「ワーケーション」最先端の町に変身した和歌山・白浜に行ってみた

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この秋は、GoToトラベルを活用して、長期「ワーケーション」!?

仕事と休暇を同時に行う「ワーケーション」――一般的な日本人にとって、いまだ夢のようなこの働き方。菅首相が、官房長官時代、普及に取り組む考えを示したことをきっかけにて注目を集め、メディアなどを通して耳にする機会が増えてきた。 

ワーケーションとは、ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を掛け合わせた造語で、旅行先など非日常な場所で働きつつ、現地でのんびり過ごしたり観光も楽しんだりする新たな仕事スタイル。2010年代の前半、欧米から始まったとされる。

日本でも、仕事+休暇=「ワーケーション」という言葉をよく耳にするようになってきた(画像提供:和歌山県)

従来からワーケーションに取り組んできた地方自治体に加え、新型コロナウイルスによる感染拡大で「テレワーク」が推奨され始めたのと、出入国規制で訪日客の需要が落ち込んだ観光地などもワーケーションに注力し始める動きが最近よく見られる。さらに今年8月、菅義偉官房長官(当時)がワーケーションについて「新たな旅行や働き方のスタイルとして政府としても普及に取り組みたい」と明言。旅行業界からも「長期滞在型ワーケーション」がトレンドになりつつあるとの見方が出てきた。

和歌山県白浜町は国内「ワーケーション」最先端の場所 

日本におけるワーケーションの先駆け的存在なのが、和歌山県。2017年から、県全体でワーケーションのフォーラムや体験会などを実施してきた。その中で特に、白浜温泉や日本最多のパンダ飼育数を誇るアドベンチャーワールドなどがある和歌山県白浜町では、県の動きよりも先に、IT企業などの誘致に積極的に取り組んできた経緯がある。

和歌山県白浜町にある「白浜町第2ITビジネスオフィス」には4社が入居して現在満室(画像提供:白浜町)

和歌山県でワーケーションの推進に取り組む情報政策課長の桐明祐治さんによると、「2017年から全国に先駆けてワーケーションに取り組む上で、すでに多くのIT企業がサテライトオフィスを設けている白浜町の全国に誇るロケーションの良さは非常に強みと感じている」と語る。ワーケーションで一時滞在しながら仕事をしてもらうことで、白浜町の魅力を知ってもらい、誘致にもつながる可能性も期待される。

白浜町にある2つの施設には、東京都内に本社があるIT企業などが入居し、サテライトオフィスとして活用している。「白浜町第1ITオフィス」は2004年に生命保険会社の元保養所を改修して開設され、当初はなかなか定着しなかった中、2015年に開設されたセールスフォース・ドットコムの白浜サテライトオフィスが“成功例”として注目を集めた。その後「白浜町第2ITビジネスオフィス」が開設し、現在は第1、第2とも満室だ。

さらに、別の企業保養所だった施設を民間企業が改修した第3のITビジネスオフィス「ANCHOR(アンカー)」が、2020年11月に開設予定。1社の入居がすでに決まっている。

白浜町のビジネス施設は満室、オフィス内は個性豊かなデザイン

ワーケーションで注目を集める現場をこの目で確かめようと、今年9月に白浜町を訪れた。

「白浜町第2ITビジネスオフィス」は、東京との直行便がある南紀白浜空港から車で5分。白浜の海や熊野の山々が一望できる高台に位置し、オフィスの目の前には広々とした芝生が広がっていた。

白浜町第2ITビジネスオフィスに入居する企業の1つ。オフィスごとにデザインが異なるとのこと

1階が公園の管理事務所と共有スペース、2階に4社のオフィスと会議室があり、公園内には全長2kmのフィールドアスレチックコースもあって仕事の合間にリフレッシュする環境も充実。車で5~10分も走れば、温泉やスーパーマーケット、コンビニエンスストアなどがある町のコンパクトさもメリットと感じた。

