全英女子OPシブコとモモコ 「新旧女王の明暗を分けたもの」
渋野日向子はアイアンが不調で予選落ち、 上田桃子はメジャー自己最高の6位
「怖がってしまっているのか、アイアンが振り切れない」
ラウンド中の渋野日向子(21)からは笑顔が消えていた。8月23日に閉幕した全英女子オープンゴルフ。ディフェンディングチャンピオンとして臨んだシブコだが、結果は105位。予選落ちに終わった。
バンカーショットは得意なはずだった。しかし、初日の4番ホールで深くて狭いポットバンカーにつかまり、脱出までに3打も叩いてトリプルボギー。2日目も見せ場を作ることができなかった。
ゴルフジャーナリストの武藤一彦氏は、全英での渋野についてこう語る。
「完全に実戦不足。しかも、渋野は今回会場となったコースでの試合は初めてでした。ポットバンカーも十分練習したと思うのですが、試合勘が鈍っていたんでしょうね。もしコロナ禍がなくて、米国で武者修行した後に、今大会を迎えていれば結果は違っていたはずです。国内で調整してウエイトトレーニングに取り組み、新しいロブショットも覚えたのに事前に試合で試す機会もなかった。去年の勢いが止まってしまっていました」
ただでさえ風が強い、海沿いのコースに今年は嵐が吹き荒れた。それが、渋野の武器である、迷いのないスイングを奪ってしまった。ツアー通算41勝のプロゴルファーで解説者の森口祐子氏が語る。
「去年の全英では、自分の技術、コースとの相性、その日の調子、すべてが噛(か)み合って優勝につながった。今年はその逆になりました。暴風雨の中でのプレーはあまり経験がなかったでしょう。初日、2日目は日本だったら中止か中断だったと思います。今回の結果の要因は『未知のゴルフ』を強いられたことですね」
一方、上田桃子(34)は海外メジャー大会で自己最高の6位に食い込んだ。
元コーチの江連忠プロはこう絶賛する。
「我慢を覚えて、最後まで集中力を切らさなかった。かつて僕がキャディをやっていた頃は『もう無理!』なんて言っていましたけどね(笑)。今は心が揺れなくなったということ。自分を上手くコントロールできているのだと思います」
前回覇者の渋野に比べれば、重圧が少なかったということもあるが、嵐の中の大会で、上田の「経験」が生きた。’08年から6年間、結果こそ残せなかったが、米国を主戦場として戦ってきた。全英女子OPも今回で10回目の出場だ。
「’08年の全英でラッキーとも言える結果で7位になった。それから12年経って、自分を超えたわけです。悪天候の中、上田はよく粘りました。焦らずコツコツと乗り切っていきましたからね」(武藤氏)
前出の森口氏はこうエールを送る。
「上田さんは穏やかでありながら強い意志を感じさせるゴルフを見せてくれました。渋野さんは経験という財産を得た。いまは土台を作る時期だと思います。いずれまた海外で活躍して、私たちを勇気づけてくれると思います」
二人はこれからも世界中のゴルフファンをワクワクさせてくれるだろう――。


『FRIDAY』2020年9月11日号より
写真:Getty Images