カリスマユーチューバー・ヒカルが語った「大手事務所VAZの闇」
核心を知る人物に直撃! 人気ユーチューバー「ねお」の退所トラブルが大騒動に発展
「ねおちゃんの問題は早く解決してほしいですね。若くて真面目で才能のあるクリエイターが、契約トラブルで苦しむのは本当にもったいないですよ」
鋭い目つきで本誌にそう語るのは、チャンネル登録者数417万人を誇る〝カリスマユーチューバー〟のヒカル(29)だ。
いまユーチューブ業界が揺れている。きっかけは8月24日、登録者数が97万人を超えるユーチューバー「ねお」(19)の母親が、所属事務所「VAZ」を告発したこと。母親はブログで「年間に数千万円の収益が出ても月に30万ほどしか報酬が渡されないこともある」「記憶にない契約書が出てくる」と主張し、VAZと契約解除する意向を明らかにした。
一方のVAZは「事実と異なる」として、「厳正に対処する」とコメントを発表。ねおの退所トラブルはいまだ泥沼状態だ。
VAZは、かつてヒカルやラファエルなどの人気ユーチューバーが所属した有名ユーチューバー事務所である。
いったい何が起きているのか?
本誌が取材を進めたところ、関係者から、ある音声データを入手した。これにはヒカルやラファエルらが、VAZの経営陣と「炎上騒動」への対応について話し合った様子が収められていた。
’17年8月14日、ヒカルらは個人の価値を仮想株式(VA)にして売買するサービス「VALU」への参入を表明する。当然、ヒカルのVAはすぐさま高騰した。ところが、翌日にヒカルらは保有する自身のVAをすべて売却し、利益を得たのである。これには批判が殺到した。
VALUでの活動について、当時の所属事務所だったVAZ側は、内容を把握していなかったとコメントしていた。だが、本誌が入手した音声は、ヒカルらがVALUを始めたウラにVAZの関与があったことを示す証拠だった。
「事実を闇に葬り去りたくない」
音声を聞くと、ヒカルらはそう語り、VAZの森泰輝社長(30)をはじめ、関わった人物や経緯をすべて公表して謝罪したいと願い出ている。だが、VAZ側はこれを拒否。さらに退所を希望するヒカルらに対して、VAZの幹部は「現状、こちらからクビにすることはできるけど、そちらから一方的にやめたいというのは無理」と一蹴していたのだ。
ちゃんとした事務所は少ない
結局、ヒカルは騒動を鎮静化するために自分たちの責任を全面的に認める謝罪動画を公開。その後、約2ヵ月半活動を自粛。さらに、約1年後の’18年11月には事務所を離れることになる。
VAZと所属ユーチューバーのトラブルは、今に始まったことではなく、非常に根深い問題だったのだ。
9月中旬、本誌は東京・六本木の焼き肉店から出てきたヒカルに真相を直撃した。
――この音声はヒカルさんですよね? VALUの騒動にはVAZが最初から関わっていたのですか?
「この声は確かにボクですね……VALUの件は自分たちの認識不足で、多くの方々に迷惑をかけて今でも申し訳なく思っています。もともとVALUに投資する企画は、森社長にも確認したうえで進めていました。売り出す時も社長に確認しています。当時は自分に力もなくて、会社側に反撃できず、ボクらは半分脅されるような感じでした。当時、VAZとは2年契約で自動更新。事務所を辞めたら数年間は他には所属できない、ヒカルという名前も事務所のものという記載も契約書にあったと記憶しています」
――いま、ねおさんとVAZの契約問題が大きなトラブルになっています。
「彼女なら事務所がなくてもやっていけるので、できるだけ早く前に進めるようにしたほうがいいって本人にアドバイスをしました。ねおちゃんは中学生の頃からVAZにいたので、大金を稼いでもその感覚がわからない。彼女が強く言えないから、VAZが丸め込もうとしたんでしょう。VAZは所属のクリエイターも若いですが、社員もみんな若い。大学生のサークルのようなノリで運営されている面があって、まだまだ未熟なんです」
――ヒカルさんとトラブルになった3年前と企業体質は変わっていない?
「変わってないからこんなことが起きたんじゃないですか? 当時はお金の価値に無頓着なクリエイターも多かった。VAZはそれを当たり前として今までやってきたのでしょう。ユーチューブ業界はどんどん競争が激しくなり、これからは動画のクオリティーがさらに求められる。一方で、まだちゃんとした事務所が少ない業界だと思います。芸能界なら事務所が仕事を取ってきますが、ユーチューバーは誰かに与えられなくても、仕事をすることができます。ボクはVAZを辞めて本当に良かったですね」
対するVAZは、ヒカルらとの話し合いの内容についてこうコメントする。
「過去の所属タレントに関しては業務上守秘義務がありますので、回答できかねます」(広報担当者)
発展途上の業界だけに、これからもトラブルは避けられないだろう。





『FRIDAY』2020年10月9日号より
PHOTO:濱﨑慎治