引退・藤川球児 松坂大輔との「唯一無二の深い関係」

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松坂(後列左)と仲良く並んで野球を観戦する藤川

8月31日、阪神の藤川球児が今季限りでの現役引退を発表。球界のみならず、ファンの間でも激震が走った。今季はここまで11試合に登板して1勝3敗2セーブ、防御率は7.20と目を疑うような数字が並び、8月11日を最後に一軍から離れ、二軍調整の日々が続いていた。

それでも名球会入りの条件となる日米通算250セーブまで残り5つと迫っていた。かつてはプロ野球界に一大勢力を築いた松坂大輔(埼玉西武)を中心とする「松坂世代」だが、現時点で名球会入りをはたした選手はゼロ。藤川はこの世代で唯一達成する可能性があっただけに、多少見苦しくとも現役にしがみつくと予想していたが、藤川が出した答えは「引退」だった。

記者会見では「(引退する意思を)矢野監督にではなく、矢野“さん”には伝えました」などウィットに富んだ受け答えをしていた藤川だったが、次第にこみ上げる思いを抑えられず、言葉に詰まるシーンも見られた。この近年稀に見る素晴らしい記者会見の中でも阪神ファンの胸を打ったのは次のコメントだろう。

「阪神ファンは家族」

「(自身の名球会入りよりも)タイガースの優勝の方が重要であり、財産」

ファンからの声援・野次を叱咤激励と表現し、家族であるファンのためにチームを優勝へ導く、という藤川の強い想いが22年にもわたる現役生活につながっていったのだろう。

引退会見での藤川。将来の阪神の有力な監督候補だ

松坂大輔を崇める同級生たち

そんな藤川の引退により、1980年生まれの松坂世代で現役を続けるのは、わずか4人になった。多くのドラマを生み、プロ野球ファンに史上最も親しまれたと言っても過言ではない黄金世代の選手たち。その多くは松坂大輔を中心に現役時代、そして現役を退いてもなお交友関係が続いている。

例えば、松坂とソフトバンク時代のチームメイトである和田毅(ソフトバンク)。以前に筆者が行ったインタビューで松坂への思いをこう語っていた。

「(松坂大輔とは)友達と表現できる仲にはなれましたが、『並んだ』とはまだまだ思えないです。自分たちの世代のトップはやっぱり今でも大輔なんですよ」

和田は浜田高(島根)時代に出場した甲子園の開会式後、松坂との記念撮影を依頼したことまであるという。

また、日本テレビアナウンサーの上重聡(PL学園時代、松坂と甲子園で対決)も松坂リスペクトの強さでは負けていない。著書の『20年目の松坂世代』を読むと、仲がいいというよりも、リスペクトがあまりに強すぎると感じてしまうほどだ。緊急事態宣言下だった今年5月には、松坂とともにゴルフをプレーして批判を浴びている。「PL対横浜」の激闘から20年以上たった今でもその仲は変わらないようだ。

その世代の中にあって、毛色が異なるのが藤川球児だ。

藤川と松坂は「対等な関係」

松坂世代の選手たちは、松坂大輔に対してリスペクト、ややもすれば遠慮気味に接することが多いが、藤川球児のアプローチは全く逆だった。松坂に対しても言いたいことはハッキリ伝えるという。

「松坂と仲のいい同世代の選手は直接対戦したり、チームメイトだったりして松坂の凄さを肌で体感しているけど、藤川はそうした経験がほとんどない。だからほかの選手たちと違って松坂を普通の『同級生の一人』という距離感で接しているんでしょう」(プロ野球ライター)

冒頭に紹介した記者会見の序盤で「体の準備が整わないのはプロとして失格」と語った藤川。チームの勝利のためなら、自らをバッサリ切り捨てることもいとわない。だから誰もが遠慮気味に接する松坂とも同級生らしく対等に接する。藤川のアプローチの仕方は松坂にも新鮮に映るようで、良好な友人関係を築いている。

「ちなみに藤川はトミー・ジョン手術を受けたカブス時代、当時の同僚だった和田にリハビリのアドバイスを受けている。和田もリハビリを受けている時は松坂からアドバイスをもらっていたように、特に派閥もなく世代全体で交流があるみたい」(同プロ野球ライター)

球史に残るスター選手が多く現れ、プロ野球史上屈指の黄金世代である「松坂世代」。先に引退発表をした藤川はもちろん、残る現役選手たちもいつかは現役を退き、指導者、解説者として第二の人生をスタートさせる。

中でもチームの指揮を任される監督に就任した際、周辺のコーチは自身と関係の強い人物が就任するのはよくある話。まだ先の話だが、藤川球児、そして松坂大輔が将来監督に就任した際、どんなコーチ人事を組むのか、そして対戦した際はどんな采配を見せるのか…この世代の交友関係を考えながら空想してみるのも面白いだろう。

  • 取材・文福嶌弘

    1986年横浜生まれ。日本ジャーナリスト専門学校卒業。フリーライターとして活動。幼少期より競馬・野球に興味を持ち、バイク、クルマ雑誌の編集部を経て2015年より独立。『がっつり!プロ野球』(日本文芸社)、『YOKOHAMA DeNA BAYSTARS SHOULDER BAG BOOK』(宝島社)WEBサイト「BASEBALL KING」などに執筆。

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