これぞGoToトラブル?夜行フェリー利用で起きた混乱の一部始終

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国土交通省 観光庁が公表している「GoToトラベル事業」(8月28日時点)より一部抜粋
国土交通省 観光庁が公表している「GoToトラベル事業」(8月28日時点)より一部抜粋

7月22日から始まった、「GoToトラベルキャンペーン」。ざっくりいうと、旅行代金の半額(一人1泊最大2万円まで・日帰りの場合は同1万円)を政府が援助してくれる制度だ。新型コロナウイルスの感染拡大によって滞った経済活動を活性化させることを目的にはじまったが、9月1日に夜行フェリーを利用した筆者は手続き上で混乱に巻き込まれた。そのプロセスで国民には十分周知されていないことが次々に明るみになった。

なぜ? 乗船窓口で「割引対象外」の宣告

筆者は9月1日に新門司(福岡県)から大阪南港まで名門大洋フェリーでクルマを乗せ、大学生の息子と2名で移動した。

予約をしたのは8月29日で、見積金額は31650円(会員価格)。支援額は35%なので11000円が還付される。カーフェリーはこれまで何度か利用していて、ふだんはカプセルホテルのような安い個室だが、今回はGoToトラベル割引が使えるので、ゴージャスに「ファーストB和洋室2名部屋」を予約してみた。おかげで実際の支払額2万650円は、下関~大阪までの高速道路を走って帰る場合の高速料金+ガソリン代とほぼ同じ。500km以上の運転をする必要もなく、船旅気分が味わえて、ゆっくり仕事もできる。

そして乗船日の9月1日に19:50の出港にあわせて新門司のフェリー乗り場まで行った。8月12日に往路で同じカーフェリーを大阪南港から新門司まで利用しており、その際は大阪南港の乗船窓口でGoToトラベル申請用の書類を受け取った。自分でGoToトラベル事務局に後日申請して還付を受けるという方式だったのだ。

8月12日、往路で大阪南港から新門司港まで利用した時の乗船証明書。この時点では事後申請でもよかった。運賃合計¥40660と復路と料金が違うのは、時期が繁忙期だったことに加え、非会員だったため、復路より割高になっている
9月1日に新門司港-大阪南港間(復路)のフェリー乗車券。「GoToトラベルの割引対象にはなりません」と言われ、一度、満額¥31650を支払った

今回もそれと同様だろうと思っていったのだが、大きく違っていた。ターミナルに入って検温エリアを通過したところに「GoToトラベル申請書確認」のデスクがあり、

そこで予約番号などを告げて本人確認がなされると、申請の必要がなく「その場で還付される」とのことだ。しかし、当の私は代金をコンビニ払いにしていたことを忘れ、支払いの期日が過ぎてしまっていた。窓口のスタッフによると予約が取り消された状態になっていた。

「予約がない状態なので、GoToトラベルの割引対象にはなりません」

衝撃の一言を受けて驚いたが、出航まで時間も迫っており、仕方なく窓口で普通に料金(¥31650)を支払った。だが、どうしても納得がいかない。どこかに注意事項として書かれていたのか? 何度も予約確認メールなどを読み返したが、どこにもそんなお知らせはない。

最後の最後に、もう一度、GoToデスクにいるフェリー会社の人に聞いてみた。いつから変わったのか?それだけでも知りたかった。すると、驚きの答えが返って来た。

「本日9月1日に通知がありました。私たちも混乱しています。いつもそうなんです。急な変更でいきなり来るからすごく困ります…」

確かにその通りだろう。9月1日から大きく変わる制度に関して、9月1日に発表し、その日に乗船しようとする客に「GoTo対象外」宣言をするのはあまりにも酷だ。(その後、窓口で35%¥11070の割引を受けられた)

加藤氏はGoToトラベルの割引がきかず、一度、全額(¥31650)を支払い。その後、交渉して割引が可能になったため、同じチケットが2枚存在する
GoToトラベルの割引(¥11070)が効いて発行してもらった領収書

