香川照之 憎まれ役を流行りの“おじキュン”の波に乗せた立ち回り | FRIDAYデジタル

香川照之 憎まれ役を流行りの“おじキュン”の波に乗せた立ち回り

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ドラマ『半沢直樹』で香川が演じる”大和田暁”は、視聴者から愛されるキャラクターとなった(写真:AFLO)
ドラマ『半沢直樹』で香川が演じる”大和田暁”は、視聴者から愛されるキャラクターとなった(写真:AFLO)

ドラマ『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)の好演で一躍注目を浴びることになった大森南朋。その注目度は主演の多部未華子より大きかったかもしれない。

大森がそれまでのイメージを覆し“可愛いオジサン”を演じた結果、世の若い女性たちがおじさんに萌える『おじキュン』なる言葉が生まれ、“お茶目オジサン”がブームになる兆しが見えてきたという。

これまでも40代~50代の俳優が突然脚光を浴びることがたびたびあった。ただ、その俳優たちはどちらかといえばイケメンの、いわゆるダンディなオジサン。女性たちが尊信を込めて呼ぶ“オジ様”だ。

今の時代に注目されている“オジサン俳優”たちは、イケメンからは離れた位置にいる。そしてこれまで演じた役柄の多くは悪役とまではいかないまでも、クールというか冷徹、そして笑顔が少なく好感が持たれる役ではなかった。それが対極の優しさあふれる好人物を演じるわけだから、そのギャップにハートが射抜かれてしまった女性が多かった。コロナ禍の殺伐とした世の中で、普段以上に癒しが求められた結果なのだろう。

そして、“おじキュン”筆頭の大森と同じく注目を浴びているオジサン俳優がもう一人いる。ドラマ『半沢直樹』(TBS系)で半沢の宿敵『大和田暁取締役』を演じている香川照之だ。

シーズン1のラストシーンで土下座させられ、“半沢許すまじ!”となった大和田だが、シーズン2では半沢と手を組むところが見られたりして、いったい彼は敵なのか味方なのか、最後の最後まで見逃せない展開が続いている。

そんな大和田を演じる香川は現在54歳。父親は二代目市川猿翁、母親は女優の浜木綿子だが、2歳の時に両親が離婚しその後は母親の手で育てられた。父・猿翁との確執は有名な話だが、ʼ10年に和解し香川は九代目市川中車を襲名して歌舞伎界に進出を果たした。

俳優としてはNHK大河ドラマ『春日局』で戦国武将・小早川秀秋を演じるという華々しいデビューを果たしているが、個性的なルックスとわざとらしいクサい演技は当時あまり受け入れられなかったのか、彼の人気が沸騰する気配はなかった。

そんな彼の名を一躍有名にしたのは人気コミックが原作のVシネマ『静かなるドン』だった。昼は下着デザイナーで裏の顔はヤクザの親分というキャラクター設定とコミックに描かれた主人公がクセのある彼にピッタリのイメージだったためか、Vシネは大人気となった。

その後も数多くの映画やドラマに出演しているが、多くは脇役だ。ただその名演技で主役を食ってしまうこともたびたび。

「現代劇、時代劇を問わずシリアスドラマにはぜひ起用したい脇役候補のNo.1ですね。見ての通り個性が強く、加えて濃い~演技で常に主役を食ってしまうから、好きだけど共演はしたくないという俳優さんもいますよ」(テレビ局プロデューサー)

今回の『半沢』では“大仰でクサイ芝居”に加えて“歌舞伎風味”と“顔芸”まで加わって『香川ワールド』全開となっていて、すでに主役の堺雅人を食っている感がある。大和田取締役が最後はどうなるのか気になっている視聴者は多い。

見事に憎まれ役を演じている香川だが、そんな香川のイメージを覆したのがʼ16年から不定期で放送されている、香川の冠番組『香川照之の昆虫すごいぜ』(Eテレ)。カマキリの着ぐるみを着て「カマキリ先生」と名乗り、昆虫の生態について熱く語っている。

「俳優生活苦節28年、やっと本当にやりたい仕事ができました!」
「草むらを見るとムラムラする」
「今日の衣装はカマキリの“メス”なので、私のことは『お母さん』と呼びなさい」

などとユーモアあふれる台詞が飛び出し、香川を見る視聴者の目が変わったのだ。ネットでも話題になり、子どもだけでなく、ママたちのファンも急増した。

今回の『半沢』では憎たらしいながらも、印象に残る台詞や振り付けでコミカルな味も出していて『おじキュン』要素も。

「前作では半沢の父親の仇でもあり、そして陰湿極まりない上司という描かれ方がされていた大和田ですが、今作では滑稽ともとれる演技が目立ち、陰湿さが若干薄くなりました。逆に彼の人間味が出ている感じがします。

第2話で2人が再会したシーンでは左遷の危機に追いやられた半沢に“お、し、ま、い、DEATH!”と言い放ったことや、第6話で“銀、行、沈……没!”と言ってソファーにドスンと腰を落としたのには思わず笑ってしまいました。第9話で箕部幹事長が半沢へ土下座を要求したシーンで、大和田は“半沢〜、お詫びするんだ!”と土下座を強要していたものの、その目には涙を浮かべ、辛そうな表情だったことがSNS上で話題になっています。

これは香川さんが“大和田暁”を演じたからこそ。憎まれ役のはずだった大和田が、ここまで人気になるとは原作者の池井戸潤さんも予想しなかったと思います」(同・テレビ局プロデューサー)

また香川は同ドラマの放送に先立ち、精力的に番宣をこなしたが、香川のトークの面白さが評判になり、テレビ局のプロデューサーからバラエティー番組に出てもらいたいという声が多数出ているという。

香川の快進撃はまだまだ続きそうだ。

  • 取材・文佐々木博之(芸能ジャーナリスト)

    宮城県仙台市出身。31歳の時にFRIDAYの取材記者になる。FRIDAY時代には数々のスクープを報じ、その後も週刊誌を中心に活躍。現在はコメンテーターとしてもテレビやラジオに出演中

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