藤浪晋太郎 データで見て分かった未完の大器の「欠点」

「失点」と「自責点」の差が極端に大きい藤浪!

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今季はやっと1勝を挙げたものの、その後不調が続く藤浪

「藤浪晋太郎は、もうだめなんだろうか?」阪神ファンならずとも気をもんでいる野球ファンは多いのではないか。

高校球界屈指の強豪大阪桐蔭のエースとして甲子園で春夏連覇を果たし、ドラフト1位の鳴り物入りで阪神に。

1年目は規定投球回数未達ながら10勝、2年目に11勝、3年目に14勝。ランディ・メッセンジャーとともに阪神の若きエースとして順調に成長していた。

高校時代からのライバルである大谷翔平と藤浪は、ともに190㎝超の超大型投手として、日本球界の屋台骨を背負って立つと期待されていた。

しかし2016年を転機として成績は急落し、2019年は0勝。今季も8月21日のヤクルト戦で692日ぶりの勝利を挙げたものの、9月5日の巨人戦では11失点と火だるまになって降板。ベンチで涙する姿が見られた。

筆者は春季キャンプで藤浪の投球を何度も間近に見た。巨体のわりに柔らかい四肢から繰り出される剛速球は、ブルペンで投げあう他の投手とはモノが違うと感じさせた。捕手のミットにぶつかる音も違えば、球の伸びも違った。それは不振に陥ってからも変わらなかった。

今もこれだけの剛速球が投げられるのに、なぜ勝利につながらないのか。

データを子細に見ると、ある試合が浮かび上がってくる。

2016年7月8日、甲子園での広島戦、先発の藤浪は3回までに5失点したが、この年就任した金本知憲監督は藤浪を8回まで続投させた。藤浪はその8回に3安打2四球で3失点したが161球で降板。懲罰的な登板と話題を呼んだ。

昭和の昔はいざ知らず、平成の世になって1人の投手が150球以上投げるのは極めて異常だ。2017年以降の藤浪の不振と、この異常な投球数に因果関係がないとは言い切れないだろう。

もう一つ、データ的には藤浪の投球には気がかりな数字がある。それは「失策がからむ失点」だ。

投手の失点のうち、失策が絡んだものは自責点にならないので、防御率は悪化しない。しかしチームにはダメージを与える。

藤浪は「失点」と「自責点」の差が極端に大きいのだ。

セ各球団のエースクラスのキャリアでの失点率と防御率、そしてその差異を示すと以下のようになる。数字は9月6日現在。

菅野智之(巨人)失点率2.63防御率2.31(0.32)
大瀬良大地(広島)失点率4.03防御率3.46(0.57)
西勇輝(阪神)失点率3.44防御率3.21(0.23)
大野雄大(中日)失点率3.56防御率3.24(0.32)
小川泰弘(ヤクルト)失点率3.85防御率3.50(0.35)
今永昇太(DeNA)失点率3.90防御率3.52(0.38)
藤浪晋太郎(阪神)失点率4.13防御率3.35(0.78)

多くのエース級の投手は、失点率と防御率の差異が0.3ポイント前後だが、藤浪は0.8ポイント近くもある。つまり藤浪は失点と自責点の乖離が非常に大きいのだ。

これは何を意味するか?

端的に言えば、藤浪は失策を契機として崩れることが多いのだ。

今季で見ても藤浪は7月30日のヤクルト戦の7回に遊撃手北條の失策がきっかけで3失点。この試合、藤浪の自責点は1だが失点は4だった。

8月21日の同じくヤクルト戦では無死一塁で2回に捕手梅野がゴロの処理を誤って活かしたのをきっかけに4失点。この試合も藤浪の自責点は2だったが失点は4だった。

さらに始末が悪いのは、藤浪の場合、自分の失策をきっかけに失点することがしばしばあるのだ。今季8月5日の巨人戦では6回に自らの投ゴロ失策をきっかけに3失点している。この試合も藤浪の自責点は1だったが失点は4だった。

「投手の失策がきっかけで失点してもその投手の自責点にはならないのはおかしいのではないか」という議論が昔からある。「記録の神様」故宇佐美徹也さんなども「投手が失策して入った点は自責点にすべき」と強く主張しておられたが、失策が多い投手は、こういう「隠れ自責点」ともいうべき失点があるのだ。

藤浪の守備はお世辞にもうまいとは言えない。上記のセ、エース級投手と藤浪の通算の守備率。

菅野智之(巨人).974(65刺殺232補殺8失策)
大瀬良大地(広島).971(44刺殺125補殺5失策)
西勇輝(阪神).968(94刺殺301補殺13失策)
大野雄大(中日).973(49刺殺202補殺7失策)
小川泰弘(ヤクルト).975(65刺殺168補殺6失策)
今永昇太(DeNA).952(36刺殺102補殺7失策)
藤浪晋太郎(阪神).898(50刺殺143補殺22失策)

他のエース級投手に比べて守備率は極端に低い。藤浪は10回打球を処理すれば1回は失策している勘定になる。並外れた長身で、小技が利くタイプではないから多少の失策は仕方ないかもしれないが、それにしてもこの守備率はいただけない。

そもそも阪神は、9月6日時点でリーグ最多の49失策。16失策の巨人の3倍以上だ。阪神は、守備のほころびが敗戦につながるケースが非常に多いのだ。藤浪はそういう体質を体現しているといえるかもしれない。

しかし、これだけ欠点があるにもかかわらず、藤浪晋太郎の投球には胸躍るものがある。心身ともに未完成なだけに、藤浪晋太郎には「伸びしろ」がまだあるとも言えるのだ。

チームは藤浪に再度先発のチャンスを与えるという。技術とメンタルのバランスが取れるようになれば、藤浪には再生のチャンスがあるように思う。今後も注視していきたい。

  • 広尾 晃(ひろおこう)

    1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイーストプレス)、『球数制限 野球の未来が危ない!』(ビジネス社)など。Number Webでコラム「酒の肴に野球の記録」を執筆、東洋経済オンライン等で執筆活動を展開している。

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