窃盗、傷害、覚醒剤、売春…「女子少年院」少女たちの心の内側

元レディース総長が撮った少女たちの真実

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「盗み、傷害、売春、覚醒剤。女子少年院にいる子たちは、なにか悪いことをした加害者です。でもね、この子たちみんな、加害者だけど被害者でもあるんですよ」

中村すえこさん(44歳)は、こう言う。女子少年院を取材したドキュメンタリー教育映画『記憶』を製作、全国各地で上映会を開いている。

「わたし自身も少年院経験者です。わたしは『目的意識のある不良』でした」

女子少年院の居室で少女の話を聞く。撮影は2年に及び、出院後の生活や親への取材も重ねた

「普通」の生活を知らない少女たちが

「少年院にいる子って、茶髪でイケイケ、みたいな印象あります? 今ね、そんな子めったにいませんよ。家にいられなくて街に出て、わかってくれると思った人が売春やってた、とか。ほとんどの子が、『普通』の生活を送れてなかった子なんです」

中村さんは16歳のときに傷害で逮捕され、女子少年院に収容された。

15歳のとき、女性だけで構成された暴走族レディース「紫優嬢」の四代目総長に。雑誌『ティーンズロード』に登場するなど、カリスマ的ヤンキーだった

「暴走族レディースの総長でした。族同士の抗争でけが人がでた、その責任をとるつもりで少年院に入院したんです。1年間。『内省』や、さまざま学びながら過ごす時間は有意義だったと思う。でも出院するなり、元の仲間のところに戻りました」

反省していたわけではなかった。

「レディースのアタマとして、正しいと信じてやってましたから。チームを大きくするために敵対するチームと暴力でやりあうことは当たり前だと思ってた。『目的意識のある不良』だったんです。だから、出院してすぐ、レディースに戻った。でもかつての仲間に裏切られて、行き場がなくなって。覚醒剤に手を出して、半年後にはまた捕まってました」

非行のきっかけ、原因は、いま振り返ると「さびしさ」だったという。

「親の仕事の関係で、夜ひとりで留守番することになって、さびしくて仲間を求めて夜遊びするようになりました。そしてできた仲間が不良だった。その仲間にも裏切られて戻る場所がなくなって、自暴自棄になってクスリをやった。でもね、そのとき妊娠していたんです。17歳でした。母に『お腹の子を守れるのはあなただけ』と言われてようやく、大事なことに気がつきました」

その子を産むことはできなかった。けれども、そのことがきっかけで立ち直れた。

「わたしは、恵まれてました。母親のおかげです」

19歳で結婚して女の子を産んだ。離婚再婚を経て、4人の子どもを育てている。

「ラッキーでした。じゃあ、自分以外の出院した人たちは、どうしてるんだろう、って考えました。

少年院にいる子たちには、そんなふうに叱ってくれる親がいない子が多いんです。事実を知って、愕然としましたね。母親がクスリをやっていて、窃盗で生計を立てていた子。ある子は、2歳から施設で育って、そもそも親の存在を感じられない環境だった。『家庭』が帰るべき場所じゃないし、手本になる、守ってくれる『親』がいない。むしろもっとひどい虐待を受けていたりします。窃盗や傷害や、彼女たちのやったことはもちろん悪いんだけど、加害者であると同時に被害者なんだと知りました」

少年院のなかで初めて「普通」の生活を知る

「だから、少年院に入って法務教官に会って『こんな大人がいたんだ』って、喜ぶんですよ。こんなに真剣に向き合ってくれる大人に初めて会った、って本気でいうんです。どれだけ恵まれずに生きてきたのか、と思います。

群馬県・榛名女子学園。矯正教育を受けながら、30人余りが暮らしている
7:00起床、21:00就寝。食事は3回。規則正しい生活を「ここで初めて知った」という少女も

この子たちが出院して生きていくためには、本人が変わると同時に社会も変わらなければならない。家庭に戻ることができない子も多いから、社会のなかでなんとかして生きていくしかないんです。偏見を越えて受け入れられるようにするためには、この事実を知ってもらうことだ、映画を作ろう!と思いました」

協力者を募り資金を集めて、2年間かけて撮影を重ねた。

「映画では、4人の女の子に話を聞いています。美人局で逮捕された子、ホストにはまってDVにあった子。女子少年院にカメラを入れてインタビューを撮りました。みんな未成年。どの子もそれぞれのドラマ、悲しい物語を抱えています。まずは事実を知ってもらうこと。そうして、この子たちを受け入れる方向に、社会が1ミリでも動けばと思う」

上映会では、登壇して自らの経験も隠さずに話す。また全国の少年院に赴き、在院生への「講話」もしている。

目標は「全国制覇」

「自分の経験や社会に出るときの心構えなど話してます。9カ所ある女子少年院は全部、男子も含め、全国49カ所の少年院の半分以上行きました。いろいろな話をしますが、伝えたいことはひとつ。『人は、変われる』ってこと。

わたし、この春大学を卒業して、教員免許を取ったんです。中学しか出ていない私が、ですよ。40歳で大学に入って、仕事しながら子育てしながら、自分でもよく乗り切ったと思います。少年院にいる子たちは、まだ若いんです。目標をもって、やればできるって思ってほしい」

コロナ禍で、予定していた上映会がいくつも中止になった。「多くの人にこの子たちのことを知ってもらい、社会を動かす力になりたい」

「わたしの目標は全国制覇。レディースのとき達成できなかった全国制覇です(笑)。日本中の少年院にいって、話をしたい、話をききたい。出院した子たちが、もう二度と加害者にも被害者にもならないで生きていける社会にしたいです」

今日も、街には行き場のない少女がいる。この子たちが、加害者にも被害者にもならないこと。その希望はなんだかささやかで「小さく」見える。けれども、居場所のなかった子どもたちが安心して生きられる社会は、誰にとっても安心できる社会なのかもしれない。小さな希望の向こうに、大きなうねりが潜んでみえた。

ドキュメンタリー映画『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』:10月17日・神奈川公会堂ホール(要予約)ほか、全国で順次上映会予定。https://nakamurasueko.com/kioku.html

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