嵐 ブルーノ・マーズ提供の新曲にファンが大荒れになる理由

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20年12月31日をもって活動休止を公表している「嵐」。その後は個々の活動に移る

嵐ファンの一部が荒れている。

嵐が9月18日にリリースする新曲「Whenever You Call」がブルーノ・マーズプロデュースであることが先日発表された。午後には「ブルーノ・マーズ」がトレンド入りし、紛れもない世界トップアーティストのコラボに、ファン歓喜かと思いきや、SNSなどの反応をチェックしてみると、「最後のシングルが英語ってどうなの?」とか「コレジャナイ感が強い」など、このコラボに違和感を覚えているファンも少なくないようだった。「今年に入ってからの“世界”志向にファンが一番冷めている」というような意見も散見された。

筆者としては、「曲を聴いてみるまではなんとも言えない」という印象だが、いちジャニヲタとして言わせて貰えば、アラシック(=嵐ファンのこと ※いまいち定着していないファンネームだが、便宜上こう呼ぶことにする)ほど、ジャニーズ全グループのヲタの中で恵まれているヲタはいない。

事務所の「理不尽」を謙虚に受け入れるジャニヲタの歴史

アラシックのほとんどは嵐だけのファンで、ジャニーズ全体が好きというわけではないので分からないだろうが、基本、ジャニヲタというのは(Jr.に推しがいる人にとっては特に)事務所の理不尽なやり方に振り回されながらも、「提供されるものは謹んで頂戴いたします」という姿勢で、ある意味、その障害を乗り越えながら“推し”(ジャニヲタ用語でいうところの“自担”)との愛を育むのが常だった。

事務所の理不尽とは具体的に何か。わかりやすいところで言うと、古くはV6、最近(?)ではSexy Zone(以下セクゾ)のメンバー内の扱いの格差だ。

デビュー当時のV6は剛健(森田剛と三宅健)の人気が凄まじく、そこに岡田准一を加えたComing Century(カミセン)がジャケット写真で大きく扱われ、年長の3人組は(あくまでジャケ写においては)バックダンサーぐらいの扱いだった。そのことは、今も井ノ原快彦によってV6の不憫エピソードとして語り継がれている。セクゾに関しては、最近グループに復帰した松島聡と11歳でデビューしたマリウス葉が、一時期セクゾを離れ、それぞれ別のグループで活動していた時期もあった。

また、関ジャニ∞の場合は、07年のライヴDVDが、事務所が絶賛売り出し中の嵐よりも売れてしまったが故に、08年は年2回ものツアーを敢行したにもかかわらず、どちらのツアーもDVD化をさせてもらえなかった。

中でも一番の理不尽な仕打ちとしては、ジャニー社長を除く経営陣がSMAPを解散に導いたことだが、最近はメンバーそれぞれが自分たちらしさを発揮できているように見えなくもないので(5人が歌うSMAPの歌を聴けないことだけが残念だけれど)、今となっては結果オーライなのかなと、最近ぼんやりと思えるようになってきた。これはまぁ、時薬(ときぐすり)ということなのかもしれない。

アラシックは「理不尽」慣れしていない!?

でも、筆者の記憶の中では、嵐が事務所の理不尽なやり方に巻き込まれたことはほとんどなかった。ある時期までは、横浜アリーナが埋められずに苦労していたけれど、事務所は彼らを見捨てずに、ずっとチャンスを与え続けた。嵐も、そのチャンスをものにしたから今があり、ある時期からの“事務所のトップ”という重責を、本当に誠実に全うしていると思う。

ただ、アラシックに関しては、そういった事務所の理不尽な仕打ちに慣れていないせいなのか、ジャニーズのルールを知らずに嵐ファンになったからなのか、事務所のやり方にクレームをつける人が多い印象がある。古参のジャニヲタは、事務所のやり方にケチをつけてブラックリスト入りし、チケットが当たらなくなったら困るので、「これはちょっと強引では?」と思うことがあっても、文句は言わないようにしてきた。

例えばある時期までは、ジャニーズコンサートのチケット申し込みには、料金を先に振り込み、落選した分のみ返金されるのが常だった。振り込みの時の事務手数料などは返金されないので、毎回、1枚あたり何百円かは損をすることになる。古参のジャニヲタは「変なシステム」とは思っても、それを改善させようなどとは考えたこともなかった。

でも、アラシックは立ち上がった。「なぜ、入金の時も返金の時も手数料が差し引かれ、ファンが損をしなければならないのか!」「なぜ、当たるかどうかもわからない抽選のために、申し込み分の入金をしなければならないのか」と事務所に抗議。それ以降、手数料が格段に安くなり、いつしかネットで申し込みして、抽選結果が届いてから入金というシステムに変わった。まあ、デジタル化の流れもあったのだろうが、ジャニヲタとしては、そうやって理不尽な状況を改善してくれたアラシックに感謝した。と同時に、「怖いもの知らずだなぁ」という印象も持った。

