金正恩 強気な姿勢が一転「韓国に謝罪」の狡猾な思惑 | FRIDAYデジタル

金正恩 強気な姿勢が一転「韓国に謝罪」の狡猾な思惑

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9月に北朝鮮を襲った大型台風の被害状況をみるため被災地で指導する正恩氏。画像:KNS /KCNA /AFP /アフロ
9月に北朝鮮を襲った大型台風の被害状況をみるため被災地で指導する正恩氏。画像:KNS /KCNA /AFP /アフロ

北朝鮮で異例の事態が起きた。常に強気の態度を崩さない最高指導者・金正恩氏(36)が、韓国に謝罪したのだ。正恩氏の名前で韓国に送られて書簡には、次のように記されている。

〈我がほうの水域で不始末な事件が発生し、文在寅大統領や南側の同胞を失望させたことを大変申し訳なく思う〉

「不始末な事件」が起きたのは、9月22日のこと。韓国の海洋水産省職員が北朝鮮海域内で漂流。朝鮮人民軍兵士の尋問を受けた後に射殺された。さらに油をかけられた職員の遺体は、海上で燃やされたという。韓国の文大統領は、「いかなる理由でも容認できない」と北朝鮮を非難。これを受け北朝鮮は、25日にスグに謝った。なぜ正恩氏は、謝罪に踏み切ったのだろう。

「国内が混乱しているからですよ。新型コロナ感染拡大を恐れ国境を封鎖し、中国との交易が衰退。さらに8月、9月に大型の台風が直撃し、大規模な水害も起きています。10月10日には朝鮮労働党創建75周年の式典が予定され、逼迫した状況にもかかわらず人民の負担は増えているんです。人々の不満は相当なものでしょう。

深刻な経済を立て直すには、韓国からの援助が必要です。関係をこじらせないために、恥を忍んで謝罪したのではないでしょうか」(韓国紙記者)

外国人の命を尊重!?

別の見方もある。「ポイントは正恩体制になって外国人を殺害した初めてのケースであること」と語るのは、『デイリーNKジャパン』編集長の高英起氏だ。

「正恩氏は外国人への対応に慎重です。10年11月に、北朝鮮は韓国の延坪島(ヨンピョンド)を砲撃し、韓国軍兵士2人と民間人2人が犠牲になりました。しかし当時は、正恩氏の父・正日氏の体制です。

正恩氏が指導者になってからは、15年8月に南北境界線付近の地雷が爆破し、韓国軍兵士2人が負傷するという事件が起きました。これは、あくまでも想定外のでき事。病気などで亡くなった外国人はいますが、殺害したのは今回が初めてなんです」

正恩氏が外国人の生死に敏感なのは、「国際世論を脅威に感じているからだ」と高氏は考える。

「祖父・日成氏や父・正日氏と時代が違います。外国人を殺害すれば、国際的に大きな批判を浴びることがよくわかっているんです。倍返しに会い、経済制裁は一層強まるでしょう。そうなれば、北朝鮮は国として成り立ちません。

特に今回は、米国大統領選前のでき事です。自身に理解を示すトランプ大統領が再選すれば、南北関係が改善する可能性もある。謝罪をしたのは、事を荒立てたくないという考えからでしょう」

さらに、指導者として正恩氏の狡猾な姿勢もうかがえるという。

「正恩氏が外国人の命を大切にするのは、決して人道的な見地からではありません。むしろ打算的。政治的判断をするうえで、命の大切さなど考慮していないでしょう。

その証拠に、国内では自身の政策に反発する人間を平気で処刑します。人民は恐怖政治で統治し、外国人に対しては慎重に臨む。正恩氏は、国内外で態度を使い分けているんです」(高氏)

自国の利益のためなら、平気で頭を下げる。韓国への謝罪から、したたかな正恩氏の外交戦略が垣間みえる。

  • 写真KNS /KCNA /AFP /アフロ

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