『笑顔のたえない職場です。』が描く漫画家の世界のリアル

作者・くずしろさんにインタビュー! 「脱稿ハイ」「単行本発売前ウツ」など、読者の知らない“漫画家あるある”とは――?

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漫画好きにとって、身近なようで実はあまり分かっていない「漫画家」というお仕事。

「部屋にこもってひたすらマンガを描いている」「締め切りに追われている」……くらいのざっくりとしたイメージはあるが、実際にどんなふうに作品が生み出されているのか、目まぐるしく変化する出版業界で、令和の漫画家の日常とはどんなものなのか、気になっている人も多いはず。

コミックDAYSで連載中の漫画『笑顔のたえない職場です。』くずしろ/講談社)は、漫画家が日ごろ何を考え、どんなふうにお仕事をしているのかをコメディタッチに描いた作品だ。

『笑顔のたえない職場です。』1&2巻書影(著・くずしろ/講談社)

新人漫画家である主人公・双見奈々は、妄想癖のある心配性な小心者。「担当さんに嫌われてしまうのでは…!」と気にしすぎて、担当編集・佐藤さんに連絡1つ入れるのにも考えすぎな妄想を炸裂させ、いちいち悶々としてしまう。

こんな風にすぐに仕事がストップしてしまう困った漫画家な双見だが、頼れるアシスタントの間瑞希(通称はーさん)に「仕事して♡」と諭され、クールな担当・佐藤さんの少々わかりにくい愛情に一喜一憂しながら、漫画連載に猛進する日々を送っている。

深夜、美人な担当編集・佐藤さんにメールを送ろうとするも、 妄想が炸裂してなかなか送ることができない双見。 『笑顔のたえない職場です。』1巻より

そんなクスッと笑えるドタバタコメディの一方で、作品に対し妥協はしない漫画家の熱い想いや、担当編集との信頼関係、作品を面白くするため取材に奔走する様子や、新しいアシスタントさんと上手くやっていけるか悩む姿など、漫画家という職業がどんなものなのかも赤裸々に綴られている。

実は、本作の読者からは「双見先生は、もしや作者本人がモデルなのでは?」という声も。今回は作者であるくずしろさんに、本作が生まれた経緯や、執筆の裏側について伺った。

「『笑顔のたえない職場です。』は、編集側から「漫画家を主人公にしたお話はどうですか?」と持ち掛けられたのが連載のきっかけでした。主人公・双見のキャラクターについては、そのままそっくり自分がモデルというわけではないのですが、自身のこれまでの経験が作中に反映されているところもあります。

例えば、同時期に他誌で連載開始した『永世乙女の戦い方』で取材をして漫画を描く楽しさ、漫画家と担当編集以外の人にも関わってもらって漫画を作る広がりというのを知ったのですが、その経験から、双見が取材をしている姿というのを作中に描きました。2巻に出てくる蒸しタオルのお話も、私の高校受験期からの習慣ですね。」(『笑顔のたえない職場です。』著者・くずしろ氏)

また、単行本が発売される前にナーバスになってしまう「単行本発売前ウツ」や、原稿を描きあげた達成感と爽快感とでテンションがおかしなことになってしまう「脱稿ハイ」など、作中に登場するこれらの“漫画家あるある”も実体験が元になっているという。

「『単行本発売前ウツ』の回で描いたような「やる気が出ない、もうダメだ」という状態には、私もよくなっています……。そういうときは、私は「ももいろクローバーZ」のファンで“あーりん推し”なので、彼女の『仕事しろ』というソロ曲を聴いて自分を奮い立たせています。辛辣な歌詞が沁みます。

このほか、17話で描いた『脱稿ハイ』も漫画家あるあるでしょうか。私の場合だと、原稿明けにお酒を飲みながら積んでた小説を一気読みします。漫画に落とし込んだときの演出を考えながら読むのが楽しいです。」(くずしろ氏)

「単行本発売前ウツ」でやる気がエンプティした双見。 こうなるとはーさんの励ましも効果ナシ!? 『笑顔のたえない職場です。』1巻より

テンポよく進むコメディが基本でありながらも、アシスタントのはーさんが「私には才能がない」と語るエピソード、双見が前担当編集さん時代にネームが通らずドロドロに腐っていた話など、シビアさとコメディとのバランスが絶妙な本作。このバランスについては、試行錯誤されているのだとか。

「私自身の性格が暗いので……作風もついつい暗くなりがちです。でもたくさんの人に楽しんでほしいので、暗くなりすぎないようにバランスを考えて描いています。カレーでいうと、10辛を4辛くらいにしているようなイメージです。理想的な辛さはいつも調整中です。」(くずしろ氏)

