「タンタン、20年間ありがとう」神戸のパンダ、最後の誕生日会

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撮影:菊地弘一

20年前に中国から神戸市立王子動物園(同市灘区)へやってきたジャイアントパンダのタンタン(旦旦)が25歳の誕生日を迎えた。中国からの貸与期限が切れ帰国が決まっているため、日本で迎える誕生日は今年が最後だった。タンタンは1995年9月16日に中国で生まれ、2000年7月に阪神・淡路大震災の復興支援の一環として来園。

大人しくマイペースな性格から"神戸のお嬢様“と親しまれてきた。タンタンの誕生日は例年、大勢のファンが全国からお祝いに駆け付けるが、今年は休園日と重なり、新型コロナウイルス対策もあり、他の日に振り替えず非公開で行われた。

9月16日午前11:00、王子動物園のパンダ舎の扉が開きタンタンが登場。カメラを構える約40人の取材陣が見守る中、びっくりした様子で入るのをためらっていた。入場すると20分ほど歩いたりやぐらの上で横になったりして、なかなかケーキにたどり着かない。「このままスルーされてしまうのか」と内心焦る気持ちを抑えて見守っていると、ようやく2段組の大きな誕生日ケーキに近づいて、まずは飾りのぶどうを頬張った。

プレゼントのケーキは、タンタンの担当飼育員の梅本良次さんと吉田憲一さんの2人が1カ月前から準備をし、2回の試作を経て完成させた。ケーキ状のエサを食べるタンタンを眺めながら、2人の担当飼育員はこう明かす。

「タンタンへの感謝を込めてケーキを作りました。最後の誕生日という思いはなかったのですが、食べているのを見たら実感が出てきました。ここで誕生日を迎えれて嬉しいです」(梅本さん)
「今日はドキドキしすぎて胃が痛いです。タンタン、空気読んでくれてありがとう」(吉田さん)

撮影:菊地弘一

「25歳のお誕生日おめでとう。20年間元気で王子動物園にいてくれてありがとう。来年以降も中国でお誕生日を祝われることを切に願っています」と話した上山園長は、これまでの誕生日をこう振り返る。

「どのお誕生日もそれぞれに思い出深いです。昨年は100mほどの行列ができて、数分しか見れないのでまた並びなおして、多い人は10回ぐらい並びなおしたと言っていました。全国から沢山の方がタンタンを見に来てくれて、皆さんが喜んでいる顔や声を聞いていると、とてもうれしい気持ちになります。

ただ、子供達が成長するまで、タンタンは王子動物園にいることができなくなってしまいました。仮定の話はできないですが、もしペアでまた来てくれれば、ぜひ出産して大きくなって中国にお返しできるところまで、できればと思っています」

タンタンの里帰りは、新型コロナウイルスの影響で中国への直行便が飛ばず、帰国は延期中である。上山園長は「飛行機が飛んだとしても、職員は14日間中国で隔離されます。タンタンと一緒に基地まで行き、慣らし飼育をする必要があります。我々の想いとしては、この14日間ルールがなくならないと中国へ行けないと思っています」と話す。今は期限がない状況であり、レンタル料は帰国後に日割りで支払うことになっているという。

帰国が決まれば、1カ月前に発表する予定である。お別れ会はどうなるのだろうか。

「正直な気持ちでいえば、やりたいです。今日のお誕生日会も皆さんここで祝いたかったと思いますが、公式ユーチューブでの動画配信になりました。お別れ会もまだどうなるかわからないですが、今回のように動画配信になるかもしれません」(上山園長)

撮影:菊地弘一

2000年7月16日、復興を目指す神戸の人々を元気づけるために、タンタンは王子動物園にやってきました。妊娠、流産、出産と、赤ちゃんやパートナーのコウコウの死など、辛い時期を乗り越えてきた。来園者たちはふるさとへ帰るタンタンへどんな想いを抱いているのだろうか。

「ずっと神戸におってほしいのが本音です。だけど生まれ故郷で暮らすことがタンタンにとって最良なのかもしれないと思うと、複雑な気持ちです。タンタンいままでありがとう!」(神戸市中央区在住40、50代夫婦)

「タンタンだいすき!いつまで?まだおるん?」(同市中央区、5歳)

「タンタン、神戸で住んどったこと忘れんとってな。ずっと大好きやから!」(同市東灘区、8歳)

「月に数回、動物たちを撮りに来ています。タンタンはどんなポーズにでも絵になる瞬間があり、とても魅力的な被写体です。シャイと言われてますが、牙をむいたりワイルドな写真が撮れたりすると、元々は野生動物なんだなと感じます。生まれ故郷に帰ることを、残念に思うのは似つかわしくないかもしれませんが、笑顔で見送りたいと思っています。いままでたくさんの素敵をありがとう」(明石市、20代)

「彼女が来る前からだからウン十年前から、散歩がてら王子動物園に来ています。気持ちよさそうに目を細めていたり、微笑んでいるように見えたり、とても表情が豊かなお嬢さんね。私も彼女と同年代だから『お互い色々あったわね。ふるさとでも元気でいてね』と話しかけています」(同市灘区、70代)

撮影:菊地弘一

新しい世紀の幕開けという意味で「旦旦(タンタン)」と名付けられた。辛い時期を乗り切る勇気や希望が、タンタンだったという人は多い。神戸の震災復興に貢献してくれたことへの深い感謝と、これからの幸せを祈って送り出したい。

タンタン、いままでありがとう。
ずっと忘れないよ。
みんな、貴女の幸せを心から祈っています。

王子動物園の入園とジャイアントパンダの観覧は、公式ホームページからの抽選による入場制限を実施中。なお、9月28日からは平日なら予約せずに観覧ができる。

タンタンはもう少しだけ、神戸にいてくれる。

若かりし頃のタンタン。麻袋でじゃれる(提供:神戸市立王子動物園)
じゃれていたらスッテンコロリン……(提供:神戸市立王子動物園)
春。桜が咲くとうれしそう(提供:神戸市立王子動物園)
夏。緑の香りにうっとり?(提供:神戸市立王子動物園)
秋。タンタンもハロウィンが好きだ(提供:神戸市立王子動物園)
冬。雪が降ってきて、小走りになる(提供:神戸市立王子動物園)
氷の土台に「ありがとうタンタンキャンペーン」のロゴマークを好物のぶどうであしらった。リンゴをくり抜いた「ありがとう旦旦」、ニンジンで書かれた「25」、20年間食べ続けた同市北区淡河町の竹(撮影:菊地弘一)
  • 取材・文椙浦菖子撮影菊地弘一

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