免許更新手続きの現場で解消しない「超絶密」の実態

大阪では「完全予約制」が確立しているのだが……。

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朝7時台の神奈川県免許試験場の様子(2枚とも読者提供)

警察庁は9月29日、菅内閣が推進する行政のデジタル化や新型コロナウイルス対策の一環としで違反歴などがないなどの「優良運転者」が運転免許を更新する際の講習のオンライン化する方針を固めた。しかし、これまで運転免許試験場の密が今もなお続く現状、その混雑に伴って、免許更新希望者が当日に手続きができないなどの現象もおこっている。免許更新手続きの現状を追った。

朝7時半にはできていた長蛇の列

写真は9月27日、神奈川県の運転免許試験場の朝の様子だ。午前7時30分すぎでこの混雑ぶり。神奈川のみならず、大都市圏を中心に多くの地域で、いまだ運転免許更新の手続きが混雑しているのが現実だ。神奈川県運転免許試験場に更新のため9月27日に訪れた30代の女性Aさんはこう嘆く。

「本来は5月末が有効期限でしたが、延長で7月末になったので、7月終わりの日曜日に来ましたが、講習室に入る上限を超えたとのことで、また延長で9月30日までになりました。仕事の関係で日曜日にしか更新手続きに来られません。今日こそ更新できるのか…不安です」

運転免許試験場で「密」がいまだに解消されないのはそもそもなぜなのか。新型コロナの感染拡大の原因となる「三密」を避けるため、緊急事態宣言が発令された4月以降、全国の警察署で1-2か月の間、免許更新手続きを休止した。

6月にはほとんどの地域で更新手続きが(平日のみ、時間限定などの条件はあるにせよ)再開されたわけだが、更新手続きを再開して3-4カ月経過する今も混雑が続くのは、講習を受ける人数が限定されているからである。そこで、9月に3度目の延長措置が取られることになった。

警視庁の公式サイト、「運転免許証の有効期間の延長(再延長)手続き」によると、「有効期間が令和2年12月28日までの方、又はすでに延長手続きを行っていて、延長後の有効期間が令和2年12月28日までの方」が3カ月延長が可能となり、最長で令和3年3月28日までに免許更新手続きを終了させればいい。ただ、有効期間が令和2年11月1日の人の場合、延長手続きを済ませた上で、令和3年2月1日までに済ませなければいけない。

全国の警察署で同様の措置が取られている。ちなみに、前出のAさんは3度目の延長措置を全く知らなかった。

完全予約制を導入した大阪の状況

いまだに混雑が解消されない大都市圏の中で、大阪だけは混雑とは無縁だ。7月1日より「完全予約制」を導入しているからである。基本はオンラインで予約をするのだが、インターネットの環境がない人、パソコンやスマートフォンが使えない人には電話での予約も可能としている。

写真は8月下旬の大阪府光明池運転免許試験場の様子だ。完全予約制のため長い列もなく、開門を待つ人が数名いる程度だ。

現在申し込んでも、更新ができるのは数週間先という状況となるようだが、それでも2-3時間並んで結局、受付終了で更新できず延長申請…となるよりははるかにいい。大阪府警の担当者は、完全予約制導入の経緯をこう明かす。

「今回、コロナの関係で免許更新に関して色々ありましたので、府民の皆さんにとってどういう方法が一番良いのかを職員で検討しました。受付の列に並ぶ際や講習の時などに大人数が集まって密を作らないためにはどうしたらいいか? その結果、予約システムの検討を始め、システムの構築が早く可能となり、導入に至りました。インターネットが使えない人は予約相談ダイヤルで受け付けています。ただし電話は平日の9-17時に限定しており、台数にも限りがありますので、24時間対応できるオンライン予約をお勧めしています」

とはいえ、免許更新のハガキにはとても小さな字で完全予約制になったことが記されているため、気づかず、いつも通り試験場に足を運ぶ人も少なくない。当然、行ってみたけど免許更新はできず、日を改めて予約を取り直し、再度、試験場に足を運ぶ。当局は「伝えた」つもりでも、免許更新の該当者には「伝わっていない」ことが多くみられる。

