夢の乗り物が現実に「空飛ぶクルマ」が日本の交通を変える日 | FRIDAYデジタル

夢の乗り物が現実に「空飛ぶクルマ」が日本の交通を変える日

トヨタ自動車をやめて、独立。6年かけて、有人飛行に成功

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空飛ぶクルマの開発は、国際的な競争が激化している。「強みの一つはコンパクトさ。乗用車2台分の駐車スペースがあれば発着できます」(福澤氏)
空飛ぶクルマの開発は、国際的な競争が激化している。「強みの一つはコンパクトさ。乗用車2台分の駐車スペースがあれば発着できます」(福澤氏)

「未来の乗り物」を作っている施設は、愛知県豊田市足助(あすけ)地区の曲がりくねった山道を越えた先にあった。プレハブ小屋や仮設式のトイレが並ぶその場所は、建設現場の事務所といった風情(ふぜい)で、お世辞にも最先端の施設には見えない。だが、駐車場には乗用車と並んで、空飛ぶクルマ「SD−03」が停められていた。

8月25日、同機は人を乗せて2mの高さまで浮上し、時速4㎞で屋内試験場を4分間旋回。日本で初めて公開の場で、有人飛行試験を成功させてみせた。

同機を開発した「SkyDrive」代表の福澤知浩氏(33)がこう話す。

「人が乗って飛べるところまで開発が進んだ、という手応えは感じています。ただ、課題は山積みです。雨や風の日に安定して飛ばすには、まだまだ改善の余地がある。事業としてスタートするには、ボーイングといった旅客機メーカーと同じレベルの安全性が求められます。’23年度に大阪湾岸でエアタクシーのサービス事業を開始すると発表していますので、3年かけて安全性を高めていきます」 

もともと福澤氏は世界最大級の自動車メーカー、トヨタ自動車に勤めていた。子供の頃の将来の夢は「サラリーマン」。夢を叶えたはずなのに、何が福澤氏を独立へと駆り立てたのか。

「大企業とベンチャーだと、自由度がまったく違うんです。たとえば、試験をするにしても、大企業ではたまたま来た人がケガをしないように何重にも柵で囲う。柵で囲うと外から見えないので、試験の様子を確認するために、最先端のカメラを設置する。万が一、人が柵をよじ登ったときのために警報機をつける。このように、一つの試験をやるだけで、時間もおカネもかかるんです。

だったら、少ないけれども信頼できるメンバーで、自分たちの責任でどんどん試験を重ねたほうがいい。そう考えて独立しました」

順風満帆だったわけではない。6年前に開発を始めてから、資金繰りに苦しんだり、研究が進まなかったりと何度も危機に直面してきた。しかし、「本気で空飛ぶクルマを作りたい」。その一心で、今回の有人飛行試験にまでこぎつけた。

「この施設まで山道を自動車で15分くらい走ったと思いますが、直線距離だと300mくらいしかありません。空飛ぶクルマなら2分で行ける。将来はスマホで呼び出すと、空飛ぶクルマが自動でやってきて、乗ったら勝手に目的地まで連れて行ってくれる――そんなSF映画のような社会を実現したいですね。ものすごく遠い話のように聞こえますが、大雑把に言えば、空飛ぶクルマと自動運転の2つの技術が完成すれば実現可能です」

ライト兄弟が初めて飛行機を飛ばしたのが、1903年。それから100年で飛行機は人類社会に欠かせないモビリティになった。最後に聞いた。100年後には空飛ぶクルマが疾走する映画『ブレードランナー』の世界がやってくる?

「30年後には今で言うコンパクトカー、いや自転車くらい気軽な乗り物になるんじゃないですか」

人命に関わるため、安全性に最大限の配慮をしている。4セットのプロペラのうち、1つが止まっても安全に着陸できる
人命に関わるため、安全性に最大限の配慮をしている。4セットのプロペラのうち、1つが止まっても安全に着陸できる

『FRIDAY』2020年10月16日号より

  • 撮影吉田尚弘

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