『24時間テレビ』vs『半沢直樹』もし両者が激突していたら… | FRIDAYデジタル

『24時間テレビ』vs『半沢直樹』もし両者が激突していたら…

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7年ぶりに放映の続編も大ヒット。『半沢直樹』がすっかりハマり役になった堺雅人
7年ぶりに放映の続編も大ヒット。『半沢直樹』がすっかりハマり役になった堺雅人

8月22日・23日放送の『24時間テレビ43 愛は地球を救う』。
そして同番組放送直後に編成された『半沢直樹』2020年版第6話。

共に高視聴率となったが、もし両番組が同じ時間で激突していたら、どちらがより高い視聴率をとっていただろうか。

各種視聴データから、シミュレーションしてみた。

率微減の『半沢直樹』

23日の午後9時から始まった『半沢直樹』第6話。
ビデオリサーチ(VR)関東地区の世帯視聴率は24.3%で、前回の25.5%より微減となった。全国204万台のインターネット接続テレビの視聴動向を調べるインテージ「Media Gauge」の関東地区の15秒毎の接触率でみても、6話は5話より下がっている(図1)。

9時ちょうどの時間帯では、5話も6話も14.4%前後と大差はなかった。
ところが5分後、5話は17.7%まで3ポイント強も急伸したが、6話は17.0%と上昇の具合が鈍かった。この序盤の差は最後まで響き、54分間の平均接触率は5話が18.245%に対して6話は17.694%。両者の差はあまり縮まらなかった。

同じ9時にスタートした日本テレビ『行列ができる法律相談所』。

冒頭6分間は『24時間テレビ』で「募金ラン」に挑んだ高橋尚子が出演した。この『24時間テレビ』の余熱が、『半沢直樹』序盤の足を引っ張ったのだろうか。

無観客でも盛り上がった『24時間テレビ』

一方の『24時間テレビ』は、無観客開催で放送された。
「今やる意味がわからない」「人の死を視聴率稼ぎにする異常さに唖然」など、放送開始前から批判がたくさんあった。ところが始まってみると、例年に劣らず良く見られた。

VRの関東地区データでは、平均視聴率が15.5%で歴代19位タイ。
PART.7「動く」(16:59~20:54)の世帯視聴率は23.4%。『半沢直樹』の24.3%とほぼ拮抗していた。しかもインテージ「Media Gauge」の15秒毎接触率でみると、PART.7の約4時間は右肩上がりが続いた(図2)。


シドニー五輪女子マラソン金メダリストの高橋尚子や、「チームQ」の「募金ラン」がどこまで距離と金額を伸ばすのかに、注目した人がどんどん増えていたことがわかる。

では『24時間テレビ』最後の1時間だけの世帯視聴率はどうだっただろうか。
瞬間最高は高橋尚子が116kmを走り抜き、「サライ」が流れる中でエンディングを迎える場面の27.6%だったので、『半沢直樹』の24.3%を超えていた可能性は十分ある。

では、その最後の1時間に両番組が激突していたら、軍配はどちらに上がっただろうか。

多くの視聴者が掛け持ち

盛り上がった『24時間テレビ』が終了後、実は多くの視聴者が『半沢直樹』に駆け込んでいる(図3)。

 

9時ジャストまでに『24時間テレビ』から逃げた視聴者は、インテージ「Media Gauge」のデータでは10.59%。逆に『半沢直樹』スタートに備えてTBSに流入したのは8.71%。『24時間テレビ』から他のチャンネルに逃げたり、テレビを切ったりした人がいたかも知れないが、8割前後は『24時間テレビ』から『半沢直樹』に移っていただろう。

9時からの10分間でも、依然移動が続いていた可能性が高い。

『24時間テレビ』を振り返っていた『行列ができる法律相談所』は、その間に0.73%接触率を落としていた。逆に『半沢直樹』は、冒頭の10分で3.04%接触率を上げた。日テレ以外からも大量に集めていたが、その4~5分の1は、日テレからだったと推測できる。

ただしこの移動は、『24時間テレビ』のメインが終わってからのことだ。
例え9%前後の人が移動していても、同時間帯に放送していたらどちらに軍配が上がったかを判断するのは難しい。

誰が見ていたのか?

