ぽっちゃり芸人・餅田コシヒカリを「お姫様抱っこした」男の話
第3回:どんな出会いもすべて芸の肥やし
こんにちは。「駆け抜けて軽トラ」というお笑いコンビで芸人をしている餅田コシヒカリです。私の「恋愛遍歴」も今回で3回目。色んな男性と会って怖い思いもしたけど、これもすべて芸の肥やし。そう思って、毎日楽しく生きております。
さて、最終回となる今回は童貞くんと本気で好きだったボクサーの思い出です。
写経のようなキスマークの嵐
基本的には、純粋に出会いを楽しんでいたので相手も慣れた感じの人が多かったのですが、女性経験のない男性に遭遇したこともあります。
大学生のEくんとはたまたま家が近かったので飲むようになりました。私、飲むのも好きなのでわりと気軽に「飲みにいこうよ!」って言っちゃうんですよね。Eくんは綾野剛さんのような物憂げな眼差しがドキッとする、ちょっと文学的な雰囲気の男の子でした。
その日は夕方くらいから飲み始めてかなり酔っ払っちゃって、何となく彼の家にいく流れになりました。彼からエッチをしたいという気持ちは伝わってくるのですが、すごくぎこちない。どうやらまだ性体験がないようです。
それまで童貞だとは感じさせなかったし、見た目もカッコいいのでびっくり。私も童貞を相手にしたことがなかったのでどうしようかな…ってちょっと気まずい空気になったら、突然向こうがこんなことを言い出したんです。
「う、うまいんでしょ! それなら背中にキスマーク付けてよ」
「はあっ!?」って思ったけれど、上着を脱がせて肩にキスしてあげました。ニコニコしてるEくん。そうしたら、もっとたくさんつけろって言うんです。仕方がないので写経のように上から一行ずつ丁寧につけてやりましたよ。
初めは正座してたんですが、腰のほうになると私がきついのでうつ伏せに寝かせて。背中一面にお灸の痕みたいなキスマークがついて彼は満足そうでしたが、私は吸い過ぎで疲れただけ。もう二度と会うものか、と思って帰ってきました。
その後も向こうから何度か誘ってきたのですが私が返事をしないので、次第に連絡が来なくなって終わりました。最後はこんな感じで自然消滅するパターンが多いですね。興味がなくなった人はだんだん面倒くさくなっちゃうんです。
複数人と交際していた時期もありましたが、幸いにして、修羅場になったことはありません。どんな相手でも不快にさせないようにするのはマナーだと、カレンダーに書き込んでスケジュール管理もしっかりしていました。名前を書いてしまうと、他の人に見られた時にバレてしまうのでA、B、C、Dとアルファベットだけで予定を記して。イニシャルでもないのでバイトのシフトにしか見えません(笑)。
もちろん、複数いる中でも好きな順番はありました。一番好きな人は連絡がきたら他の約束を断ってでも無理矢理に時間をつくっていました。なかなか自由に会えない人だったからです。

誰よりも特別だった2つ年上のボクサー
今までアプリやバイト先、友達の紹介も含めて、たくさんの男性と出会ってきました。その中で、Fくんだけは特別でした。2つ年上のボクサーで、背はあまり高くなかったけれど、坂口健太郎さん似の芸能界にいてもおかしくない塩顔イケメン。それでいてメッセージのやりとりは気さくな感じで、返事がくるのが待ち遠しくなるくらい楽しかった。知り合って2週間後には食事に行く約束をしていました。
Fくんは渋谷の道玄坂の先にある小洒落た肉バルを予約してくれていました。薄暗い個室で雰囲気も素敵。しかも、Fくんは北関東の出身だとかで、上京して4年くらい経つというのにちょっと訛りがあって。きれいな顔と素朴な言葉遣いのギャップにめっちゃキュンキュンしました。もう今日はどうにでもなれって気持ちになってめちゃくちゃ飲みましたね。
お店を出る頃には、ほどよく酔っ払ってて足元はフラフラ。Fくんにもたれかかりながら歩いていると、ふと彼が立ち止まったんです。「このあとどうする?」と見つめてくる彼に身を委ねると、いきなり抱き上げられました。
今までそんなことをされたことがなかったのでびっくり。Fくんより重いはずなのに、鍛えてるだけあって軽々と持ち上げるんです。そして、人生初のお姫様抱っこ…。素敵な夜を過ごしました。
その後もFくんとの関係は続きました。連絡も頻繁に取っていたし、できるだけ時間をつくるようにして月に数回は会っていましたね。ボクシングの練習で関節を痛めているからごはんだけという日もありました。
こうしているとまるで彼女のようですが、付き合っていたわけではないんです。私は好きだったし、彼もそんな雰囲気は出していたんだけれど、言葉で表現してくれることはなかった。どさくさにまぎれて「大好き」って言うのがやっと。でも、そう言うとすごくかわいい笑顔で喜ぶんです。微妙な関係は一年くらい続きましたが、私の芸人としての仕事が忙しくなってきてすれ違うようになり、疎遠になってしまいました。
いまは仕事が恋人です
今はまったく遊んでないし、恋愛も無縁の生活です。テレビに出るようになって素性がバレてしまうのもあるけれど、何よりも今は仕事が楽しい。心が満たされているから、誰かに触れていたいという気持ちが起こらないんです。いずれは人を好きになって結婚もしたいとは思うけれど、当分の間はいいかなって思っています。
めちゃくちゃ遊んでいた時期のことを話すと引かれることもあります。マイナスなイメージも大きいと思う。でも、よかったこともあるんです。人懐っこい性格だってよく言われるんですが、それはいろいろな人と交わってきたから。個性も価値観もたくさんあるから世の中がおもしろいってことを知ったから受け入れられるんです。人を観察する力は今の芸人生活にとても役立っています。
過去に出会った人たちとはだれ一人連絡を取ってはいないし、今後も取るつもりはありません。今は前を向くだけです。ただ、もしもFくんがまだボクサーを続けているなら、純粋に応援しに試合を観にいきたいなとは思います。
(終わり。)
餅田コシヒカリチャンネル:
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駆け抜けて軽トラチャンネル:
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文:餅田コシヒカリ
「駆け抜けて軽トラ」というお笑いコンビで活動。26歳、身長149センチ、体重80キロという「千年に一度の奇跡の体型」を武器に、アナウンサーの加藤綾子さん(カトパンさん)のモノマネなどが人気。今年正月に放送された『新春おもしろ荘』(日本テレビ)が話題となった。ツイッター:@m_koshiikari、インスタ:@koshihikarimochida0000