竹内結子さんの死が、人々の心に大きな不安を与える背景
コロナ禍の中、人気俳優の三浦春馬さん(享年30)、芦名星さん(享年36)、そして9月27日には国民的女優であった竹内結子さん(享年40)も自ら命を絶った。3名とも一様に仕事は順調で、その心の奥底こそ分からないものの、傍目には普通に振舞っていただけに、突然の出来事に誰もが衝撃を受けている。
その点に関しては竹内さんも同じだが、三浦さん、芦名さんのときと決定的に違うのは、その理由について解明できないことだ。というのも三浦さんと芦名さんは、辛い心情を表す言葉を周囲に漏らしたり、手帳に書き留めたり、また明らかに酒量が増えていたなど、ある程度、理由を考えることが可能だった。が、竹内さんに関しては、そうではない。
そのため人々は、ショックとともに、何とも言えない不安も抱いている印象を受ける。ネット上にも、「憶測が良くないからと何も知ることが出来なければ、何もなかったことになるだろう」といったコメントが目立つ。
そこで心理カウンセラーをよく取材するライターに、この憶測心理について聞いてみた。
「たしかに三浦春馬さんのときは様々な憶測情報がもたらされたため、皆、自分なりに『これが理由ではないか』と結論づけて、自分を安心させられたところがあった気がします。
でも竹内さんの場合、本当に情報がありません。仕事は順調そのもの、新しい家族も得て幸せいっぱいに見えた。性格もカラッとしてみえるので、自殺にはもっとも縁遠い印象だったという声が多い。また亡くなる直前まで家族と一緒に食事をしていたなど、その行動はあまりにも突発的でした。産後うつ説があるものの、これを裏づける情報も特にもたらされていません」
例年とは違う自殺傾向

さらに人々が憶測できないことについて、こう続ける。
「憶測ができないならできないで、人は不安になるものです。なぜなら『自分には起こらないだろう』と思えなくなってしまうからです」
厚生労働省が作成した「自殺の概況」データを見ると、例年、自殺者数がもっとも増えるのは3月か5月。それ以降は上下しながらもやや減っていく傾向にある。ところが今年に限っては7、8月の自殺者数がもっとも多く、5月以降も減る傾向がないなど、例年とは違うグラフ線をたどっている。
前出のライターは言う。
「ただし例年より劇的に自殺者数が増えているかといったら、そういうわけではありません。イタズラに恐れる必要はないかもしれませんが、例年と傾向が違うのは確か。直視するにはあまりに辛い出来事ですが、自分自身、また周囲の人たちへのケアを怠らないでほしいと思います」
明確な不安要素がなくても、注意しなければならない……。竹内さんの死は、そんな警鐘を私たちに鳴らしている。
取材・文:奈々子
'72年生まれ。愛媛県出身。放送局勤務を経てフリーライターに。タレントのインタビュー、流行事象の分析記事を専門としており、連ドラ、話題の邦画のチェックは欠かさない。雑誌業界では有名な美人ライター
撮影:西 圭介