では男女年層別に誰がそれぞれの番組を見ていたのかから推定しよう。
比較のために『半沢直樹』と肩を並べる世帯視聴率となった『ドクターX~外科医・大門未知子~』の第6期最終回(17年12月14日放送)を入れて論じてみよう。

スイッチ・メディア・ラボによると、3番組とも個人視聴率全体は互角だ(図4)。

ただしM3+とF3+(男女65歳以上)は『ドクターX』が最も高い。中高年に強いテレビ朝日のドラマらしい実績だ。

一方MCとFC(男女4~12歳)・FT(女14~19歳)・F1(女20~34歳)では、『24時間テレビ』がトップだ。さすがにジャニーズのタレントがたくさん出演しているだけのことはある。若年層に強い日テレの面目躍如といったところだろ。

そしてM1からM3-(男20~64歳)までと、F2からF3-(女35~64歳)までは、『半沢直樹』がおさえた。社会派エンターテインメントの実力発揮といったところだろう。

こうした男女年層別のレーダーチャートから判断すると、『24時間テレビ』と『半沢直樹』が同時間帯で激突すると、若年層や女性は『24時間テレビ』を選び、働き盛りや男性は『半沢直樹』を選ぶ可能性が高い
だとすると、働き盛りの方は若年層より人口が多い分、『半沢直樹』に軍配が上がるかも知れない。

録画再生視聴というダークホース

ただし東芝の「Time On Analytics」視聴データをみると、別の可能性が出てくる(図5)。

『半沢直樹』のライブ視聴と録画再生視聴を合わせた総合視聴は、初回から5話まで右肩上がりが続いている。ただしライブと録画再生のバランスでいうと、徐々に録画再生が増えており、ライブは回により上下のバラツキがある。

実は良くできたドラマほど、視聴者は自分の都合に合わせてじっくり見たいという欲求がある。

過去にも16~17年は、日曜9時にフジテレビとTBSがドラマで衝突していた。その際に気楽なコメディタッチのドラマはライブ視聴、良くできていても重いドラマは録画再生と見分けていた視聴者が少なくなかった。

この伝でいけば、両番組が同時間帯で激突すると、『24時間テレビ』はライブ視聴、『半沢直樹』は録画再生とする視聴者がかなり出るために、世帯視聴率では『24時間テレビ』に軍配が上がったかも知れない。

現実は激突回避

以上のように、両番組の激突はいくつかの要素が介在し、勝敗は微妙だったと考えられる。

ただし現実は、日テレがきっちり9時までに番組を終了させ、激突は回避された。

TBS内では、日テレがぶつけてきたら「嫌だなあ」と感じていたようだ。
日テレの方でも、「『半沢直樹』と重なった途端に数字が下がったらヤバイ」と感じていたそうだ。結果として大人の判断を日テレの側でしたようだ。

「募金ラン」はきっちり時間内で終わらせていた。

ただしここでも、別の可能性も考えられる。

2018年2月18日の平昌オリンピックのことだ。TBSはスピードスケート女子500mで、小平奈緒選手が金メダルを獲得した場面を中継した。2時間の番組は、平均視聴率21.4%、優勝決定直後は33.0%もの瞬間最高が出た。

この裏で日テレは、『イッテQ!』をぶつけて来た。

普通なら強い五輪を避けた編成をしても不思議はない。ところが日テレは、「テレビの前に人を集める」必要から、敢えて同局最高のレギュラー番組を編成し、見事に19.2%を獲得した。

この結果、HUT(総世帯視聴率)は70%超と、普段よりかなり高くなり、見事にテレビの前の賑わいができた。つまり両番組が激突すると、視聴率を食い合う側面もあるが、テレビの視聴率全体が上昇することもある。

残念ながら今回は激突が回避されたので、実際がどうなったかは不明だ。

ただいずれにしても、恒例の『24時間テレビ』が放送された今年の夏は、『半沢直樹』も盛り上がったためにテレビの力を再認識させてくれることとなった。

今後も各テレビ局には、こうした贅沢な妄想の機会を提供してもらいたいものだ。

  • 鈴木祐司(すずきゆうじ)

    メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

  • 写真時事通信社

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