コロナ禍の首都を半年撮影 写真集『東京、コロナ禍』のインパクト
フォト・ルポルタージュ 未曾有の感染症被害に対峙する街の風景
少し前のことなのに、ずいぶん昔のことのように感じる――。
改めて写真を見ると、そう感じる人も多いはずだ。
気鋭の写真家が「ウイズコロナ」時代の始まりを撮影した。
ありそうでなかった本である。一人の写真家が新型コロナで一変した東京を約半年間にわたって撮影し、写真集『東京、コロナ禍。』(柏書房)にまとめた。著者の初沢亜利氏はこう話す。
「もともと、オリンピックイヤーである2020年の東京をスナップで撮るつもりでした。そこへコロナ禍がやってきて遭遇した感じです。写真集を見た人から『まだ1年も経っていないのに、ずいぶん前のことのように思う』という感想をよくもらいます。この半年間、私たちは不安を感じながら、何が正解かわからない中、試行錯誤して生きてきた。大きな災害に突然、被災したようなものなので、記憶の更新が早いのかもしれません」
たしかに、集団感染が起きた「ダイヤモンド・プリンセス」や花見が禁じられた公園に咲く満開の桜、緊急事態宣言など、わずか半年のうちに起こったことなのに、すでに懐かしくさえ感じる。
「これまでは新型コロナという未知のものに対して、僕自身、わけがわからないまま撮影をしてきましたが、写真集を出し、少し考えがまとまりました。これからはコロナ禍への強い怒りだとか、人の感情に寄った写真を撮っていきたい」
撮影/初沢亜利
はつざわ・あり/’73年、仏パリ生まれ。上智大学文学部社会学科卒。日本写真協会新人賞などを受賞。写真集に『隣人。38度線の北』、『沖縄のことを教えてください』などがある
『FRIDAY』2020年9月18日号より