SNS上で人気があって絵もうまいのに、なぜデビューせずにアシスタントを続けているのか、と双見に聞かれたはーさん。その理由は、シビアでで現実的なものだった―― 『笑顔のたえない職場です。』1巻より

シリアスな場面がありつつも、本作の双見と担当編集・佐藤さんの、互いの信頼が感じられる二人三脚の間柄にほっこりさせられることも。10月14日発売の2巻では、営業部の書店回りの裏側など、読者が普段あまり触れることのない出版社サイドの業務についても詳細につづられている。

「(『笑顔~』の)担当編集はいつ連絡してもつながるし、「ネームできません…」と報告すると「じゃあ今から打ち合わせしましょうか」とすぐに相談に乗ってくれます。ネームの早い・遅いというのは仕事をないがしろにしているわけでは決してないんですが、できないものはできないので……。そういう手が止まっている時間を一緒に解消してくれるので助けられています。

2巻で描いた書店回りの話は、実際に取材にも行きましたが、やはり自分が営業さんによくしてもらった経験も大きいです。新人時代に初コミックスを出した時、営業担当の方が私の連載を読んで「面白いです!」と周りに熱弁してくれて。その声が会社の偉い人達にまで届いて、「そこまで言うならもうちょっと部数のせてみるか」と予定より多く初版を積んでくれたという嬉しい思い出があります。」(くずしろ氏)

書店では、各担当者の裁量で発注数、置き場所が決まることも多い。営業さんの能力や書店さんの見極めも作品の売上に大きく関わってくるため、連携プレイが欠かせない。こういった、漫画に関わる人々の、普段表には出てこない努力が描かれているのも、本作の魅力のひとつなのだ。

単行本2巻収録の9話で、営業の池波さんと書店回りに臨む双見。サイン本についての知られざる裏側が明らかになる回だ。 『笑顔のたえない職場です。』2巻より

くずしろさんが漫画家を目指したきっかけ、デビューの経緯についても聞いてみた。

「小さい頃から絵本ばかり読んでいる、お話を考えるのが好きな子でした。納得いかない展開だと、自分だったらこうすると再構築してみることも多かったです。高2の春休み、受験勉強漬けになる前に自分で漫画を描いて某少年誌の月例賞に送ったらひっかかって。それから「大学在学中のデビュー」をタイムリミットに漫画を描き続けて、大学4年生の冬に初連載が決まりました。」(くずしろ氏)

“好き”を続けてきた結果として、その延長線上に今があると語ってくれたくずしろさんは、今や『笑顔のたえない職場です。』を含め複数の出版社で連載を同時進行する漫画家。多忙を極めているであろうそのスケジュールはいったいどうなっているのだろうか。

「スタッフが4人いるのですが、全員がとても優秀なおかげで、連載を掛け持ちでも回せています。このキャラはこういう格好が好きと一度説明すると覚えてくれて、そのキャラに合う服のトーンを用意したり、スタッフ内で3D講習会をしたりとできることを増やしてくれます。私が特別優秀というわけではなく、プロアシとしてどこに出しても恥ずかしくない、でもできるなら永遠に一緒に働いてほしいスタッフあってこそです。

優秀なスタッフに支えてもらっていることが、作品をよくしたいというモチベにもなっています。作中で双見のアシスタントを務めるキャラクター・はーさんは、自分のスタッフ陣の「良いところ」の集合体です。過剰に気を遣うことなく、作画ミスもちゃんと指摘してくれる、ありがたい存在ですね。」(くずしろ氏)

くずしろさんが作中のキャラで一番共感できるという、漫画家の梨田。「梨田、大好きです。ダメなところ、小者なところ、周りを気にしすぎてしまうところが自分と共通しています。それをかわいげもある感じにして描いているキャラです。」と語ってくれた。『笑顔のたえない職場です。』2巻より

漫画家だけでなく、アシスタントスタッフ、担当編集、出版社や書店の従業員まで、漫画に関わるすべての人々を描いた『笑顔のたえない職場です。』。

多くの出版社で仕事をしてきたくずしろさんだからこそ、彼女らのリアルな姿や想いを作品のなかに落とし込むことができるのだろう。読めばきっと、もっと漫画のことが好きになるはずだ。

 

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  • 取材、文月乃雫

    兵庫県出身、東京在住のフリーライター。アニメやマンガ、料理といった得意分野を活かし、『ダ・ヴィンチニュース』(KADOKAWA)や『レタスクラブニュース』(KADOKAWA)、『マグミクス』(メディア・ヴァーグ)など様々な媒体で執筆。2020年1月よりブログ『ソロ活LIFE』も運営中。

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