南紀白浜空港には、JALグループによる東京(羽田)からの直行便が1日3便、定期運航されている。観光でも人気ある空港

白浜と言えば、経済バブル期などは企業の保養所が多くあり、社員の企業研修や休暇などで良く訪れる場所というイメージがあった。実際、筆者も子どもの頃に何度か保養所を利用したことがある。

白浜町の総務課企画政策課の大平幸宏さんによると「最大100軒ほどあった企業が保有する保養所が現在は20軒足らずに減った。ただ白浜町は以前から、豊富な自然や観光資源をアピールしつつ企業誘致に積極的に取り組んできた」といい、特に近年、東京から駐在する社員に加えて現地採用スタッフも増え、ワーケーションの環境としてどの企業からも大変好評という。

日本でも「ワーケーション」に力を入れる地方自治体も増えている。先駆け的存在なのが和歌山県だ

また、和歌山県では、県内各地の仕事で利用できるワークスペースやワーケーションに最適な宿泊施設などをホームページで紹介するなど、主に企業と地域を結ぶサポートを行っている。

例えば、南紀白浜空港発着の「ファミリー向け3泊4日」などのモデルコースも提案して「親子ワーケーション」として大人向けに仕事場を、子どもには自然体験プログラムを紹介するなど、多様なニーズにも対応したワーケーションをアピールする。和歌山県と長野県の呼びかけで設立された「ワーケーション・アライアンス・ジャパン」(WAJ)に加盟する自治体数は、当初の60あまりから現在は100を超えたという。

和歌山県でワーケーション、実践する企業担当者にインタビュー

白浜町などでワーケーションを試験的に実施した企業担当者に話を聞いた。ITソリューション事業を行う業界大手「TIS」人事企画部の藤澤孝多さんは、東京本社で会社と社員のエンゲージメント向上や新しい働き方、健康経営などの企画を担当しつつ、昨年から和歌山県へこれまで約10回足を運んできた。

白浜町でワーケーションを実践しつつ、アドベンチャーワールドで家族と休暇も楽しむ藤澤さん(画像提供:TIS 藤澤孝多さん)

「数年前から、会社の勤務制度で時間や場所にとらわれずに柔軟に働ける制度があり、その中で2019年、和歌山県のワーケーションの取り組みを知ってから、1人、家族、社内の有志メンバーと白浜町や田辺市、和歌山県南部ほぼどの場所にも行きました。これとは別に、帰省を早めて実家がある北海道でワーケーションを行ったり、会社の拠点がある福島県会津若松市で実施したりという経験もあります」

一般的な「仕事」「休暇」に加え、さらに「地域の課題と向き合う」「社会貢献」「地域交流」も念頭に置きつつ自ら試験的にワーケーションを実践し、TISのワーケーションモデルを確立させ、社員にワーケーションという新しい働き方を広めていくため、和歌山県と試行錯誤しているとのこと。

地方へ行った時にどんな産業が栄えているか、地方の特産品やグルメを巡ったり、地元の人々とコミュニケーションが取れる場所に積極的に行ったりして情報を集めるなど心掛けているという。さらに、地域が抱える問題を農業体験から考えたり体感したりするなどし、一緒に参加したメンバーから「東京では経験できない、リアルな社会の課題に触れることができ、社会に対して自分がどう関わっていくかを真剣に考えるようになった」「地域での交流を通じ、心が豊かになった」との感想が得られたと語る。

和歌山県田辺市たなべ営業室、田辺市の地元若手経営者らと「TIS」有志メンバーが意見交換(画像提供:TIS 藤澤孝多さん)

従来から、仕事、休暇、遊びなどの境界線という概念があまりなく、仕事も真剣かつ楽しんでやるのを心掛けているという藤澤さん。「旅の良いところは、いつも自分がいる空間からかけ離れることで、新しい発見や刺激を受け、いろいろな価値観を知って学び、人として成長できるという点だと思います」と言い、今後も引き続き社内でワーケーションを推進しつつ、地域経済の活性化にも取り組んでいきたいとの意気込みを話してくれた。

Airbnbでワーケーション体験、仕事しつつ海を眺めてリフレッシュ

今回、ワーケーションを実体験すべく、筆者も白浜町に滞在した。滞在先として、民泊仲介大手の「Airbnb」(エアビーアンドビー)を利用した。

滞在先のコテージ1階から見えた太平洋の海。晴れた日には青空もきれいで爽快な気分に!

