ラランド・サーヤ コロナ禍で注目の「兼業の星」が示す新スタンス | FRIDAYデジタル

ラランド・サーヤ コロナ禍で注目の「兼業の星」が示す新スタンス

「芸人像」をアップデートする姿勢が時代にフィット。大ブレイク中のEXIT兼近大樹と共通する部分があってーー。

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SNSを積極的に活用。Twitterではメインで運用するアカウントのほかに、美容専用のアカウントを立ち上げており、女性人気も高い(サーヤ公式Instagramより)
SNSを積極的に活用。Twitterではメインで運用するアカウントのほかに、美容専用のアカウントを立ち上げており、女性人気も高い(サーヤ公式Instagramより)

テレビ、ラジオ、雑誌で露出急増

これまで「アマチュア」「フリー」「港区OL」「二刀流」……異色の存在としてカテゴライズされてばかりだったラランド・サーヤの言動がコロナ禍の今、注目を集めている。

ラランドは昨年の『M-1グランプリ』準決勝進出と敗者復活戦での奮闘が注目を集めて徐々にメディア露出が増え、9月19日の単独ライブ『祝電』も大成功。さらに9月29日から冠ラジオ番組『ラランド・ツキの兎』(TBSラジオ)がスタートしたほか、サーヤ個人でも6日放送の『セブンルール』(フジテレビ系)、7日発売の雑誌『CREA』(文藝春秋)でフィーチャーされるなど、一気にブレイクしそうな兆しを見せている。

昨年末から今春にかけては、前述した「アマチュア」「フリー」「港区OL」「二刀流」ばかりが話題になっていたが、このところスポットが当てられているのはサーヤのパーソナリティ。これまでの芸人像とは一線を画す言動とスタンスは、時代に合うものであり、さらにコロナ禍にもフィットしている。

サーヤのどこが時代に合い、どんな可能性が考えられるのか。そして業界内で「トークのスタンスが似ている」と噂されるEXIT・兼近大樹との共通点についてもふれていく。

『アメトーーク!』で業界評価がアップ

まずサーヤの言動とスタンスで、特筆すべきところを挙げていこう。

・プロやアマチュア、芸能事務所やフリーなどの枠にこだわらない。
・「お笑い一本で行くのが当然で、それが芸人本来の姿」という風潮を否定。
・ブスイジリ、強制告白など、男性目線の古い笑いに苦言を呈す。
・「女芸人がファッションやトレンドなどを語るな」という声を無視。
・男女コンビに多い女性がモンスターキャラ設定や、恋愛コントはやらない。

サーヤが「芸能界やテレビ業界にはびこる悪しき価値観や慣習を否定している」ことがわかるだろう。しかし、本人の感覚としては「トガっている」のではなく、単に「おかしい」と感じたことを「おかしい」と言っているだけ。しかも、世間の人々に多様性の尊重が広まりつつあるタイミングだけに、これまでの価値観や慣習をハッキリ否定しても不快感を与えない。

とりわけ9月10日放送の『アメトーーク!』(テレビ朝日系)では、ブスイジリや身体を張った芸を得意とするガンバレルーヤ・よしことのトークバトルが反響を集めた。強めの言動でよしこを追い詰めたサーヤを見て、ネット上には不満の声が飛び交っていたが、これはプロデューサーの意向に沿ったものにほかならない。まだ24歳の若手で、フリーの芸人ながら、あえて悪役を引き受けて、よしこの持ち味を引き出し、番組のハイライトを作ったのだから、業界内の評価は上がって当然と言える。

実際、サーヤのような視点からのコメントは、既存芸人の逆張りとなってトークバトルの構図を生み出し、盛り上がりにつながりやすい。さらに各局はサーヤを起用することで、「テレビも変わりはじめている」というポジティブな印象を与えられる。その上、フリーの若手ならギャラが安く、若年層を呼び寄せられるのだから使わない手はないはずだ。

コロナ禍が「兼業」の正当性を立証

さらにサーヤは、これまで何度となく、「型にはまらず、マルチな活動をしていきたい」とコメントしてきた。漫才やコントなどのネタ番組はもちろん、トーク番組、ドラマや映画、音楽の番組やライブ、情報番組やワイドショーなど、性別の枠にすらとらわれないサーヤなら、何でも挑んでいくのだろう。

コロナ禍ではからずも、芸人とOLというサーヤの「兼業」にスポットが当てられた。これまでは芸人に限らず「専門性のある仕事は1つに集中するべき」という考え方が大勢を占めていたが、緊急事態宣言などで働けない状況が続いたことで、兼業の正当性を立証。サーヤのケースで言えば、「稼げる仕事を持っていたことで、芸人としての仕事が消えても持ちこたえられる」「だから本気で芸人を続けていくためには、OLとして稼ぐことが重要」という生き方が肯定されたのだ。

世間でも、「仕事が休みになって収入が減ったり、テレワークが続いて時間的な余裕ができたりした人々の間で副業を探す人が増えている」という。サーヤは「中・高・大と私立に通わせてもらってとんでもないお金がかかった恩義がある」という理由から、芸能事務所からのオファーを断って兼業を決断したそうだが、コロナ禍が先見性の高さを証明する形となった。

ここまで挙げてきた「古い笑いに“NO”を言える」「自分らしさと自由を大切にする」「枠を決めずマルチな活動を好む」ところはEXIT・兼近大樹と似ている。さらに言えば、「バッシングを受けやすい」「ビジュアルのファンが多い」「芸能人より一般人に近い感覚の持ち主」という点も近い。だからこそサーヤは、きっかけさえあれば、兼近と同等レベルのブレイクが可能ではないか。

『M-1』決勝進出で大ブレイクか

サーヤは9月29日放送の『ものまねグランプリ』(日本テレビ系)で、いきものがかり・吉岡聖恵、mihimaru GT・hiroko、Every Little Thing・持田香織のモノマネを披露。ただ得意なモノマネを見せるだけでなく、「ラランドと同じ男女ユニット」という共通点を生かしたチョイスであり、器用さを感じさせた。

また、9月14日には『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』(テレビ朝日系)にロザン宇治原、カズレーザー、伊集院光らに混じって「インテリ芸人軍団」のメンバーとして出演。現在のバラエティでは重用されやすいクイズプレイヤーとしての可能性も示した。

これらの活躍によって、つい最近まで続いていた「素人が出てくるな」「趣味のクセに」などの批判が減ったことは間違いないが、「まだ芸とは別の理由でフィーチャーされることが多い」という課題があるのも事実。もともと学生漫才のコンテストを総なめにした実力派だけに、12月の『M-1グランプリ』で決勝進出して芸への評価を高めておきたいところだろう。

サーヤのインタビューを見ていると、「広告業界で働いているから、マス向けのネタ作りができるようになった」「どうしたらメディアに採り上げられ、バラエティに呼んでもらえるかを考えるようになった」などと兼業のメリットを話す機会が目立つ。それはすなわち、「メディアの注目を集めた上で、マスに向けたネタで笑わせられる」という自信にほかならない。事実、「優勝を狙う」と公言していることもあり、ジワジワと期待感が高まっている。

もし『M-1グランプリ』で決勝進出を果たせば、今以上に新時代の芸人として注目され、旧態依然とした業界やバラエティを変えていくだろう。たとえば、もしサーヤと兼近がMCを務める番組が放送されたら、「テレビも変わった」と言われるのではないか。

  • 木村隆志

    コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。ウェブを中心に月20本強のコラムを提供し、年間約1億PVを記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、地上波全国ネットのドラマは全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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