韓流の次は出前を世界に!?デリバリー先進国・韓国の超絶宅配技術

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昔から出前文化が根付いている韓国では、このコロナ禍でサービスがさらに進化中だ。かき氷などのユニークなメニューは当たり前で、1分でも早く商品を配達すべく各社がスピードを競っている。自律走行型デリバリー・ロボットの実用化も間近に迫り、韓国内でのノウハウを生かしたデリバリー事業をアジア各国で展開する動きも。最新の韓国フードデリバリー事情をご紹介!

韓国人アーティストとして初めて米ビルボードのメインシングルチャート「ホット100」で1位を記録したBTS(防弾少年団)。韓国エンタメブームの次は、韓国発の「出前」文化が世界を席巻する!?(写真:アフロ)

コンビニ商品、パンも出前で! コロナ第2波でデリバリーサービスの需要がアップ 

新型コロナの封じ込めに一度は成功したかと思われた韓国だが、教会でのクラスターをきっかけに一時は新規感染者が400人台まで増加。現在は100人台に減っているものの、予断を許さない状況が続いている。感染者数が急増した8月中旬からは防疫措置が拡大され、ソウル・京畿道などの首都圏では大手カフェチェーンの店内飲食が禁止に。その他の飲食店も21時~翌日5時は、デリバリーやテイクアウトのみが許可されている。

こうした中、出前や配達の需要も増加している。韓国は昔から出前文化が発達しており、電話1本でどんな場所にでもスピーディーに配達をしてくれる。自宅や職場はもちろん、ネットカフェや市場の店先、さらには波止場にまで出前バイクがやってきて釣り人の前に器を置いて去っていくという光景も珍しくない。

コンビニやパン屋の商品を届けてもらうことも可能だ。在宅勤務などが増えた影響で、配達サービスを日常的に利用するユーザーが増え、コンビニエンスストア「CU」は8月17日から28日までの配達件数が前月同期比76.4%増加。大手ベーカリーチェーンのPARIS BAGUETTEも8月の配達注文量が前月より50%以上増加したという。

生鮮食品や生活用品の配達注文を利用する人も増えている。食品ECサイト「Market Kurly」、Eコマース大手の「COUPANG」や大型スーパーのECサイト「Eマートモール」は、早朝までに玄関先に商品を届ける「夜明け配送」のサービスが好評で、注文殺到のため一時的に欠品となっている商品も多い。

日本でもお馴染みの定番メニューから、フルコースまで…。出前メニューが多様化 

出前アプリ「配達の民族」の注文画面。全国20万件の加盟店を持ち、マカロンやかき氷、ワッフルやフルーツポンチなど、デザートメニューも充実している

デリバリーメニューとして特に人気が高いのは、映画『パラサイト 半地下の家族』にもインスタント麺が登場したチャジャン麺(韓国風ジャージャー麺)。中華料理の出前配達員を主人公とした『最強配達人』(2017)というドラマが作られるほど、韓国では身近な食べ物だ。アツアツのうちにあっという間に届き、器の回収も恐ろしく速い。最近は使い捨て容器を使用する店も多いが、かつては「まだ食べ終わっていないのに、器を取りに来られた」という笑い話を耳にしたことも。

ピザやチョッパル(豚足)、ポッサム(茹で豚)なども人気が高く、フライドチキンはサッカー観戦のお供として定番のメニュー。通常は30分程度で配達されるが、韓国代表戦が開催される日ばかりは注文が殺到して、待ち時間が1時間以上に及ぶこともある。

こうした定番メニューに加え、近年はクラフトハンバーガーやステーキ、パスタ、かき氷やコーヒー、寿司や刺身、カンジャンケジャン、さらには人気レストランのフルコースまでもが登場し、デリバリー商品が多様化・高級化している。

