めったに三振しない「小さな大打者」オリックス・吉田正尚の凄み

昭和の大打者、門田博光の再来とも!

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
フォロースルーが大きくフルスイングが持ち味の吉田正尚(オリックス)だが、驚くほど三振が少ない

オリックスは8月20日に西村徳文監督が退任、中嶋聡監督代行となった。チームは最下位に低迷しているが、中で主軸の吉田正尚(よしだまさたか)だけがひとり気を吐いている印象がある。

吉田の打率は8月31日終了時点で.372。今季はソフトバンクの柳田悠岐も.352と好調で、首位打者争いは高いレベルになりそうだ。

注目したいのは三振数だ。柳田は62試合で51三振、豪快なフルスイングが売り物の柳田だが三振数としてはそれほど多いとは言えない。しかし吉田は同じ62試合でわずか15三振。柳田と同じくフルスイングが売り物の吉田だが、規定打席以上では最少。三振が極めて少ないのだ。

パ・リーグの最多三振は西武、スパンジェンバーグの85。この選手は58試合の出場だから2試合で3三振の大型扇風機ぶりだ。

セ・リーグでは巨人、丸佳浩の55三振が最多、試合数は59試合。最少はヤクルトのエスコバーとDeNAの宮崎で19三振だ。

吉田はこのペースなら最終的に29三振になる。
2000年以降の規定打席打者のシーズン三振数10傑、打率と順位、試合数も出す。

1.高木浩之(西武)2002年26三振
打率.272(16位)130試合
2.藤田一也(楽天)2015年30三振
打率.270(14位)111試合
3.武藤孝司(近鉄)2000年31三振
打率.311(7位)119試合
4.前田智徳(広島)2007年31三振
打率.285(18位)124試合
4.宮本慎也(ヤクルト)2010年31三振
打率.276(24位)129試合
4.川端慎吾(ヤクルト)2016年31三振
打率.302(8位)103試合
7.城島健司(ソフトバンク)2005年32三振
打率.309(7位)116試合
8.真中満(ヤクルト)2000年33三振
打率.279(15位)119試合
9. L.ロペス(広島)2001年35三振
打率.308(8位)138試合
10.土橋勝征(ヤクルト)2001年35三振
打率.249(34位)137試合
10.大村直之(オリックス)2009年35三振
打率.291(12位)119試合
10.宮崎敏郎(DeNA)2019年35三振
打率.284(12位)114試合

吉田の記録は2002年、西武の高木浩之に次ぐ少なさとなる。ただ今季は120試合制だ。昨年までの143試合制に換算すれば、吉田の三振数は34となり、9位となる。

吉田がすごいのは打率が.350を軽く超えていること。これだけの安打を量産しながらほとんど三振しないのは驚異的だ。

打率.350以上では、2000年、オリックスの先輩イチローがパ・リーグ最高打率の.387で首位打者を取るとともに36三振だった記録がある。

ちなみに最多は昨2019年、143試合で184三振を喫したヤクルトの村上宗隆だ。

昭和の時代までさかのぼれば、最少三振数の記録はぐっと小さくなる。

「打撃の神様」巨人の川上哲治は、1951年、打率.377で3回目の首位打者に輝いたが、このシーズンは97試合でわずか6三振だった。

また「世界のホームラン王」巨人の王貞治は、1977年51本塁打で15回目、最後の本塁打王に輝いたが、この年の三振は130試合で37。本塁打数よりも三振数がはるかに少なかった。

しかし当時と現代では時代が違う。野球そのものが大きく変質している。

1951年セ・リーグの1試合当たりのチーム平均三振数は3.06、1977年のセ・リーグは4.07、これに対し2019年の同じ数字はセ・リーグが7.76、パ・リーグが7.44。

三振数は昭和の時代から大幅に増加しているのだ。

昭和の投手は速球主体で三振を奪っていた。空振りが奪える変化球はあまりなかった。

しかし平成以降、投手はスプリット、スライダー、チェンジアップ、カットボールなど落ちたり曲がったりする変化球を駆使して三振を奪う。投手の球種が増えたこともあって三振数は昭和の時代に比べて大幅に増加しているのだ。

そんな中で安打を量産し、高打率をキープしながらめったに三振しない吉田は称賛に値する。

吉田正尚は敦賀気比高から青山学院大を経て2015年ドラフト1位でオリックスに入団。1年目の2016年から規定打席未達ながら打率.290をマーク。

彼が注目されたのはこのオフ、台湾で行われたアジアウィンターリーグだった。吉田は打率.556、6本塁打、30安打、57塁打、29打点で5冠王に輝き、その圧倒的な打棒は日本でも大きく報道された。

2017年は腰痛で戦線離脱したが、2018年から2年連続で3割を打ち、外野手のベストナインにも選ばれた。

173㎝85㎏の小さな体ながらスイングスピードはすさまじく、弾丸ライナーや飛距離のある本塁打を連発することから、昭和時代の「小さな大打者」、門田博光(170㎝81㎏)の再来ともいわれている。

三振数は2018年が74(143試合)、2019年が64(143試合)だった。今季の15(62試合)は、吉田の打撃精度がさらに向上していることを如実に物語っている。まさに「好球必打」の境地に至りつつある。

今季の吉田正尚の敬遠四球数は両リーグ最多の10。パ・リーグ1位、21本塁打の日本ハム中田翔がわずか1個、20本塁打のソフトバンク柳田悠岐でも6個だからその多さがわかる。他球団の投手は、不振のオリックスにあってただ一人好調をキープする吉田との対戦を避けるのだ。

指揮官が変わってチームの空気が明るくなったオリックス・バファローズ。吉田正尚は、今季、どんな打撃成績を挙げるだろうか?

  • 広尾 晃(ひろおこう)

    1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイーストプレス)、『球数制限 野球の未来が危ない!』(ビジネス社)など。Number Webでコラム「酒の肴に野球の記録」を執筆、東洋経済オンライン等で執筆活動を展開している。

  • 写真時事通信社

Photo Gallary1

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事