大混乱の背景にある事情

そもそもGoToトラベルキャンペーンの本格スタートは8月上旬とされていた。国土交通省の赤羽一嘉大臣は本キャンペーンを8月上旬から開始したい旨を6月上旬に示している。それが7月22日から「前倒し」でスタート。しかも、当初はこんなに複雑な仕組みになる予定ではなかった。事情に詳しい観光業者は以下のように話す。

「持続化給付金事業を民間に再委託したことによって明らかになった予算の無駄遣いや入札プロセスの疑念等を野党が問題視したことで、GoToの仕組みがゼロベースになってしまったという事情があります。当初はこんなに複雑な仕組みではなく、その民間会社がしっかりと反映できるように考えていたんですが、野党の横やりでその仕組みが使えなくなりました。官僚が急場で作らざるをえず、見方によっては可哀そうな一面もありますが、この企画を作る際に旅行業、宿泊団体などと細かく調整をしたのだろうか、という疑問は残ります」

結局、事務局側も旅行業者も混乱の中、予定よりも数週間も前倒しでスタートし、直後に東京都は対象除外になり、さらに9月1日からの配布を予定していた地域共通クーポンも10月1日に延期になった。

本来なら地域共通クーポン配布も揃えて9月から本格運用となる予定が「その場で35%を還付」という方法だけ9月1日からスタートしたというわけだ。(楽天トラベルやYahoo!トラベルなどの予約サイトや旅行代理店を通した予約では、当初から旅行者自身の事後申請は必要なく、決済時点で割引かれた金額を支払うシステムになっている)

旅行者が宿に直接、電話や宿(フェリー会社含む)の公式サイトを通じて予約した場合の還付金受け取り方法について、9月1日からの変更点について以下、まとめてみたいと思う。もっとも大きな違いは、「旅行者自身が事後清算する必要がなくなった」ということである。

① 電話や公式サイトなど宿に直接予約した旅行の場合

旅行者はまず宿の予約を完了させた後、第三者機関STAYNAVI(以下、ステイナビ)にその予約内容を登録

→現地支払いの際に35%割引の金額で支払う。

② ステイナビに対応していないが、GoTo割引対象の宿の場合

→宿に確認するのがベスト。中には、旅行代理店経由の予約のみ、GoTo対象としている宿もある。

③ステイナビのみGoTo対象の宿なのに、間違えて楽天などの予約サイトで予約してしまった場合

予約をいったんキャンセルし、宿公式サイトで予約を取り直してステイナビ経由で35%割引入手(チェックイン当日までに)

国土交通省 観光庁が公表している「GoToトラベル事業」(8月28日時点)より一部抜粋

10月1日から配布の地域共通クーポンとは?

地域共通クーポンとは、旅行代金の15%が還付されるクーポンで旅行先や近隣県において地域共通クーポンに参加しているレストランやレジャー施設、レンタカー会社、土産店などで利用できる。

【例:1人1泊3万円の宿を2名で利用した場合】

宿泊代金→3万円×35%=10500円(1名あたり)

地域共通クーポン→3万円×15%=4500円(同)

となり、1人1泊あたり合計で15000円の割引が受けられる。

地域共通クーポンの配布が始まることでやっと、当初政府が謳い、冒頭で紹介した「旅行代金の半額(50%)を補助」が実現することになる。

夏場の需要を見込んで7月22日から前倒しで始まったGoToトラベルキャンペーンは、9月1日より対象となる予約方法が当初と変更され、支援金の受け取りや申請方法も大幅に変わった。現在のところ2021年1月末までの旅行が対象となっているが予算の執行具合によって変更される可能性も大。10月からは地域共通クーポンの配布も始まり、対象外となっていた東京都も10月1日にはスタートになる見込みだ。

新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中、この政策の推進役のひとりが、安倍晋三総理の後任となった菅新総理である。総裁選や組閣にまつわる話題が多くを占めている陰で現場では大混乱が生じていることにもう少し目を向ける必要があるのではないだろうか。

国土交通省 観光庁が公表している「GoToトラベル事業」の概要(8月28日付)

 

  • 取材・文・写真提供加藤久美子

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