写真右上から、定番出前メニューのチャジャン麺(韓国風ジャージャー麺)と韓国風ちゃんぽん、揚げ餃子。箸休めとして、沢庵と生のタマネギ、チャジャン麺のソースに使われる春醤がつく
韓国で愛される国民的ジャンクフード、フライドチキン。『パラサイト 半地下の家族』を超えて2019年の興行収入No.1を記録した映画『エクストリーム・ジョブ』、ドラマ「愛の不時着」などの話題作にも登場した

ドイツ・フードデリバリー大手が韓国の3大出前アプリをすべて買収 

ドイツ・ベルリンに本拠を置くフードデリバリー大手「デリバリーヒーロー(DH)」は2019年12月、韓国内シェアNO.1の出前アプリ「配達の民族」を運営するウーワ・ブラザーズ(韓国名:優雅な兄弟たち)を40億ドルで買収することを発表した。DHの韓国法人デリバリーヒーローコリアは、すでにシェア2、3位の「ヨギヨ」と「出前箱(配達トン)」を買収・運営しているため、「配達の民族」が加われば韓国出前アプリ市場の約98%を独占する形になる。

このためDHによるウーワの買収は現在、韓国の公正取引委員会で企業結合審査の対象となっており、結果を待っている状況だ。デリバリー業界や消費者を対象としたアンケート調査では、広告費や手数料の引き上げ、顧客や加盟店の情報独占などに対する懸念から、半数以上がM&Aに「反対」という結果が出ている。しかし、韓国ではかつて米eBayが韓国最大ECサイトのGmarketを買収して、オンラインショッピングモールのシェア87%を占めた前例もあることから、M&Aそのものは実現されるのではないかとみられている。

2010年に「配達の民族」を開発したウーワ・ブラザーズの創立者、キム・ボンジン氏は元ウェブデザイナーという経歴を持ち、遊び心のあるCMやアプリの利用が多い若者世代を対象としたマーケティングに定評がある。フードデリバリーだけでなく、スーパーマーケットの生鮮食品を1点から即配送してくれる「Bマート」というサービスも単身世帯に人気が高い。ほかにも「漢拏体」をはじめとしたポップなフリーフォントの配布やオリジナル文房具の販売、フード雑誌『マガジンF』の発行、お年寄りの安否を確かめる牛乳配達サービスといった幅広い取り組みを行っている。

建国大学のソウルキャンパスでテストを行う屋外走行用デリバリー・ロボット。ウーワ・ブラザーズはLG電子、韓国ロボット産業振興院と提携し、今年11月の実用化を目指して外食産業へのロボット導入計画を進めている(写真:© Woowa Brothers Corp.)

ウーワ・ブラザーズは、自律走行デリバリー・ロボットの導入にも積極的だ。屋外を走行したり、エレベーターに乗ったりすることのできる多様なロボットを開発しているほか、昨年夏には、「dilly PLATE(The diligent robots that deliver plates)」と呼ばれるロボットがサービングをする未来食堂「MERRY GO KITCHEN」をソウル市松坡区にオープンした。

ロボットがサービングをする「MERRY GO KITCHEN」(ソウル市松坡区)。会計もスマホでQRコードを読み取るだけとスピーディー。(写真:© Woowa Brothers Corp.)

出前アプリ「配達の民族」は利用者の好みや注文履歴のビッグデータを分析した結果をもとに、おすすめの飲食店やメニューを表示している。また、AI技術を利用して1件の注文に対する複数回の投稿や誹謗中傷といった問題のあるレビューのフィルタリングを行い、クチコミの信頼度を高めている。

AIでの最適ルート計算や副業要員の確保…。「待ち時間短縮」で顧客獲得を狙う

コロナの影響でデリバリーの注文数が増加する中、商品が届くまでの待ち時間が長くなるという問題も発生している。利用者は1分でも到着予定時刻の速い飲食店やアプリを選ぶ傾向があるため、各社がさまざまな方法で配達のスピードアップを図っている。

