ちょんまげ姿を拝める。その窪田が出演するNHK連続テレビ小説『エール』では、清潔感あふれる浴衣を披露。
野村周平・新田真剣佑・賀来賢人『ちはやふる』

普段洋装の男子が和装に着替えるとき、特別感で輝きが2割、いや4割増しになるもの。「試合の時は袴で臨む」競技かるたの高校生選手たちを描いた実写映画版『ちはやふる』には、そんな楽しみ方も用意されている。
広瀬すず、松岡茉優、上白石萌音、清原果耶といった豪華な女優陣の和装も華やかだが、男性陣も負けず劣らず麗しい。主人公・千早(広瀬)の幼なじみ、太一(野村周平)と新(新田真剣佑)は真逆の性格で、着物の着方にも違いがにじみ出ている。太一はきっちり几帳面に、新はどっしり大らかに。大雑把に言えば、「カッコいい」と「かわいい」の両方を楽しめるのだ。前者は茶髪、後者は眼鏡とワンポイントあるのも心憎い。
「青春全部を懸けた」若者たちの純粋で全力の奮闘が瑞々しく切り取られた点が大きな売りだが、袴という“勝負服”に身を包み、「音にならない音」をつかまえようとする高校生たちの姿は、出演陣のフレッシュな魅力も相まって、キラキラと光を放っている。
一方、最強のかるた名人に扮した賀来賢人は、無精ひげにやや着崩したスタイルで、大人の色気を放出。新田や野村との雰囲気の違いにも、注目していただきたい。
林遣都『花芯』
『おっさんずラブ』や『漱石悶々 夏目漱石最後の恋 京都祇園の二十九日間』、庭師見習いに扮した『京都人の密かな愉しみ Blue 修業中』等々、和装姿も板についている林遣都だが、今回は色気がえぐい文芸作品『花芯』を推したい。
瀬戸内寂聴の官能的な恋愛小説を映画化した本作。夫(林遣都)の上司(安藤政信)に恋をしてしまう人妻(村川絵梨)の姿を赤裸々に描いており、林は激しいベッドシーンにも挑んでいる。外では洋装・家では和装と、2種類の着こなしが用意されたつくりになっており、爽やかなイメージが強い林の気だるい着流しは必見だ。
R15+のアダルトな内容ではあるのだが、着物だからこそ生まれる、におい立つような背徳感に身をゆだねてみるのも、一興ではないだろうか。
吉沢亮「マイナビバイトのCM」

基本的に映画やテレビドラマに絞ってきたが、“おまけ”として入れさせていただけないだろうか。吉沢亮がマイナビバイトのCMで演じた「バイト探しサムライ」のキャラクターが、一度観たら癖になる“中毒性”なのだ。
立ち振る舞いや出で立ちは二次元のような美しさにもかかわらず、やたらハイテンションなギャグ演技を披露しており、そのギャップに萌えるファンが続出。吉沢自身、剣道の有段者であり、やはり和装と侍姿がよく似合う。山﨑賢人と共演した映画『キングダム』では古代中国風の衣装を着ているが、そちらとは一味違った良さが光る。
この先、映画やドラマで吉沢の和装姿ががっつり拝める日を楽しみに待ちつつ、個人的な“推し”としてラインナップに加えさせていただきたい。
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ざっと10人ほど紹介させていただいたが、いかがだっただろうか。冒頭に述べたように、各々の脳裏に浮かんでいる「イチオシの和装男優&作品」は、まだまだあるだろう。
夏は過ぎたが、新型コロナの影響もあり、まだまだ厳しい日々が続きそう。彼らに“癒し”をもらいつつ、穏やかな日々を送っていきたい。
文:SYO
映画ライター。1987年福井県生。東京学芸大学にて映像・演劇表現について学ぶ。大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション勤務を経て映画ライターへ。現在まで、インタビュー、レビュー記事、ニュース記事、コラム、イベントレポート、推薦コメント等幅広く手がける。