「SNS誹謗中傷裁判」315万円で示談した春名風花の葛藤

木村花さんの死についてもコメント

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
Zoomでインタビューに応じた春名風花(スクリーンショット)

Twitter上で「両親自体が失敗作」などと誹謗中傷を繰り返していた人物を名誉毀損と侮辱の疑いで訴えた裁判にて315万4000円での示談を受け入れた“はるかぜちゃん”こと女優の春名風花(19歳)。

小学生のころから悪質な書き込みや嫌がらせに悩まされてきた春名が単独インタビューに応じ、示談を受け入れた真相やネット上で誹謗中傷を繰り返す人へ伝えたいことを語った。

最初は示談を受け入れたくなかった

「示談の申し入れがあったとき、最初はしたくなかったです。示談だと、裁判によって罪が認められたことにはならないので判例になりません。相手の身分も明かせないので、2年間もの時間を掛けた結果がそれでは悲しいと思いました。でも今は、示談を受け入れたことに後悔はありません」

なぜ心変わりしたのだろうか。そこには、依頼していた田中一哉弁護士からの助言があった。

「田中一哉弁護士から、SNS系の事件では特に、初犯だと逮捕されても不起訴になってしまう可能性がある一方、315万円ほどの示談金はかなりの高額で、これを受け入れるだけでも社会的な意味があると思います、という内容のお言葉を頂きました。

示談は悔しかったのですが、現行の法律では、名誉毀損罪だと3年以下の懲役もしくは罰金50万円以下、侮辱罪だと1日以上30日未満の拘留もしくは1000円以上1万円未満の金銭の支払いで終わってしまいます。仮に裁判で勝っても、相手に与えられる罰は軽すぎると思いました。それならば、315万円4000円という目に見える形で相手に負担が発生したほうが、今後、裁判をする方の参考にもなるかなと思い、示談を受け入れることにしました」

幼いころからモデルや子役として芸能活動を行い、携帯電話を使い始めた3歳からブログを、9歳からTwitterを始めた春名は投稿内容が話題になる一方、“子どものくせに生意気だ”をはじめとした様々な嫌がらせを受け続け、具体的な殺害予告や、所属事務所や出演予定の劇場への爆破予告などの被害に遭ってきた。

今回の裁判では、高校生だった約2年前から相手の氏名や住所を特定するため、約1年間掛けてTwitter社や複数のプロバイダへ情報開示を求め、相手を特定したうえで告訴状を提出。家宅捜索などの取り調べが始まる直前、相手方から示談の申し入れがあり、今年7月16日に示談が成立した。

「示談金が大きな額だったので、色々なニュースで取り上げて頂きました。315万4000円は、弁護士の方々の間ではザワザワする金額だったそうです。裁判の期間中も、裁判のためにアルバイトでお金を貯めていた時期も辛かったのですが、今は、示談を受け入れたことに後悔はありません」

Twitterをやめてわずか2週間後に起きた木村花さんの死

示談を受け入れる以前に、裁判をする決意をかためる過程でも春名の中で様々な思いが交錯していたという。

「以前、芸能界に携わる方から『裁判はイメージが悪くなるから、しない方がいいよ』と言われたことがあります。ですが、嫌なことをされて嫌だと言ったらイメージが悪くなる社会って、不健全だなと思いました。今回、色々なコメントを頂いて、『誹謗中傷に悩まされている方はこんなにたくさんいるのだ』と思いました。

『嫌だよ』と声をあげていかないと社会は変わらないと思います。芸能人は影響力があるからこそ、できる方はなるべく声をあげて、裁判などをした方が、“インターネット上での誹謗中傷は罪になる”ということがもう少し認識されていくのかなと思います」

5月23日にはプロレスラーの木村花さんが同じくSNSでの誹謗中傷を理由に22歳の若さで自ら命を絶った。春名がTwitterを5月10日に卒業(=Twitterアカウントでは情報告知などのみを行い、交流や意見交換などは行わないこと)して、まだ2週間たたない頃に起きてしまったショッキングなニュースだった。

