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「地球外生命・発見!」未知との遭遇の瞬間はもうすぐかも

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「宇宙生物学」の第一人者、東工大教授・関根康人氏に最新情報を聞く

河野防衛相は、9月8日の会見で、自衛隊機がUFOに遭遇した場合の撮影や報告の手順に関する対処方針を、近く決定すると明らかにした。今年の4月には、米国防総省から米海軍の航空機が撮影した飛行物体の映像3本が公開された。

2008年には火星の地中に氷が見つかり、水の存在が確認されたことで、生命体が存在する可能性がぐっと高まったとも聞く。地球外生命は存在するのか? 東京工業大学地球生命研究所の関根康人教授に最新の情報を聞く。 

永遠のSFテーマ、宇宙のどこかに生命は存在するのだろうか? “未知との遭遇”が間もなく?(写真はイメージ)
永遠のSFテーマ、宇宙のどこかに生命は存在するのだろうか? “未知との遭遇”が間もなく?(写真はイメージ)
米国防総省が今年4月27日に公開したUFO映像。海軍機が2014~2015年に撮影したものだという
米国防総省が今年4月27日に公開したUFO映像。海軍機が2014~2015年に撮影したものだという

今は「地球外生命の発見前夜」

地球外生命なんてSF小説の中の話。などと思っていたら、

「発見前夜と言ってもいい状況にあると思います」(関根康人氏 以下同)

開口一番こんなことを言うのは、土星の衛星エンセラダスに生命を育める可能性があることを明らかにした東京工業大学地球生命研究所教授の関根康人氏。

「太陽系の天体だけを見ても、複数の天体に生命がいてもおかしくないような環境だということがわかってきました。今後10年間に、さまざまな探査が計画されていて、それを考えると、まさに“地球外生命の発見前夜”と言っても過言ではないと思います」 

太陽系の中でも、もっとも生命発見の可能性が高いのが火星だとか。

「火星の探査にはアメリカとヨーロッパが非常に力を入れていて、今年7月にはNASAがMars2020という火星探査機を打ち上げ、来年初頭に火星の、昔湖があった場所に着陸し、そこの泥を持ち帰る予定です。その中から生命が見つかる可能性が高いのです」 

生命! 何か生き物が見つかるというのだろうか。 

「今も生きている可能性もありますが、正確に言うと“生命の痕跡”。昔、生命がいてもおかしくないような場所に降りるので、生命の痕跡を探しに行くというのが、現実的な目標になります」 

地球や火星を含む太陽系の星々が誕生したのは、今から45億年前。それから5億年ほど経った、今から40億年ほど前は、地球も火星も水をたたえた惑星だったという。地球に生命が生まれたのもそのころ。その後火星には水がなくなり、砂漠化してしまったが、40億年前に火星が地球とまったく同じ環境だったなら、火星にも生命がいてもおかしくないと言う。

その当時、地球にいたのは、非常に小さいバクテリア。進化のスピードが地球と火星で同じだとすると、バクテリアのような微生物が見つかるかもしれない。

土星の衛星エンセラダスの表面は厚い氷に覆われているが、氷の割れ目から海水が吹き出している。この観測から地球と同じように生命が誕生する条件がそろっていることがわかった
土星の衛星エンセラダスの表面は厚い氷に覆われているが、氷の割れ目から海水が吹き出している。この観測から地球と同じように生命が誕生する条件がそろっていることがわかった

地球が“生きている”から我々は存在できる 

火星がなぜ砂漠化したのかわかっていないが、地球が水の惑星でいられるのは、地球自体が活動しているからだとか。

「地球の地形はプレートテクトニクスという地球内部の運動によって形作られています。地球は球状の層が何層にも重なって作られていて、地面の下の地殻と、地球の中心の核の間にあるのがマントル。マントルは内部のほうが熱く、ゆっくりと対流していて、地球表面の岩盤は、柔らかいマントルの上に乗って運ばれていきます。海には海溝という深い谷があり、マントルによって運ばれた岩盤はそこへ沈み込み、一部が溶けてマグマとなります。それによって火山活動が起き、大気中に温室効果ガスである二酸化炭素が供給され、温室効果で、地表が温暖で海が存在していられるのです。

地震を引き起こしたり、人間にとって都合の悪いこともありますが、プレートテクトニクスがなくなったら、大気中の二酸化炭素濃度が減少して、気温が下がり、最終的には地球全体が凍りついてしまいます」

人間がつねに新陳代謝を繰り返しているように、地球自体も新陳代謝を繰り返している。生きている星だからこそ、生命も存在できるのだ。

2018年、NASAが打ち上げた探査機インサイトが火星着陸に成功。探査機が火星で地震が起きていることを観測。“生きている”火星には、“生きている”生命も存在するかも
2018年、NASAが打ち上げた探査機インサイトが火星着陸に成功。探査機が火星で地震が起きていることを観測。“生きている”火星には、“生きている”生命も存在するかも

火星にも、木星や土星の衛星にも生命が存在する可能性が

「2018年にNASAは火星探査機インサイトを打ち上げて、火星の内部構造を調べたら、わずかですが、火星でも地震が起きていることがわかったんです」

火星も生きている! では、生きている生命もいるかもしれない?

「そうなんです。火星は大部分が砂漠ですが、部分的に地下にマグマがあって、火山もある。そういう場所では生きている生命もいるかもしれません」

バクテリアのような微生物でなくて、もしかしたら知的生命も?

