コロナ禍、歌舞伎町のとあるバーが逆境に打ち勝てた「秘策」 | FRIDAYデジタル

コロナ禍、歌舞伎町のとあるバーが逆境に打ち勝てた「秘策」

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元ホストが営む歌舞伎町「Bar不夜城」がコロナに克ったワケ

東京都は、16日、新型コロナウイルス感染防止策として23区内の酒類を提供する飲食店等に出されていた時短営業要請を解除した。 一方、帝国データバンクから9月8日に発表された調査によると、焼鳥店などを含む「居酒屋」の倒産が、2020年1-8月までに130件発生し、過去20年で最多を更新することがほぼ確実となったいう。

「夜の街」とざっくりしたネーミングで小池百合子・東京都知事に名指しされ、一気に悪者扱いされるようになった新宿の歓楽街。不要不急の骨頂のように非難されるホストクラブやキャバクラ、バーに風俗。界隈のお店の売り上げ激減、廃業のみならず、地方では「新宿区」にある会社に勤めているだけで近寄るなと言われるほど間違った風評被害が広まっているという有り様だった。

しかし、夜の街の人々もただ黙ってなりを潜めているだけじゃありません。7月には俵万智さんらが選首し、ホスト75人がコロナ禍の悲哀を歌に込めた「ホスト万葉集」が発売になるなど、健全な方法でオピニオンを発し始めています。

その新宿で、こちらもユニークな手法と緻密な計画で起死回生を遂げたお店があるのでご紹介します。その名も、「Bar不夜城」。このお店、映画「不夜城」のロケ地にもなった歌舞伎町のディープな「思い出の抜け道」の2階というマニアックなロケーションにあります。提灯がともる外観は怪し&不思議すぎて、どっかで一杯ひっかけてからじゃないと入れない!

しかし入ってみるとバーと言いつつ豊富な日本酒と超新鮮な牡蠣をあの手この手で食べさせるれっきとしたオイスターバーなんです。正式名称「オイスター&珍味 BAR不夜城」の通り、燻製や酒盗的なお酒に合う肴も揃っています。

実はこのお店、昔ホストだった長田光司さんが2015年に開いたバー。長田さんは歌舞伎町でも名を知られたナンバーワンホストで、最高月収1千万円という時もあったそう(!)。19歳でホストになり、「ちょうどいいブサイク」(本人談)と言われ可愛がられ、5年間ナンバーワンの座に居続けたとか。ところが25歳の時、「絶頂期に辞めたい」とアスリート的発想で引退。それからは、いきなり「ワーホリに行く!」と3カ月のつもりでオーストラリアへ渡り、気づいたら3年間、60カ国も放浪してきたそうです。

真ん中が長田さん。わんぱくな好青年って感じですね
真ん中が長田さん。わんぱくな好青年って感じですね

そして帰国後、ホスト時代の会長にホストの指導員(ってのがあるのか)として呼び戻され、「暇だったので」宅建とファイナンシャルプランナーの資格を取得。もともと調理師学校に通ったこともあり、飲食業を始めたいと、2009年のバーを皮切りに自分で焼く焼き鳥屋やつけ蕎麦屋などを次々オープンさせました。

その中の一店がこの「BAR不夜城」。牡蠣は広島や宮城などのブランドを季節ごとに揃え、生牡蠣400円〜、焼き牡蠣2個500円〜とリーズナブルに提供。

牡蠣に合う日本酒を揃えています
牡蠣に合う日本酒を揃えています

そんな隠れ家的名店なので常連客も多く、男女ともに年代問わずファンがいたのですが、このコロナで休業要請の対象に。いうまでもなく4月、5月はお店を開けられず、牡蠣も仕入れられず、生産者にも影響が及んでいました。

しかし、元ナンバーワンホストがここで手をこまねいているわけがありません。「何か売れるもの作ろう!」と、超豪華な牡蠣カレーを考案。従来メニューになかったカレーですが、スパイスにも出汁にもこだわり、試行錯誤を重ね、超クリーミーなカレーを開発。上には牡蠣とホタテを2個ずつ乗っけて、なのに価格は800円。そりゃヒットしないわけないですよねえ。口コミで噂は広がり、テイクアウトのみで販売したところ、1日20食が売り切れるほど好評だったそうです。ついでに焼き牡蠣もテイクアウトで販売し、これもよく売れたとか。お祭りかっ。

バターチキンカレーを思わせるオレンジ色のカレー。牡蠣とホタテのダブル主演!
バターチキンカレーを思わせるオレンジ色のカレー。牡蠣とホタテのダブル主演!

しかも長田さんの凄いところは、単にテイクアウトを始めただけでなく、助成金をちゃっかり活用したこと。アルバイトを正社員にすることで「キャリアアップ助成金」を、新たにテイクアウト事業を始めることで得られる「業態転換支援」の助成金を申請し、合わせて100万円ほどゲット。さすが抜かりない敏腕経営者です。

ちなみに、申請に不慣れな事業主に対してオンラインセミナーなどでサポートしてくれる「助成金制度推進センター」という組織があり、そのサポートが役立ったそうです。事業主の読者の皆さん、ご参考になさってみては。

白だし、ポン酢、日本酒レモン、アンチョビなど食べ方を10種から選べます
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そんな奮闘のおかげで業績も思ったほど落ち込まず、緊急事態宣言が開けた後は再びファンが訪れるなど、6月には早々と売り上げを回復できたそう。常連客以外に、テイクアウトでお店の存在を初めて知った新規客が増えたというから、まさにコロナに逆転勝利!

その絶品牡蠣カレー、食べてみたいですよねえ。「今度買いに行きます!」と言ったら「お店が忙しすぎて仕込みができなくなって、今カレーお休みなんです」と長田さん。何ィィ!喜ばしいことではあるが、普通に残念なんですけど!

でもあまりに好評だったので、テイクアウトではなくお店のメニューとして復活するかもしれないとのこと。フライデーデジタルに載ったから何とか再開してくれないでしょうか。

あ、でも牡蠣は普通に食べられるので、コロナを救った牡蠣を食べに足を運んでみてください。「仲間もテイクアウトやデリバリー、ウーバーイーツなどで乗り切っていました。新宿のお店は営業する以上は感染予防対策も万全ですので、必要以上に警戒せずにぜひお越しください」と長田さん。ちなみに、牡蠣はグリコーゲンや必須アミノ酸、ビタミンB1・B2・B12、ミネラルなどの栄養素、タウリンなどの機能性成分が豊富で免疫力アップに効くそうですよ!

『オイスター&珍味 BAR不夜城』のHPはコチラ

  • 取材・文猫田しげる

    1979年北海道函館市生まれ。京都のタウン誌、北海道の新聞地域面、東京の街歩き雑誌、旅行本などの編集・ライター業に従事。2019年4月から拠点を札幌に移動し、ウェブライターとしてデカ盛りから伝統工芸まで幅広い分野で執筆。弱いのに酒好きで、「酒は歩きながら飲むのが一番旨い」が人生訓。

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