「ついに亡くなる方が……、と思いました。その後、それまでは“有名税”という意見が主流だったのが、“相手が芸能人であっても誹謗中傷はいけない”というふうに世間の空気がコロッと変わったのを見て、人が亡くなるまでいかないと分かってもらえないのだなと、悲しくなりました。

木村花さんとはお会いしたことはないのですが、今回のことでやっと、“芸能人という立場にある方でも『誹謗中傷は嫌です』と声に出してよい”というような空気が生まれたことも、悲しいです。木村さんが亡くなる前に、みんなはそのことに気づけなかったのかなと思います。Twitterを卒業してからすぐに木村花さんが亡くなったのですが、もしTwitterを従来通り続けていたら、春名風花も、もしかしたら命を絶っていたかもしれません」

幸い、命を絶つことを免れた春名は自身のYouTubeチャンネルにて示談成立を発表。その後、ニュースで取り上げられることで、春名のもとに反響が届いた。声をあげた行動に対して、好意的な意見が多かった。

それでも春名の「戦い」は終わっていない。ネット上で今も繰り返される誹謗中傷について、どう思っているのか?

「ネット上だと相手の顔が見えないのですが、今一度、画面の向こうにいる人間のことも考えてもらいたいです。現実世界では人に対して面と向かって『死ね』と言うことなんて、まずないと思います。そういった現実世界での感覚を、ネットやSNSでも意識してほしいです。嫌いな人間がいるのは仕方がないことですし、『何も言うな』と言っているわけではありません。人間同士の会話として、対応してほしいです」

ネットで誹謗中傷を繰り返す人に対して、被害者の率直な思いを明かした。

「捕まることがほとんどないので、『ネットでの誹謗中傷は罪にはならない』と思っている方は多いですよね。正義感から誹謗中傷をしている方は多いのですが、中には、“自分が誹謗中傷をしていること”を理解していない人もいます。仮にどんなに正義感があったとしても、口汚い言葉を使って罵ったり、相手の家族や周りの人間たちに被害を出したり、相手の仕事を取り上げてやろうだとか、人間関係を崩してやろうだとか、……そういうことをした時点で、その方のほうが悪いのです。

今回の例を受けて事件になると知ってくれた方が多かったようなので、嬉しいです。実際の刑罰は、もう少し重くなってほしいですし、情報開示のためのプロバイダとの裁判も、もう少しスムーズにいくようになってくれたらと思います。見知らぬ人間を叩くことによって罪を負うような行動はなくなってほしいです」

***

かつては“Twitterの妖精”と呼ばれた春名も来年2月には20歳の誕生日を迎える。

「これまで、うまくいきそうなときにクレームの電話でつぶされてしまったこともありました。多くの方に観て頂ける場所に立つ機会は少なかったのですが、それでも、女優として春名風花を使ってくださっている方々がたくさんいます。これからも、そういう方々に恥じない仕事をしたいです。

日本では芸能人がはっきりと意見を言うと嫌われやすいため、裁判などをすると仕事がなくなってしまうことがあります。特に俳優や女優は、仮に家族や友人を侮辱されても黙り続けなければならないケースが多いです。そうでないと、応援してもらえないからです。

しかし、海外では、例えば、(英女優であり国連の「UNウィメン」親善大使に任命され、性別やジェンダーによる差別の根絶を願っている)エマ・ワトソンさんのように、個人的な意見を言ったり社会的な活動をしても俳優業・女優業を辞めさせられたりすることはありません」

春名は今後、“演じることと自分の意見を表明することは両立させられる”と自らの活動で証明し、人権を侵害されたらどんな職業に就く人でも泣き寝入りをせずにいられる社会が訪れることを願っている。

“Twitterの妖精”も来年2月に20歳の誕生日を迎える(事務所提供写真)
  • 取材・文・撮影竹内みちまろ

Photo Gallary3

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事