その滞在先は、南紀白浜空港から車で5分の場所にあるオーシャンビューのコテージ。駐車スペースは2台分あり、1階にリビングと風呂・洗面所・トイレそして和室、2階にベッドルーム3室と洗面所・トイレなどがあって、まるで1軒家の我が家のような雰囲気だった。さらに、バーベキューができる裏庭、ドッグランもできてコテージ内に犬専用のゲージも完備だったので、大人数での滞在やペット好きには最適だと感じた。

白浜のAirbnb滞在先でワーケーションを行う筆者

ワーケーションとしては、Wi-Fiが常時使えてフレッツ光でネット速度も十分、電源も多くて使い勝手良く、また部屋数が多いので他の人に気を使うのも不要、なにより眺めが良くて周りも閑静な場所で、仕事に集中することができた。車があればすぐに観光スポットやスーパーなどに買い物へ行くにも便利で、グループでの合宿にもよい、長期滞在にも適していると思った。

この施設のホストに、ワーケーション利用について聞いたところ「白浜は関西からの観光客が多く、特にGWや夏のシーズンは大変賑わいます。一方、オフシーズンや平日は空室が目立つのが現状です。ワ―ケーションを活用することで、安定した需要に期待します」とのことだった。

白浜やその周辺に関する観光パンフレットなども、滞在先に数多く置いてあった

Airbnbで国内でも増えている「長期滞在型ワーケーション」

民泊仲介大手のAirbnbは、日本国内における新たな旅行のトレンドとして 「近場の国内」「3密を避ける」「長期滞在型ワーケーション」であると、今年6月に発表している。

そのAirbnbの広報担当者は「予約時の検索で、Wi-Fi/キッチン付き/駐車場あり/洗濯機ありなどが多く、特に、一軒家丸貸しやマンション・アパートの貸し切りタイプの人気が高まっている。テレワーク(ワーケーション)目的なのか、28日以上滞在するケースも見られ、長期割引をするホストも出てきている」と話す。

千葉県茂原市にあるAirbnbで人気の古民家。ジム、プール、サウナ付きでバーベキューも可能(画像提供:Airbnb)

2020年秋の国内人気旅行先ランキングでは、都会の喧騒を離れた山の近く、海の近くが人気の傾向とし、長野県白馬村と千葉県茂原市が1位、以下、静岡市、千葉県いすみ市、千葉市、栃木県那須塩原市、東京都八王子市、山梨県富士河口湖町などがランクインした。首都圏から比較的近い上、自然が多くて環境はガラリと変わる。

実際、パソコンとインターネットがあれば仕事ができる業種は多くある。仕事は会社でするものという固定概念が、このコロナ禍を機に変わりつつある。旅行は心身をリフレッシュさせ、マンネリ打破やストレス軽減にもつながる。ワーケーションが自らのライフスタイル、そして日本の地方を変えていく力を持っている。 

■記事中の情報、データは2020年9月●日現在のものです。

Wakayama Workation Project(和歌山県ワーケーションプロジェクト)のHPはコチラ

シカマアキさんのウェブサイトはコチラ 

  • 文・写真Aki Shikama / シカマアキ

    旅行ジャーナリスト&フォトグラファー。飛行機・空港を中心に旅行関連の取材、執筆、撮影などを行う。国内全都道府県、海外約40ヶ国・地域を歴訪。ニコンカレッジ講師。元全国紙記者。

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