「生命が高度に進化するためには、酸素が必要です。地球に生命が生まれたとき大気中に酸素はほとんどなかったのですが、25億年前には大幅に酸素濃度が上がり、真核生物という複雑な生物が生まれた。多細胞生物が生まれた6億年前にはさらに濃度が上がって、今と同じくらいの酸素濃度になります。現在は、大気の8割が窒素で2割が酸素。 

なぜ酸素が必要かというと、我々は酸素を吸って、食事をして、体内で燃焼させてエネルギーを作っています。酸素の濃度が高いと、その分だけ多くのエネルギーを得ることができます。今、火星には酸素に相当するような燃焼させる物質が見つかっていないので、我々のように体の大きな生命になるのはむずかしいと考えられます」

火星だけではなく、木星の衛星エウロパや土星の衛星タイタンも生きていて、生命がいるであろうと考えられているが、

「タイタンには水ではなくて、液体のメタンが存在します。水じゃない液体でも条件さえ整えば、生命が生まれるのは不可能ではないはずです。エウロパは表面が氷で覆われているけれど、その下に海がある。エウロパでも生きている生命を見つけられるかもしれません」

NASAは、2020年代後半に「エウロパ・クリッパー」という探査機を打ち上げ、宇宙からエウロパをくまなく調査する計画を立てている。

ヨーロッパ宇宙機構(ESA)も木星系探査計画「JUICE」を計画し、2029年には木星系に到着し、木星だけでなく、その衛星たちも調査する予定だ。この探査には関根氏をはじめ、日本の研究者も参加することになっている。

また、タイタンもNASAが2030年代に「ドラゴンフライ」という、ドローン型の探査機を飛ばし、さまざまな場所でサンプルを採取する計画を立てている。

まさに“地球外生命発見前夜”。この10年で宇宙の神秘がどんどん開かれようとしている。

2030年代には探査機「ドラゴンフライ」(上のイラスト)で土星の衛星タイタンを調査。木星の衛星エウロパを探査するNASAの「エウロパ・クリッパー」、ヨーロッパ宇宙機構の「JUICE」のほか、エウロパに着陸して氷を調べる「エウロパ・ランダー」という計画もある
2030年代には探査機「ドラゴンフライ」(上のイラスト)で土星の衛星タイタンを調査。木星の衛星エウロパを探査するNASAの「エウロパ・クリッパー」、ヨーロッパ宇宙機構の「JUICE」のほか、エウロパに着陸して氷を調べる「エウロパ・ランダー」という計画もある

地球に住む人間の生命はあと数百年で終わる!?

関根氏がMars2020に期待することは?

「実は地球の生命の起源も、まだ未解明の謎なんです。我々がサルから進化したことはわかっていますが、そもそも最初の生命がどうやって生まれたかはわかっていない。火星はすぐ砂漠化してしまったので、そこに生命の痕跡があって、それが地球上の生命と似たようなものであれば、地球の生命の起源を知る手掛かりになる。 

逆に地球上の生命と全然違えば、地球と火星の生命はまったく異なる環境での生まれ方をしているということ。我々が知っている“生命”は、地球の生命に限定されているわけですけど、地球の生命とまったく異なる生命が火星で見つかれば、生命というのは多様性があって、宇宙には生命があふれているということにもつながると思います」 

UFOを飛ばして地球に偵察にくるような高度な文明をもった知的生命もいるかも?

「そういうことは、あまり考えられません。高度な文明がどのくらい維持できるかは答えが出ていませんが、非常に短い期間である可能性も十分あるからです。というのは、『もっと楽をしたい』、『もっと多くのものを得たい』という欲があって文明はスタートするわけです。ところが、そういう生活は持続可能ではありません」

前述したように、我々はプレートテクトニクスによる大きな地球の循環の中で生きている。そのバランスが乱れると、我々が今直面している環境問題や気候問題が起こる。

「人間の活動が、各地域の降水や気候のパターンを変えてしまう。人間が国を作る前であれば、適した降水や気候の場所に移動すればよいですが、今はそうはいかない。移動しようにも、そこには別の国がある。それら国同士の間で争いが起きる。それを防ぐには、たとえば人口をコントロールするとか、エネルギーの使い道を決めるなど、我々がもつ“欲”をコントロールしなければならない。それも全人類一致して。おそらくそれは不可能でしょう」 

関根氏によると、今のような状態が続けば我々の文明は、あと数百年で終わる可能性もあるという。

「今まで当たり前だった自由や人権が制限される世界を、生き延びるために受け入れるか、それは我々が考えなくてはならない課題です」

地球外生命がどのように滅びたか、あるいは何千年も生き続けているか調べることは、我々の生き方を見つけることでもあるという。

「もし、文明を築いて持続可能な生き方をしている生命を見つけたら、その生き方を参考にすることができる。そのとき我々がどういう選択をするかは、我々に任された課題です」

関根康人 東京大学理学部卒業、同大学院理学系研究科博士課程修了。2004~2005年、NASAエイムズ研究所にて研究を行う。東京大学准教授などを経て、2018年より東京工業大学地球生命研究所教授。土星の衛星タイタンの大気や海の起源、土星の衛星エンセラダスにおける生命存在の可能性など、宇宙における生命を育む環境の研究に従事。2009年度日本惑星科学会最優秀研究者賞、2016年度文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞。著書に『土星の衛星タイタンに生命がいる!』(小学館新書)。

  • 取材・文中川いづみ写真アフロ

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