『真夏の少年』博多華丸の胸打つ演技に新スター誕生の予感

この作品を機に、俳優として大化けの予感!

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安倍晋三首相主催の「桜を見る会」に出席したお笑いコンビ「博多華丸・大吉」の博多華丸(左)・大吉(2016年)

録画だけをしておいて「後から見ればいいや」とノーマークだったドラマがある。それが『真夏の少年〜19452020(以下、真夏の少年略)』(テレビ朝日系・毎週金曜23:15〜)だ。ジャニーズJr.の『美 少年』が主演の作品で、きっとミントの風が吹く、爽やかストーリー。時間ができたら後々、愛眼用に見ればいいと思っていた。

それが視聴を始めたら、いつの間にかOA中の5話まで追いつくほど見てしまう自分がいた。その理由は、博多華丸の存在だ。

セリフすべてが名言なのは、華丸の存在感あってこそ

“富室高校の個性豊かな生徒たち、風間竜二(岩崎大昇)、瀬名悟(佐藤龍我)、柴山道史(那須雄登)、春日篤(浮所飛貴)、山田明彦(藤井直樹)そして、明彦の弟・和彦(金指一世)。彼らが作った秘密基地にタイムスリップして現れたのは、戦時中の軍人・三平三平(博多華丸)。自由だらけの世界で育つ若者たちと、自由の全てを奪われて生きた43歳が少しずつ距離を縮めていく。”

これが『真夏の少年』のあらすじ。夏に戦争の世界……と並べられると、日本人は終戦記念日を思い出す。でもこの作品は、戦時中の悲惨さを訴えようとしている番組ではない。

第5話ではこんなシーンがあった。高校生たちから「自分たちに戦争の体験談はしないのか?」と問われると、

「そういう話聞きたいの?(中略)俺が戦争で辛かった話をしたら、おまえら同情するのか? 俺はそういうのは嫌や。俺が戦争の話をして何も知らないおまえらに同情されると、俺の辛さが安っぽくなる」

三平はこう答えた。戦地で鍛えられたおかげなのか、三平は現代の生活に対して順応性がいい。すでに高校の購買でバイトを始めて、タブレットも使いこなしている。そんな彼だから高校生たちと自分の感覚の違いをすぐに感じ取っていたに違いない。

「俺の体験をおまえらが理解できるわけやない。おまえらが俺の言葉を理解できないのは、幸せっていうことや。それが今を生きているっていうことや」

平成初期、私は亡くなった祖父から戦争体験談を聞かされるのが苦痛だった。でも今思えばあれは戦地へ出向いたという彼のプライドだったはず。ただ令和の今、文化の違いすぎる戦時中の話は若者たちが吸収することができない。彼らにとっては、ドラマや映像、教科書の中だけのこと。それよりも今、目の前にあることと向き合えと三平はたびたび繰り返している。

そしてこんな熱いセリフを放っているのが、まさかの博多華丸。現代版の金八、鬼塚だと騒がれているけれど、本当にそのままである。毎朝『あさイチ』(NHK総合)で楽しそうにボケをかましている、彼の姿はない。ひとつひとつのセリフを噛みしめるように吐き出す、俳優としての華丸しか見えない。それを「棒読みでは」という指摘もネットで見たけれど、あきらかに間違いだ。戦時中独特の、堅苦しい話し方を緻密に再現しているだけに過ぎない。

彼がここ数年で何作品かに登場している様子を見かけるけれど、今回の作品が一番ハマっていると思う。まだ数えられるほどの作品にしか出演していないけれど、これからオファーは絶えないことになる予感がしてくるではないか。

密になることができない若者たちに示すものは?

ドラマ全体は高校生たちが作った秘密基地をメインに、ミュージカルを見ているような感覚になる、THE青春モノ。毒母や継母などの家族問題に、小さな恋の物語に、友情。忙しそうな10代の夏が描かれている。それだけを読むと、よくあるドラマになってしまうけど、現代版だと感じたのは、学校内にSNSでの視聴者を稼ぐため、日夜、生徒のスクープを撮ろうとする女子生徒・小泉明菜(箭内夢菜)がいること。

高校生たちの周囲には、常に疑念が渦巻いている。これはドラマの世界だけの話ではない。SNSでもどんな人物なのか全くわからない人のつぶやきに、若者たちは共感している。嘘まみれの中であれば真実は目立つし、バズる。だから富室高校の高校生は、FRIDAYの記者並みにスクープ撮りへと奔走している。

こんな環境だからこそ、三平のセリフは心に残るものがあるのだと改めて思った。彼の言うことには嘘が一切ない、ストレートな意見だから自然と際立つ。さらに華丸の声色と存在が後押しする。私も見ていてはっとするシーンがいくつかあったので、この夏に疲れた人たちはこの作品から、自分を見返すヒントを探してみるのをお勧めしたい。

現代の若者は人間関係を密にすることができないと聞いた。確かに対面をしなくても、関係性を持てる自由はそこかしこに溢れている。でも自由こそ、厳しさや寂しさとセットだと言うことを『真夏の少年』は教えてくれるのではないだろうか。

  • 小林久乃

    エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

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