閉園としまえんの「跡地」巡って住民らに不安の声…なぜ?

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「唐突な感じがする」

「コロナで休園中だった6月中旬に閉園が発表されて、わずか2か月足らずの8月末に、私たちが愛したとしまえんはなくなってしまいました。しかも、防災拠点の公園になると聞いていたのに、土地の半分には新たな施設が作られます。なぜとしまえんを閉園したの? と疑問がわいてきます。

家族四代でとしまえんを利用してきましたので、悲しくて、さみしいです。新計画はいつどのように決まったか…すべてが唐突な感じがします」

こう話すのは、8月31日に閉園した東京・練馬区の遊園地「としまえん」の近くに住む住民だ。

としまえんは1926年(大正15年)にオープンした、94年の歴史を持つ遊園地だが、同遊園地を運営する西武鉄道はさる6月12日、としまえんを8月31日をもって閉園すると発表。東京都を含めた関係者と「都市計画練馬城址公園の整備にかかる覚書」を締結し、今後の土地利用に鑑みて閉園を決めた、とホームページで説明した。

としまえんを含む周辺の土地は、1957年に都市計画公園「練馬城址公園」の指定を受けたが、整備は進まなかった。その後、東日本大震災後の2011年12月に、東京都が「都市計画公園・緑地の整備方針」の優先整備区域に指定し、2020年までに広域防災拠点として整備する方針を出していた。

としまえんは練馬区の成人式や祭りの会場になるなど地域の交流拠点だったが、「防災拠点の公園になるなら閉園も仕方がない」と思った住民もいるだろう。

ところが閉園が発表された6月12日に、東京都と西武鉄道などが結んだ覚書には、「スタジオツアー施設等の整備に向けた協議を行う」と明記された。そして西武鉄道などは8月18日、としまえん跡地の約半分を占める土地に『ワーナーブラザース スタジオツアー東京 ‐メイキング・オブ ハリー・ポッター』を建設し、2023年のオープンを目指すことを正式に明らかにした。

西武鉄道によると、この施設は「ハリー・ポッター」や「ファンタスティック・ビースト」の大道具や小道具などが展示される、体験型の博物館のようなものだという。

西武鉄道はとしまえんの閉園と新たな計画は「都の公園整備のプロセスにあわせて建設するもの」だと説明する。華やかな計画であるし、多くのファンをもつ作品だけに、これを歓迎する声は多い。ビジネスとして考えても、優れた点があるのだろう。

しかし、一方で子育て世代を中心に「納得できない」という感想をもつ人も少なくないのは事実。その証拠に、同遊園地に愛着を持つ地域の人たちを中心に、としまえんの存続や園内のプールの存続を求める署名活動が複数立ち上がっているのだ。

そんななか、閉園から1週間がすぎた9月7日と8日、「ハリー・ポッター」施設の事業主であるワーナーブラザースジャパンと西武鉄道などが、地域住民対象の説明会を練馬区内で初めて開催した。筆者も取材に訪れたが、基本、入場や写真撮影は地域住民以外できないとのことだった。

そこで出席した住民に取材すると、その内容はスタジオツアー計画と解体工事についての説明だったが、新計画についての具体的な話はなかったという。資料には、新たに建築される建物の面積が図で示されており、解体工事終了後の来年3月に着工し、2023年2月末に完成予定というスケジュールが示された。ところが、出席した住民らに話を聞くと、「釈然としなかった」との感想も聞こえてくる。

「新計画のデザインやイメージが示されなかったので、よくわかりませんでした」
「としまえんの閉園が決まってから初めて開催された説明会なのに、内容が曖昧です。住民の理解は必要ないと考えているのではないでしょうか」

もちろん、賛成と感じている人もいるだろう。しかし、スタジオツアーの建設計画と、防災拠点公園としての整備方針との間に整合性があるのかどうかについて、はっきりしないようだ。説明会の現場で、筆者が西武鉄道の広報担当者に取材すると「土地をワーナーに30年間貸すことになる」という。となれば、これはあくまで民間の商業活動であり、公園としての整備は少なくとも30年後に先送りになる……と言えるのではないだろうか。

としまえんは東京都から災害時の避難場所に指定されているが、現在は施設のための工事中なので、2023年2月末までは避難場所としては使えない可能性がある。このあたりの説明が丁寧になされないなら、近隣住民の不安と不満が生まれるのも仕方がないだろう。

スタジオツアー予定地以外のとしまえん跡地はどうするのか。これについても先ほどと同様、西武鉄道の広報担当者に尋ねても、具体的な回答は得られなかった。西武鉄道から東京都に売却するのかについても、「現時点では言えない」とのことだった。

説明会には東京都の関係者は登壇しなかった。防災拠点としての跡地利用はどうなるのか。新計画はどこから出てきて、どのような経緯で東京都は覚書を結んだのか――歓迎する声がある一方で、住民の不安がある以上、東京都は十分な説明をするべきではないだろうか。

  • 取材・文田中圭太郎

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