田村淳が「朝のワイドショー戦争」に突如参戦する納得の背景 | FRIDAYデジタル

田村淳が「朝のワイドショー戦争」に突如参戦する納得の背景

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写真/AFLO
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老若男女どれも強い

ロンドンブーツ1号2号の田村淳(46)が、9月28日からTBSの朝のワイドショー『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターを務める。メーンキャスターの立川志らく(57)は続投するものの、事実上、二枚看板の番組になると見ていい。

4番組がシノギを削る朝のワイドショー戦争で、世帯視聴率が断トツなのは『モーニングショー』(テレビ朝日)。10%以上を得ることもある。一方、放送開始から1年が過ぎた『グッとラック!』の数字はその3分の1程度に過ぎず、圧倒的最下位。打ち切られても不思議ではない水準だった。このため、テコ入れ策として淳が起用される。これで浮上の目が出てきた。

淳の人気は高い。若者のみならずお年寄りにも親しまれている。ツイッターのフォロワー数は約313万。NHKニュース公式アカウントの約305万より上である。世帯視聴率に単純換算すると、約3・1%にもなる。志らくの約12万7000の約25倍だ。

では、どうして淳はウケがいいのかというと、『ロンドンハーツ』(テレ朝)のような若者をメーンターゲットにする番組の顔である一方、3月に動画配信で「リモート卒業式」を行うなど、心やさしい一面があるからだろう。

淳は新型コロナ禍によって卒業式を失った子供たちのため、アーチストらに声を掛け、新たな旅立ちを祝福した。その後、NHKで放送された『みんなの卒業式』でも司会を任された。

コメンテーターに求められる時事問題の知識も豊富だ。なにしろラジオでは情報番組のキャスターを12年も務めている。番組は文化放送の『田村淳のNewsCLUB』で、政治や世相からカルチャーまで軽妙かつ分かりやすく伝えている。舞台がテレビに変わろうが、不安はないはずだ。

日本テレビの朝のワイドショー『スッキリ』のメーンキャスターは淳と同じく吉本興業とエージェント契約を結んでいる加藤浩次(51)である。フジテレビの同『とくダネ!』の場合、出演者のうち局内外で最も高い評価を受けているのは、火曜日のスペシャルキャスターであるカズレーザー(36)にほかならない。お笑い芸人が朝のワイドショー戦争のカギを握るようになった。

この現象を奇異に感じる人もいるかも知れないが、もはや時代の要請だろう。今のワイドショーは1990年代までと比べるとニュースを報じる時間が激減した。代わりに時事問題の解説とスタジオトークで勝負している。このため、時事問題に強いお笑い芸人とタレント性の高いコメンテーターが重用されるのだ。

では、なぜワイドショーが以前ほどニュースをやらなくなったかというと、理由の一つはネット社会になったこと。ニュースを知るならスマホのほうが手っ取り早い。欲しい情報がすぐ手に入る。ワイドショーでニュースを見る必要性が減った。

また、ワイドショーが始まる前に各局が流す早朝のニュース番組、情報番組の拡大化も一因に違いない。昭和期までのニュース番組が絶対にやらなかった芸能スキャンダルまで扱っている。そのあとに放送が始まるワイドショーはニュースを目玉にしにくくなってしまった。

「ワイドショーは井戸端会議なのか」との批判の声が有識者から上がり始めたのは5年ほど前。だが、好むと好まざるとに関わらず、もはやワイドショーの主役はキャスターとコメンテーターたちなのである。井戸端会議は言い過ぎかも知れないが、トークは大きな売り物なのだ。

解説力とスタジオトーク力がワイドショーの命運を握る時代になった。なので、好感度の高い羽鳥慎一氏(49)をキャスターに据え、大型パネルによる解説をいち早く取り入れ、辛口の社員コメンテーター・玉川徹氏を起用した『モーニングショー』は勝利を得た。成功の条件がそろっていた。

玉川氏についてはシンパもアンチも多いが、見る側にとって大いに気になる存在にほかならない。その発言は連日のようにツイッターで話題になる。好き嫌いは別として、突出したスタジオトーク力を持つ人なのは間違いない。

淳の話に戻ると、日本テレビの情報番組担当者も「TBSに良い人を選ばれてしまった」と語る。人気があり、ラジオでキャスター経験がある上、テレビを熟知しているので暴走の不安もないからだ。

『グッとラック!』は淳の起用と同時に曜日ごとのコメンテーターも一部交代する。月曜日には元大阪府知事の橋下徹氏(51)、火曜日にはお笑いトリオ「3時のヒロイン」の福田麻貴(31)、金曜日にはフワちゃん(26)がそれぞれ登場する。いずれもスタジオトーク力が高い人物なので、やはり番組を浮上させる原動力になりそうだ。

もうひとりの注目人物

一方、淳の好敵手に成り得るのがカズレーザーだ。『とくダネ!』はメーンキャスターの小倉智昭氏(73)が来年3月末に勇退し、4月から衣替えされるが、局内の現場には以前から「後任はぜひカズに」という声が強い。視聴者の人気も高い。

カズの凄さは、博覧強記でバランス感覚も優れている上、同業者である芸能人にも一切忖度しないところ。2019年11月、沢尻エリカ(36)が麻薬取締法違反で逮捕されると、すぐさま芸能界から擁護する声が上がったが、カズは「ただのジャンキー」と素っ気なかった。

今年8月、未成年との飲酒が報じられた山下智久(35)と亀梨和也(34)が、所属するジャニーズ事務所から処分を受けると、やはり庇う発言が芸能人から出たが、カズは「処分は厳しくはない」と、毅然としていた。ブレない人だ。

小倉氏の後任は遅くとも年内には決まり、2月上旬までには後任者の名前がネット局とスポンサーに伝えられる。現場が望むカズで決まるのかどうかが注目される。加藤浩次の『スッキリ』の場合、世帯視聴率こそ『モーニングショー』の後塵を拝しているものの、スポンサーが大歓迎するF1層(20歳〜34歳)の支持は圧倒的なので、「CM収入はトップ」(前出・日テレ情報番組担当者)。

明るいスタジオトークやエンタメ情報に強いところなどがウケている。もしも支持層の拡大に努めたら、世帯視聴率での王座も見えてくるはずだ。

一方、『モーニングショー』は2019年まで4年連続で年間の世帯視聴率がナンバーワンだが、ライバル3番組が解説力とスタジオトーク力の強化を図っているので、油断はできない。

死角もある。硬派調なので、大きな社会的関心事がないと、世帯視聴率が取りにくくなる。

プレイヤーチェンジがそれぞれの番組にどんな効果をもたらすのか。今後の朝のワイドショー戦争はヒートアップ必至だ。

<高堀冬彦 放送コラムニスト、ジャーナリスト。1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部記者、専門委員、「サンデー毎日」編集次長などを経て現職。スポニチ時代は放送記者クラブに所属>

 

  • 取材・文高堀冬彦

    放送コラムニスト、ジャーナリスト。1964年、茨城県生まれ。。スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部記者、専門委員、「サンデー毎日」編集次長などを経て現職。スポニチ時代は放送記者クラブに所属。

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