過激派アラシックたちの「モンペ」化

その後、一部のアラシックは過激化(?)した。人気者の宿命として、またジャニーズの宿命としてそれは仕方のないことなのだが、露出の機会が増えれば増えるほど、アンチが存在するようになる。武闘派アラシックは、嵐が何かしらのバッシングに遭うたびにアンチに果敢に戦いを挑んでいた。そういったムーブメントは、嵐のブレークのタイミングと、スマホの普及のタイミングがピッタリ合致したことも大きかったと思う。

長く他グループの担当をしながら、嵐も応援している身としては、嵐のオンリー担のそのまた一部の過激派の主張は、「うちの子が何でこんなに不当な扱いを受けなければならないんですか?」「うちの子の評価は何でこんなに低いんですか?」というふうに聞こえなくもなく、「ちょっとモンスターペアレントみたい」と思ったのも確かだ。

「そんなにみんなに認めてもらわなくても……」。そこまで過激派ではないアラシックの友人が、嵐の置かれている立場に不平不満を言うのを聞きながら、筆者はぼんやりと「自担がやりたいことをやって、楽しそうな顔が見られたらそれで十分なのに、それ以上の何を望むかな……」などと心の中で思っていたものだ。

「活動休止まで1年8ヵ月」という贅沢な時間…

昨年、二宮和也はインタビューで、「来年の12月31日までびっしりスケジュールは埋まっている」というようなことを語っていた。活動休止までのカウントダウンに、ファンを喜ばせることを目一杯詰め込んでいたはずの1年。それが、新型コロナによって、方向転換を余儀なくされた。それでも、これでもかというほどSNSを駆使した嵐祭りは続いているし、メンバーはそれぞれに、自分たちのできることを全うしているように見える。

比較してもどうしようもないが、4年前の夏、SMAPは解散を発表し、ファンはテレビに映る彼らを見るたびに胸が張り裂けそうになっていた。そんな時、SMAPの音楽だけが心の支えだった。来年長瀬智也の脱退が発表されているTOKIOだって、ファンは、もうバンドとしてのTOKIOには出会えない。それがアイドルとファンの関係であっても、これまで、“別れ”というのは、日常と同じでいつも突然に訪れるものだった。

でも嵐は違う。こんなことを書くと、アラシックから「“活動休止”を“別れ”と呼ぶな」などとお叱りを受けそうだが、歴代のジャニーズのグループ、あるいは歴代のアイドルグループの中で、嵐ほど恵まれた境遇の中で、ファンにしばしの別れの挨拶をきちんとできているグループはない。逆に言えば、活動休止までのカウントダウンが1年8ヵ月もあるグループなど世界的に見ても前代未聞で、その最初の伝説に彼らはなろうとしているのだ。

新型コロナ禍だからこそアラシックが得たモノ

何事にも臨機応変に立ち向かえるのがアイドルなので、アイドルに「たられば」を使うのは一番ナンセンスだということを承知の上で言おう。

もし今年新型コロナの流行がなく、普通に東京オリンピックが開催されていたとしたら、嵐の「コレジャナイ」感はもっと強かったはずだ。日本代表、アイドル代表として華々しい活躍の場は用意されたかも知れないが、それらは、別にこれまで支えてきたファンに寄り添ったものではなかった可能性が高い。

新型コロナという災難に直面したから、インスタライヴや、YouTubeでのリモート企画が実現し、活動休止前の嵐をより身近に感じられた。国立競技場でのライヴも配信が決定したし、かつてのような、「チケットが当選したから勝ち組」「落選したから負け組」という格差も生まれないことは、ファンにとっても朗報なのではないだろうか。

ブルーノ・マーズの曲は、コロナ以前から動いていたものだと思うが、いずれにせよ、メンバーが望んで実現したことに変わりはないはず。事務所の後輩たちとの共演が多いことも含め、アイドルは、自分たち自身の表現以外にも、「こんな素敵な表現が他にもあるよ」ということを広める、メッセンジャー的な役割も担っている。嵐の曲からブルーノ・マーズに興味を持つ人だっているだろう。

もし、新曲を聴いて「ちょっと嵐のイメージに合わない」と思ったとしても、嵐にピッタリの曲はもう十分あるではないか。それがきっかけで、また昔のアルバムを聴き込んだっていい。残された時間を、どう楽しむかは自分次第。文句を言ってる暇なんてないんじゃないかと、4年前、毎日のようにSMAPの曲を聴きながら涙にくれたスマヲタは思う。

  • 取材・文喜久坂京

    ジャニヲタ歴25年のライター。有名人のインタビュー記事を中心に執筆活動を行う。ジャニーズのライブが好きすぎて、最高で舞台やソロコンなども含め、年150公演に足を運んだことも。

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