「配達の民族」では、2千人以上のバイク配達員が所属する「ペミン(配民/倍民)ライダーズ」に加え、副業で徒歩やキックボード、自家用車などで空き時間に配達をする「ペミンコネクト」の登録者1万5千人以上が独自の配達員用アプリを利用して待機している。8月中旬には、さらに配達員を増員して、今年4月1日に一度終了した「パパッと配達」サービスを一部地域で再開。利用者がアプリ内で「パパッと配送」のアイコンを選ぶと、「ペミンライダーズ」加盟店の中から45分以内にデリバリー可能な店舗が配送時間の速い順に表示される仕組みだ。 

また、デリバリーヒーローコリアが運営する「ヨギヨ」は、今年7月末から「ヨギヨ・エクスプレス」をスタートした。世界的に使用されているDHのAI物流ソリューション「Hurrier」を韓国に導入し、最適なルートを計算する自動配車システムによって、配達スピードを上げている。

昨年春からは、前出のEコマース大手「COUPANG」も「COUPANGイーツ」をスタートしてフードデリバリー市場に参入した。注文から10~30分で商品を届ける「チーター配達」が好評を呼び、後発ながら他社を追い上げている。通常、デリバリー配達員は1時間に約2~4件の注文を同時に取り扱っているが、「COUPANGイーツ」は複数の店舗を回って商品をピックアップする時間を削減するため、あえて1人当たり1件ずつ配達を担当するシステムを導入した。

ミント色をブランドカラーとした「ペミンライダーズ」。副業配達員が中心の「ペミンコネクト」は、自社のヘルメットとベスト、バッジの着用が義務付けられているが、移動手段は自由だ(写真:アフロ)

ベトナム進出を果たした「配達の民族」。目指すはアジア制覇? 

独DHと「配達の民族」のウーワ・ブラザーズは、シンガポールに出資比率50%:50%のジョイントベンチャー「ウーワDHアジア」を設立し、デリバリー事業をアジア全域に拡大する計画だ。

「配達の民族」はM&A発表前の2019年夏、「BAEMIN」の名ですでにベトナム進出を果たしている。ライダーのカバンやレインコートに「何があっても料理を守る!」「熱いですよ。ちょっと通ります」などの文句を印刷するなど、20~30代の若者層を狙った愉快なマーケティングが功を奏し、着々と知名度を上げている。

サッと食べられる昼食メニューとして人気のキンパプ。韓国ドラマなどの影響で、ベトナムでもキンパプやトッポッキなどのKフードが浸透しつつある

また、韓国内で好評のレンタルキッチン「ペミンキッチン」のサービスをホーチミンでも展開し、店舗を持たずに外食産業に参入できるシステムを提供。一方、ベトナム進出を検討している韓国の外食業者を対象に食材の仕入れや商圏分析、現地人材雇用などの情報を提供して、Kフードの海外進出をサポートしている。

M&Aが正式に成立すれば、「ウーワDHアジア」は台湾、ラオス、インドネシアほかアジア11カ国で事業を展開していく予定だという。韓国の若者の働き口を創出するという方針も発表しており、労働市場のグローバル化にも期待が寄せられている。 

ベトナムで成功を収めた「配達の民族」は、アジアでデリバリーの韓流ブームを巻き起こせるだろうか!? 

  • 取材・文藤田麗子/Fujita Reiko

    フリーライター&韓国語翻訳者。福岡県福岡市生まれ。中央大学文学部社会学科卒業後、実用書、韓国エンターテインメント雑誌、医学書などの編集部を経て、2009年より韓国在住。訳書に『宣陵散策』(チョン・ヨンジュン著/クオン)、『簡単なことではないけれど大丈夫な人になりたい』(ホン・ファジョン著/大和書房)、『Amazonで12年間働いた僕が学んだ未来の仕事術』(パク・ジョンジュン著/PHP研究所)がある。

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