麻生太郎が画策する「石破を潰して菅総理誕生」シナリオの深層 | FRIDAYデジタル

麻生太郎が画策する「石破を潰して菅総理誕生」シナリオの深層

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麻生氏は腹をくくった

8月28日17時10分、安倍総理が記者会見で辞意を表明した。持病である潰瘍性大腸炎が悪化して「政権投げ出し」の再現に追い込まれる前に、コロナ対策に道筋をつけたうえで、先手を打って辞意表明したのだ。

総理が記者会見で体調について説明するという情報が事前に流れていたとはいえ、「体調不安を払拭する説明だろう」というのが大方の予想だった。いきなりの辞意表明は日本中に大きな衝撃を与えている。

政界事情に詳しい永田町関係者はこう言う。

「総理の様子から近い将来の辞任が避けられないという感触を持ってた麻生太郎副総理兼財務相にしても菅義偉官房長官にしても、28日の辞任表明は寝耳に水だったようです。それ以外の安倍側近も含めて、虚を突かれた政治家が大半でしょう。自民党の各派閥は緊急会合を開き、ポスト安倍をめぐる臨戦態勢に入りました」

では、ポスト安倍は誰になるのか。

キーパーソンとして今、もっとも注目されているのが麻生太郎副総理だ。

安倍総理の盟友として7年8ヶ月の長期政権を支え続けた麻生氏は、安倍総理の無念を誰よりも理解している人物といえる。自身が総理を務めていた2009年には、総選挙で敗北し政権を民主党に明け渡した苦い思い出もあり、安倍政治をいかに継続させるかという「継承性」が、今の麻生氏にとって重要なポイントになっていることは間違いがないだろう。

麻生氏は戦後日本の礎を築いた吉田茂元首相の孫であり、かつ寛仁親王妃信子殿下の兄にあたる。綿々と続く日本の保守本流そのものを担う自覚は、政界随一だ。

その麻生氏だが、ポスト安倍を「岸田文雄政調会長」ではなく、「菅官房長官」で腹をくくったという情報が流れている。

本来であれば、麻生副総理の本命は岸田氏のはず。現在は独自の麻生派(志公会)を率いているとはいえ、麻生氏はもともと吉田茂直系の池田勇人が創設した「宏池会」(現・岸田派)の出身だ。

しかし、急展開を始めたポスト安倍レースで、いま岸田氏を押すと、岸田嫌いで知られる菅官房長官だけでなく、2019年9月の人事で、自分に代わって幹事長の座につこうとした岸田氏のことを忘れてはいない二階俊博幹事長との関係が微妙になる。

もし、菅=二階連合が敵に回ると、どうなるか。

総裁選は現在のところ、党員投票を行わず、自民党所属国会議員396人から大島理森衆議院議長と山東昭子参議院議長を除いた394人と、各都道府県連代表3名(計141人)からなる両院議員総会で行われる見込みと伝えられている。

しかし、安倍総理は、辞任会見の直前に二階幹事長と面談し、後継選出の党内手続きを全て二階幹事長に一任しているのだ。

その二階幹事長が、岸田政権樹立を阻止するべく石破茂氏(元幹事長)と手を結び、党員投票を実施するフルスペックの総裁選実施に踏み切った場合、不測の事態が起きかねない。実際に二階幹事長は28日の民放番組収録で「石破氏は政策通で、有力な候補者だ」と持ち上げ、八方美人策を隠そうともしていない。

石破氏といえば7月9日、中国の習近平国家主席の国賓来日をめぐり、石破派(水月会)の会合で、「礼儀を尽くさないといけない」と述べて、国賓来日中止を求める自民党外交部会の非難決議に同調しない考えを示している。

仇敵である石破政権誕生を阻止するためには、回り回って、菅=二階連合と手を組み、岸田を諦めて、あえて菅を推す――。これが、日本の将来を憂える「ザ・保守本流」麻生太郎氏の現在の心境ではないだろうか。

もしそうだとした場合、菅義偉候補は数の上からして優勢になる。

自民党各派閥の構成は現在、

細田派(清和会)98人
麻生派(志公会)54人
竹下派(平成研)54人
岸田派(宏池会)47人
二階派(志帥会)47人
石破派(水月会)19人
石原派(近未来政治研)11人

となっている(その他に谷垣グループや無派閥議員がいる)。

このうち、麻生派54人と細田派98人が、二階派47人と組むだけで計199人。これに、参議院議員グループを除いた竹下派と、無派閥議員の中にいる「菅グループ」を足すと250人を超える。

両院議員総会が開かれた場合、国会議員394票および都道府県連票141票の合計(計535票)の過半数(268票)を制することは難しいことではない。

もちろん、岸田政調会長自身は自らの派閥(宏池会)を率いて総裁選に出馬する。しかし、安倍総理は辞任表明会見であえて岸田政調会長の名前に言及せず、禅譲を期待していた岸田氏を突き放す構えを見せた。細田派(安倍総理の出身派閥)が岸田氏を推すというシナリオはすでに自明のものではなくなっているのだ。

他方で、イージス・アショア配備中止で名を馳せた河野太郎防衛大臣(麻生派)など、有力な若手も総裁選の候補者になるかもしれない。下村博文選挙対策委員長(細田派)や野田聖子元総務大臣(無派閥)も立候補の構えを見せている。

総裁選に多彩な候補者が揃えば国民の注目を集める。立憲民主党と国民民主党が合流する新党結成を霞ませるには十分だ。しかし、重要なのは「決選投票」だ。総裁選に岸田・石破・菅三氏が揃って出馬した場合でも、最初の投票で過半数を得た者がいない場合、上位者2名による決選投票になる。その局面でこそ、「麻生副総理が担ぎ、二階幹事長と握った場合の菅官房長官」が最終的な勝者になる可能性が高い。

その場合、菅新総裁の任期は、自民党則80条3項が適用されて、安倍現総裁の任期を受け継ぎ「来年9月末」までとなる。早々に臨時国会が召集され、首班指名選挙を経て菅義偉首相が誕生することになろう。

菅新政権では、来年10月21日に任期満了を迎える衆議院議員の総選挙に向けて、解散を打てるだけの高支持率獲得が至上命題となる。選挙の顔となりうる若手(小泉進次郎環境大臣や小林史明党青年局長等)が重用されるとともに、コロナ禍における経済対策が最重要政策となるであろう。

それを、引き続き副総理兼財務大臣として支えるのか、それとも去就が取りざたされている大島理森衆議院議長の後継として、幣原喜重郎以来となる「首相経験者による衆議院議長就任」を引き受けるのか。

恩讐を超えた政治判断は、大宰相吉田茂の真骨頂であった。いま麻生太郎氏の判断が、日本の将来を決めようとしている。

  • 取材・文レイモンド・ベーダー

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