映画『劇場』で山崎賢人演じるヒモ男が、最上級のいい男で驚いた | FRIDAYデジタル

映画『劇場』で山崎賢人演じるヒモ男が、最上級のいい男で驚いた

まさか「ヒモ男」がこんなに似合う役者だったなんて!

  • Facebook シェアボタン
  • X(旧Twitter) シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
こんな端正な山崎賢人が『劇場』では完璧な「ヒモ」を演じている
こんな端正な山崎賢人が『劇場』では完璧な「ヒモ」を演じている

遅ればせながら『アマゾン』で『Fire TV Stick 4K』を購入した。地上波の放送だけでも充分だと思っていたのだが、設置して良かったとしみじみ。インターネット放送もPC画面よりもだいぶ大きく観られるし、話題の韓国ドラマも過去の日本ドラマもある。レコーダーをもう一台持ったような気分だ。

設置して最初に観たのは『アマゾンプライム』で配信中、映画館でも上映中の『劇場』。主演の山崎賢人の演技と顔面に期待をしつつ……だったけれど、実際は期待を越えた軽い興奮が待っていたことを報告したい。

無精髭に伸びっぱなしの髪の毛……と完璧なヒモコーデ

“永田(山崎賢人)は友人と二人で立ち上げた小劇団『おろか』で演出と脚本を担当している。劇団はヒット作に恵まれず、永田の生活は困窮していくばかり。そんな時に出会ったのは服飾の学校に通う、沙希(松岡茉優)は、あっという間に永田を好きになり、つき合い始める二人。そして彼女のアパートへ転がり込む永田……。”

これが『劇場』のあらすじだ。『ピース』の又吉が書いた恋愛小説が原作で、普通の女の子がヒモ男とズブズブの恋に落ちていく様子が描かれている。

ヒモ、と聞いてあなたはどんなイメージをするだろうか。堕落していく生活、吸い取られていく彼女側の貯金、あるいはセレブのお戯れ。名称の通り、“紐”のように女に絡まって解けないように生きている男たち……と、けして好意的な雰囲気はしない。

このイメージを何ひとつ裏切ることなく永田は登場するのだけど、これが私の映像で注目してほしい箇所のひとつ目。山崎賢人の完璧なまでのヒモヘアメイク&コーディネートである。常に無精髭を生やし、髪の毛はボッサボサ。着ているものはボロボロのシャツや甚兵衛、足元は草履だ。役作りなのか頰が少しこけているようにも見えた。仮に菅田将暉や吉沢亮がこの風貌で登場をしても、何か違和感がある気がする。山崎はひょっとしたら、ヒモ男のポテンシャルを今まで隠していたのか? と思わせるほどよく似合っていた。

映画で二人が暮らす下北沢にも、こんな格好をした若者はたくさん転がっている。でも極上のイケメンというオプション付きはなかなかいない。普段はお目にかかることのできない理想のダメ男の魅力を映像から感じてほしい。

ヒモ男が最後に恋人から奪っていったものとは?

ふたつ目の注目は、松岡茉優が演じる沙希の痛々しさである。明るいひまわりのようなパブリックイメージの彼女だからこそ、ヒモ男という禁断の地に足を踏み入れてしまった状況の切なさが伝わってくるものがある。

こんなシーンが印象的だった。学生でアルバイト生活の沙希も生活が楽なわけではない。光熱費を払ってほしいと永田に申し出ると

「……ここ沙希ちゃんの家やし、人の家の光熱費を払う理由が分からん」

まさかの一蹴。そして提案を下げる沙希。こんな風にろくでもない男と、プリミティブな心を持つ女性の、揺れ続ける様子が描かれているのが『劇場』だ。

ちなみに私には『ヒモ男』という概念がなく、男女同権の時代として収入も所持する方が出せばいいと考えである。周囲の女性にも同意見が多く、無職の男性と結婚した友人も何人もいる。男女間の最大の問題は、お互いに恋心がきちんとあるかどうかだけ、と考えている女性が日々増えていると思う。

だから沙希のように同居している家賃、光熱費を支払うことには抵抗がない。映画を見ながらも「(これくらいは許容範囲だ)」と思っていたし、イライラすることも途中はなかった。ではこの二人に何が起こる……? と最後まで見ていくと、永田の存在の怖さは結末にある

一般的なヒモイメージであれば金を強要する、暴力を振るう、妊娠と現実に見える、わかりやすい生活の破綻が結末かもしれない。でも永田は違った。彼が彼女から根こそぎ奪ったもの、それを実際に確かめてほしい。先述のような恋愛観を持つ私には、ちょっとした恐怖に感じるラストシーンだった。

そんな感想を持ちながらも、私は相変わらずヒモ、年下という男性のキーワードには弱い。きっと永田が目の前に現れたら一目散に拾って帰ると思う。

  • 小林久乃

    エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

  • 写真アフロ

FRIDAYの最新情報をGET!

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事