「高校生トライアウト」でわかった、今年のドラ1候補はこの選手!
12球団のスカウトが唸った特大ホームラン&150km超のストレート
山下舜平大(しゅんぺいた)(福岡大大濠)

野球の聖地に、再び球児たちの青春が戻ってきた。
8月29~30日に甲子園で、9月5~6日に東京ドームで、12球団のスカウト約80名、プロ志望届を提出した高校生118名を集めて『プロ志望高校生合同練習会』が行われた。新型コロナウイルス感染拡大によって活躍の場を失った球児に対する救済を目的として、日本高等学校野球連盟(高野連)と日本野球機構(NPB)が開催を決定。中京大中京の高橋宏斗や明石商業の中森俊介ら有力選手が、進路に悩み参加を見送る一方で、アピールチャンスと意気込む球児たちが溌剌(はつらつ)としたプレーを披露した。
8月末に開催された甲子園での合同練習会には、西日本の高校生77名が参加。その中で最も輝きを放った原石は、福岡大大濠(おおほり)の189㎝右腕、山下舜平大(しゅんぺいた)だ。最速153㎞の直球が魅力で、今秋のドラフト会議では1位指名が確実視されている。
シート打撃(実戦形式の打撃練習)では、5人を相手に3つの三振を奪い、最速は151㎞をマーク。球速差と落差のあるカーブで同世代の打者を手玉にとった。試合後の取材では、自身初となる甲子園のマウンドに上った感想を語った。
「聖地のマウンドからの景色には感動しました。福岡のペイペイドームとよく似た硬いマウンドで、自分には投げやすかったです」
直球とカーブの2球種だけで勝負するのは、PL学園時代の桑田真澄と同じ。大物感が漂う。
「それ以外の球種は、上のレベルになってから習得して、幅を広げたいと思っています。ストレートにもまだまだ納得していません。進路はプロ一本です」
一方、打者で注目を集めたのは、中京大中京の大型遊撃手・中山礼都(らいと)だ。昨秋の神宮大会で優勝し、今夏、甲子園で行われた交流試合も経験した。
夏が終わると木製バットを手に一日1000スイングを自らに課し、父との練習でコンディションを整えてきた。
「小さな頃からプロ野球選手になりたいと思っていた。その夢を叶えたい。自粛期間中からこの日のためにやってきた」
シートノックでは広い守備範囲と強肩を披露。シート打撃では無安打ながら、5つの四球を選び、選球眼の良さをアピールした。
9月に開催された東京ドーム会場には、東日本から41名の選手が参加。その中でスカウトの注目を集めたのが埼玉栄の内田了介だった。自己最速150㎞には及ばないものの、伸びのある140㎞台中盤の直球を打者の懐(ふところ)に投げ込み、4奪三振、被安打0を記録。練習後の取材で、山下を強烈にライバル視した姿も印象的だった。
「(西日本で注目を集めた山下のように)東日本で目立つ存在になりたいと思っていました。スピードは出るほうだと思うんですけど、スカウトに球質にも目を留めてもらえるような投球をしたいと思っていました。今回の経験は人生の糧(かて)になると思います」
打者で出色(しゅっしょく)の活躍をみせたのが石川慧亮(けいすけ)(青藍泰斗)(せいらんたいと)だ。左翼席への特大の一発を含む2本塁打を放ち、173㎝と小柄ながら腕っ節の強さを猛アピールした。
また練習会では長打が出なかったものの、一発の魅力でいえば大阪桐蔭の西野力矢も負けていない。豪快に左足を上げる一本足打法で、1年生の秋から名門校の中軸を担った。まだまだ荒さは目立つものの、先輩である西武の中村剛也や日本ハムの中田翔のように、右の大砲として大化けしていく可能性を秘める。
その他にも多くの才能が輝いた合同練習会。若き才能が、今年もドラフトを大いに盛り上げてくれそうだ。
内田了介(埼玉栄)
石川慧亮(けいすけ)(青藍泰斗)
中山礼都(らいと)(中京大中京)
『FRIDAY』2020年9月25日号より
撮影:小池義弘