最恐女子レスラー・世志琥が語る「スイーツとプロレス」の共通点
「プロレスとスイーツには、共通点があるんですよ。プロレスでは技のタイミングなどをミスすると、お客さんがノリにくくなるんです。ちょっとの差で技の見え方が見違えるほど変わります。
その点、スイーツもちょっとの目分量を間違えただけで、膨らみ方が変わり、見た目が思っていた通りにならないことがあります。両方とも、実はすごく繊細な作業なんです。私は小さい時から、細かい作業が好きだったので、スイーツとプロレスはそこでつながっているなと思います」
そう真剣な面持ちで話すのは、今、SNSで話題沸騰中の悪役・最恐などの異名を持つ女子プロレスラー・世志琥である。女子プロレス団体スターダムの1期生としてデビュー。‘17年に開催されたキャリア7年未満の選手による大会で見事優勝し、同世代の女子プロレスラー内でトップに躍り出た。

そんな彼女が’20年4月頃から始めたTikTokで、自作した『ディズニーチュロス』の動画がバズり、フォロワー数が約37万人まで急上昇(2020年10月20日現在)。今やプロレスファンのみならず注目を集めている。
気性が荒そうな普段の印象からは想像できないようなかわいらしいスイーツを作ってTikTokにアップしたところ、最高で63万いいねを獲得したのだ。スイーツ作りは最近になって始めたことではなく、小さい頃に作った家庭料理がきっかけになったそうだ。
「小学3年生の頃に、初めて卵焼きを作ったんです。お母さんが料理大好きだったので、それをマネてました。卵焼きを先生に持って行ってほめてもらい、嬉しくなってまた料理を作って持って行く……、ということを繰り返してました。
本格的にスイーツ作りを始めたのは、中学生の頃からです。ショートケーキとか惣菜パンなどを作っていましたね。料理もスイーツも私は、誰かに喜んでもらいたいから、作っているんです」
そのころから、いわゆる“不良の道”を歩み始めた世志琥。ヤンキーとして荒れた日々を過ごす中でも、料理からは離れることができなかったという。
「中学生の時は学校に行かず、私の家が溜まり場になっていました。先輩や同期の不良がたむろしているので、誰かが“お腹空いた〜”と言い始めたら、私がチャーハンやクランキーチョコレートを作って振る舞っていました。みんな“おいしい”と言ってくれていましたね。
仲の良い先輩と毎日一緒に居すぎて、やることもなくなったんでしょうね。ある日、“暇だから、うどんを粉から作ろう”となったんです。生地を天井にぶつけながら、うどんの粉をこねていましたね(笑)。今思い出したら、なんてバカなことしてるんだろうと思いますが、グレていても、料理をすることは変わらず好きだったんです」

世志琥は生粋の料理好きだということが分かったが、その中でもスイーツ作りにかける情熱は強い。創作意欲はかなり高いようで、今までに数え切れないぐらいたくさんのお菓子を作っているという。
「チョコレートケーキからショートケーキまで、ケーキ類はほぼ全部クリアしました。マカロンも作ったんです。マカロンを作る人なんてなかなかいないと思うんですけど、私は基本レシピが分かれば、なんでも作ってしまうタイプなので。あとは、和菓子も作りましたね。大福とか!」
スイーツ作りの腕前はプロ級の彼女だが、忘れてはいけないのが、本業はプロレスラーだということだ。実は、試合前にとあるお菓子を食べることでメンタル面を安定させているのだという。
「試合前に緊張をほぐすために、ルーティンとしてシュークリームを食べるようにしていました(笑)。どんなルーティンやねんと思うかもしれないんですけど、シュークリームはコンビニがあれば、どこでも買えるスイーツなので、私の中ではしっくり来ているんです」
一見するとなんの関係もないように見えるプロレスとスイーツだが、スイーツは彼女のパワーの源にもなっているようだ。今後、作ってみたいお菓子について尋ねると、終始楽しそうな表情を浮かべて、構想を話してくれた。その顔は悪役を演じる試合中とは打って変わって、夢見る女の子のようだ。
「クリームソーダのアイスをカラフルなものにして、デコるとか。最近だと、タピオカの次に、バナナジュースが人気急上昇中なので、崩していないバナナを飾りにして、映えるバナナジュースにしてみたりするのもいいかも!
あとは、私の髪色が黄色と赤なので、バナナジュースの下半分を食用色素で赤にして、世志琥ヘアカラーのバナナジュース”をプロデュースしたいなとも考えています。
作ったスイーツを誰かにあげるか、ですか? 友達や同僚だったら渡せますね。ただ、好きな男性がいても、恥ずかしくて、気軽に自分が作ったスイーツを渡すことができないんですよね…… (笑)」
そう顔を赤らめながら話す彼女。リングの上では見ることができない意外な一面を、これからもお菓子作りを通じて見せてくれることだろう。

取材・文:村嶋章紀