大阪の免許試験場の様子(2枚とも読者提供)

免許試験場の混雑を生み出さないための発信方法は、各自治体の判断でやり方は少しずつ違う。千葉県警では免許更新の混雑状況をSNSで午前と午後に分けて発信。一方で、埼玉県や愛知県では、郵送による延長手続き申請を強く推奨している。東京都の管轄である警視庁は公式ホームページ上で随時、「各更新会場の混雑状況」を公表。過去数日の状況を日ごとに示し、混雑した時間帯、余裕のある時間帯を示し、更新手続きをする時間帯の参考にしてもらおうという意図は見えるが、リアルタイムの情報ではない。

たとえば、警視庁は最新の9月23日~27日の状況を9月28日に公表した。内容をまとめると以下のようになる。

◆運転免許試験場(府中・鮫洲・江東)
受付を断った場所はないが、大変混雑。15:00以降は余裕がある。

◆運転免許更新センター(新宿・神田)
新宿は、優良運転者の受付を23日は14:00、24日は15:07、25日は14:30に終了

◆指定警察署(平日および優良運転者のみ)
管内12か所の指定警察署はどこも混雑。特に板橋署と立川署は一日中、混雑し、板橋署では23日が12:00、24日が14:50、25日が13:50に受付を終了。

警視庁の公式サイトはこちら

警視庁の公式サイトに掲載された東京都の各更新解錠の混雑状況。9月23日~27日の情報は28日に更新された

写真でも紹介した神奈川県は人口920万人超でありながら、東京に2か所ある免許更新センターも存在せず、運転免許試験場が二俣川一か所にしかないため混雑はすさまじい。「密」を避ける目的で、講習が受講できる人数を、午前200名、午後200名に制限しているためで、それを超えれば更新不可となり、有効期限の再延長を推奨されるからだ。

なぜ神奈川は一か所しかなく、大阪府のように予約制にしないのか? 免許試験場の関係者はこう明かす。

「新たに試験場を作る代わりに、現在の運転試験場を2年前に立て替えて規模を拡大しました。でも、結局、『3密』を避けるため講習人数を半分以下に絞っているので混雑が続きますね。予約制にしない理由は私たちも詳しくはわかりませんが、すでに期限を延長している方に対する周知が難しいですし、予約制を知らずに来場する人もいるでしょう。あまりにも人数が多いので対応が難しいと思います」

前出のAさんのように、仕事のない日曜日に免許更新手続きを希望する人が多いため、二俣川の運転免許試験場は、日曜日は毎週午前7時半頃には駐車場が満車となり、臨時駐車場が開放されるという。

仕事の合間を縫って、免許更新手続きはしたい。でもいざ現地に行っても、講習を受けられる保証はない。そんな人たちが少しでも無駄なく手続きを進めるためのお勧めの方法がある。

① 有効期限が12月28日までの人は、3か月延長が可能なので延長申請をする。最寄りの警察署に申し出て延長シールを免許証の裏に貼ってもらうのが良い。郵送も可能だが、シールが返送されるまで数週間かかるため、有効期限期日の1か月前までに郵送を済ませるのがベスト。

② 混雑はどうしても避けたい人で、運転を全くしない「ペーパードライバー」は、あえて失効させる方法もある。感染症拡大防止の特別措置として失効から3年以内の再取得(もしくはコロナ感染拡大終息から1カ月以内)であれば、適性試験はあるが、技能試験や学科試験なども免除される。

(詳しくはhttps://www.keishicho.metro.tokyo.jp/menkyo/koshin/koshin/enchosochi.html)。

冒頭で紹介した、「優良運転者」の講習のオンライン化は、試験導入が来年の秋になる見通しで、本格導入はさらに先になる。その頃には新型コロナを取り巻く社会環境は今と大きく変わっていることが予想され、今回の「オンライン化導入」は遅すぎる、と言わざるを得ない。

したがってこの1~2年は大阪のように、人口が多い各自治体主導でオンラインを使った完全予約制などを導入しない限り、免許更新手続きにおける「密」は変わらない。自分の身は自分で守る情報収集が不可欠なのだ。

  • 取材・文加藤久美子

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