コロナで2週間軟禁…日本人社長が明かす「中国ホテル隔離」体験記 | FRIDAYデジタル

コロナで2週間軟禁…日本人社長が明かす「中国ホテル隔離」体験記

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M氏が隔離された部屋の内部。マッサージチェアや作業机もあり快適そうだ(M氏撮影)
M氏が隔離された部屋の内部。マッサージチェアや作業机もあり快適そうだ(M氏撮影)

「部屋から出られず人と接しないことが、こんなにツラいとは思っていませんでした。毎食配られる弁当も、脂っぽい料理ばかり。辟易してしまいます」

大手電子部品メーカーの中国現地法人で、社長を務めるM氏(57)が語る。

新型コロナウイルス感染拡大により制限されていた海外への渡航が、徐々に解除されている。日本から中国南部の経済都市・深圳(シンセン)への航空便も、8月から週1便が運行。M氏も9月27日に8ヵ月ぶりに、現地法人のある深圳へ戻ることになった。だが中国では入国後、2週間ホテルで待機することが義務づけられている。日本ではあまり知られていない隔離生活の一部始終を、M氏が振り返る。

「深圳空港に着いたのは、夜7時ごろです。驚いたのは、コロナ対応の徹底ぶりでした。飛行機を降りると、まず問診表への回答を求められ、体温や血圧を測定。PCR検査を受けます。飛行機には300人ほど乗っていましたが(日本人は約2割)、これらの検査を20人ごとに分かれて受けるんです。前のグループが終わるまで、次のグループはイスに座って待機。私は30分ほど待たされました。

検査後に入国審査を受けると、荷物の受け取りです。待合室に通され、モニターに自分の名前が表示されると別室の荷物をピックアップします。“密”を避けるための対応でしょうが、ここでも50分ほど待たされました」

チェックインまで車内で1時間以上待機

ホテルで提供された朝食。朝から焼きそばにおかゆに玉子というメニューだ
ホテルで提供された朝食。朝から焼きそばにおかゆに玉子というメニューだ

待機場所のホテルまでは、バスで移動する。1台の大型バスに乗るのは20人ほど。これも、濃厚接触を避けるための処置だろう。M氏は、車内でも超時間待たされることになる。

「ホテルに着いたのは、出発して15分ほどでした。チェックインは、到着したバスの乗客ごとに行う仕組みです。先に着いた乗客のチェックインが終わるまで、後続の客はバスの中で待機。私は、車内に1時間以上いるハメになりました。

ようやく順番が回ってくると、今度は荷物の検査です。ホテルスタッフは、『スーツケースを開け中身をすべて見せろ』と言う。私は、日本から持ってきた紙パックの焼酎を『持ち込めない』と注意されました。ただ酒がないと夜やることがないと思い、『中国語がわからない』とアピール。なんとか切り抜けました……。タバコを没収された人もいましたね。結局、部屋に入ったのは夜11時半ごろ。クタクタで、持ち込んだカップ麺を食べスグに寝ました」

部屋の広さは9畳ほど。ベッドやトイレも清潔で、生活に支障はなかった。うんざりしたのが、毎食の弁当だという。

「朝は8時、昼は12時、夜は6時過ぎに弁当が配られます。定刻になるとスタッフが部屋のドアをノックし、開けると小さいなテーブルに弁当が置いてあるんです。ただ、脂っこい……。朝は焼きそば、昼と夜はご飯に焼肉などのおかずが3~4品というメニューでした(写真参照)。毎日同じような中身です。3~4日で飽きてしまい、半分は残していました」

昼食や夕食は肉中心。野菜も油で炒めてある
昼食や夕食は肉中心。野菜も油で炒めてある

毎朝7時ごろ起きて、夜12時に寝る生活。当初はリモートで仕事をしていたが、10月1日から国慶節(中国の大型連休)が始まり、ほとんどやることがなくなってしまった。楽しみはネットで『半沢直樹』などのドラマを見、宮部みゆきの小説を読むことぐらいだったという。

「窓からの風景も、空港が見えるだけ。部屋から出られず、話す相手もいません。唯一、人と接するのが午前と午後一日2回行われる体温測定などの検査です。完全防護服の衛生局の人間と二言三言交わすのが、ささやかな息抜きでした。

洗濯も自分でやります。と言ってもシャワールームで手洗いしての、部屋干しですが……。運動不足を補うために、ラジオ体操なようなことも毎日やっていましたね。配給される飲み物は、ミネラルウォーターだけ。せめてインスタンのコーヒーを持って行けば良かったと後悔しました」

10月11日に、2週間におよぶ隔離生活を終えるM氏。ホテルを出たら、日本料理店でさっぱりした食事をとり、冷たいビールを飲みたいと話す。

「ツラい日々でしたが、貴重な体験でした。学んだこともあります。中国のコロナ対策の厳格ぶりです。日本では、海外から戻ってきた人に2週間の自宅待機などが求められます。しかし自宅いたら、コンビニぐらい行きたくなるでしょう。対応のゆるさを感じますね。

中国では外国人も中国人も、必ずホテルでの隔離生活を強いられる。新型コロナが中国では収束しつつあると言われますが、体験者としてうなずける部分があります」

海外からの渡航者や帰国者に、精神的苦痛を強いる隔離生活。だがコロナ感染拡大を防ぐために、一定の効果をあげているのは間違いなさそうだ。

M氏が3〜4日で飽きてしまったという食事。メニューにバリエーションがない
M氏が3〜4日で飽きてしまったという食事。メニューにバリエーションがない
隔離生活中のM氏。慶應義塾大学を卒業し現在の会社に入社した
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