最強将棋AI開発者が解説「藤井聡太二冠と戦っても負けない理由」

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将棋AIの名前は水に関わるものが多い。加えて、憧れと語るソフト「技巧」への敬意を込め『水匠』とした

「将棋AIがトッププロに勝つのは今や当たり前。現在、開発者たちが目指しているのは、将棋AIの世界で一番になることです」

さも当然のようにこう言ってのけるのは、将棋AI『水匠2』開発者の杉村達也(33)だ。同ソフトは、今年5月にオンライン上で行われた第30回世界コンピューター将棋選手権で優勝。藤井聡太2冠(18)のタイトル初挑戦となった棋聖戦・王位戦での解説も話題となった。

本業は弁護士だが、中学時代からプログラミングが趣味だったという杉村。弁護士として独立することを決めた’18年から本格的に将棋AIの世界へ飛び込んだ。

将棋は持ち駒を打つことができるというルール上、選択できる手は2手先で8100通り、7手先には48兆通りにも及ぶ。その中でいかに無駄な選択手を省くかが将棋AI開発の肝であり、『水匠2』の強さの秘密でもある。無駄な手を〝読まない〟ために、『水匠2』は一日5万局の自己対局を繰り返しているという。

「棋士の読みは1局面で1000手が限界と言われている。一方で『水匠2』は1秒間で6000万手を読むことができます」

棋力を数値化する「レーティング」という指標に当てはめると、『水匠2』の実力はよりわかりやすくなる。

現役棋士の中で最も高いレーティングを誇る藤井2冠が3300と言われる中、『水匠2』のレーティングは4500。1200という差は、わかりやすく言うなれば町の将棋道場に通うおじさんと名人くらいの実力差です。万が一がない……とは言いませんが、理論的には1000回対局して1回も負けるはずがありません」

将棋AIがプロ棋士よりもはるかに強くなっていることは、もはや疑いようがない。しかし、今年の棋聖戦では杉村も驚く一手が生まれた。

「藤井2冠が指した『3一銀』は『水匠2』が27手先、合計4億手読んで候補にも入れなかった手です。しかし、6億手を読むと最善手だったことがわかりました。9月22日の王将戦のリーグ戦では、羽生九段(50)が250億手読んだ結果、最善手となる一手を、たった3分で指した。『直感力』とでもいうのでしょうか。将棋AIもまだまだ完璧ではありません」

当面の目標は大会の連覇だが、より大きな夢も抱えている。それがAIと棋士の混合チームの結成だ。

「棋士に合わせた将棋AIのチューニングやデータ収集など技術協力を行うことで、どこまで棋士は成長できるのか、やってみたい。イメージとしてはF1のレーシングチーム。ドライバーとエンジニアが組んで速さを競うように、棋士と組んでどこまで行けるのか、知りたいです」

人間とAIが協力し、共に戦う。近い将来、それが棋士の常識になるのかもしれない。

’17年の電王戦で連敗を喫した佐藤天彦名人(当時)。これにより、将棋AIの実力が広く知れ渡ることに
藤井2冠は練習にも『水匠2』を使用。杉村と同じCPUまで購入し、日々研鑽を積んでいる
本誌未掲載カット 最強将棋AI『水匠2』開発者 弁護士・杉村達也氏が語る「藤井聡太2冠にも1000局やれば1000回勝てる」
本誌未掲載カット 最強将棋AI『水匠2』開発者 弁護士・杉村達也氏が語る「藤井聡太2冠にも1000局やれば1000回勝てる」

『FRIDAY』2020年10月16日号より

  • 撮影濱﨑慎治 アフロ(2~3枚目)

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