令和No1ドラマ『半沢直樹』にあり月9『SUITS』に無いもの | FRIDAYデジタル

令和No1ドラマ『半沢直樹』にあり月9『SUITS』に無いもの

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織田裕二主演のドラマ『SUITS/スーツ2』が低視聴率にあえいでいる……(‘10年)
織田裕二主演のドラマ『SUITS/スーツ2』が低視聴率にあえいでいる……(‘10年)

10月5日に放送された織田裕二主演の月9ドラマ『SUITS/スーツ2』(フジテレビ系)の第13話の世帯平均視聴率が7.1%と危険水域に入り、衝撃が走っている。

「このドラマは、負け知らずの敏腕弁護士・甲斐正午(織田)と経歴詐称の天才ニセ弁護士・鈴木大輔(中島裕翔)の二人が様々な訴訟に向き合い問題を解決していく、全米でメガヒットを記録したリーガルドラマ。‘18年秋期のシーズン1は全話平均視聴率10.8%と二桁視聴率を獲得。

ところが今シーズンは、初回こそ11.1%と二桁を獲ったものの、その後は7%8%台を行き来する低空飛行。シーズン2は、月9史上最長の全15話。スタッフも最終決戦の火蓋が切って落とされる13話に期待を寄せていただけに、落胆の色を隠せません」(ワイドショー関係者)

春期ドラマはコロナ禍の影響を受け、『半沢直樹』(TBS系)、『ハケンの品格』(日本テレビ系)、『BG〜身辺警護人〜』(テレビ朝日系)といった鳴り物入りの続編がいずれも初回放送を延期。そんな中、『SUITS/スーツ2』だけは第1話、第2話を強引に放送。再開の1週間前に第1話・第2話の合体特別版を放送するも世帯平均視聴率7.3%と失速。思えば、この頃から、今の惨状を予期する声もあった。

「その一方『半沢直樹』は、初回から世帯平均視聴率20%越えをキープ。最終回では32.7%とネット全盛時代としては考えられない視聴率を叩き出しました。しかも、全話20%越えは‘14年の『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(テレビ朝日系)以来。いまや”令和NO1ドラマ”の称号も勝ち取りました」(前出・ワイドショー関係者)

しかし、全米メガヒットドラマのシーズン2と『半沢直樹』の間に、なぜこれほど視聴率の開きが生まれてしまったのか。視聴率低迷は、決して第1話・第2話を強引に放送したことが直接的な原因ではない。

では一体どこで、『SUITS/スーツ2』は道を間違えてしまったのか。

「実は9月9日、有識者が番組について意見を交わすフジテレビ放送番組審議会の席で『SUITS/スーツ2』が議題に登り、『物語の流れや人間関係が複雑で理解できないまま進んでいる』といった辛口の意見も上がった。それで、最終章がスタートする第11話は撮影が終了していたにも関わらず変更作業を行い、現場は対応に追われていたようです」(制作会社プロデューサー)

アメリカの人気ドラマシリーズをリメイクした『SUITS/スーツ』は、スタイリッシュな映像とウィットに富んだ会話劇がウリ。しかも1話に詰め込むプロットが多く、元々、日本のドラマとはなじみ辛い。

しかしシーズン1では、中島裕翔演じる天才的な頭脳を持つニセ弁護士の正体がいつバレてしまうのか、ハラハラドキドキ。ある意味、格差や世の中の閉塞感にジレンマを感じる視聴者に好感を持って受け入れられたとも言える。

では、シーズン1とシーズン2の決定的な違いは、一体どこにあるのか。

「シーズン2は、シーズン1に比べると明らかにアメリカのオリジナル版に近い。これは、『改めてアメリカ版のシーズン2を見直して見るとよくできている』『そのまま行けるところは変える必要はない』『シーズン2では、なるべくオリジナル要素を生かそうと思っています』と放送開始前に話す後藤博幸Pのコメントからも明らか。シーズン1が二桁視聴率を獲り、『スーツ』の世界観が認知されたと判断して、オリジナルの面白さで勝負しようと考えたのかもしれませんが、これが命取りになりました」(前出・制作会社プロデューサー)

さらに、弁護士事務所のスタジオセットに目を向けると、備え付けられた高級感あふれるソファーやデスク、ファッションに目を奪われる。しかしコロナ禍の今、果たしてそれがプラスに働いたのかどうかは、甚だ疑問が残る。

うがった見方をすれば、ドラマ自体が「富裕層たちの口喧嘩」と受け取られかねない。やはり、オリジナル要素を生かそうとしたシーズン2の選択に、誤りがあったと言わざるを得ない。翻って「半沢直樹」は、どうなのか。

「『半沢直樹』が目指したのは、演出を手掛けた福澤克雄監督曰く黒澤明監督『用心棒』の現代版。‘61年に公開され、興行的にも成功を収めた『用心棒』のストーリーはいたってシンプル。街にフラリと現れた素浪人・桑畑三十郎が、敵対する悪党たちを同士討ちさせるという理屈抜きの娯楽作品です。

福澤監督はこの作品を念頭に置いていたからこそ、『半沢直樹』では、ただひたすら”倍返し”をする面白い活劇を作ることに終始。その軸は、前作から7年後に作られた今シリーズでも、まったくブレていません」(前出・制作会社プロデューサー)

言い換えれば、福澤克雄氏の黒澤明監督の『用心棒』に挑む覚悟が変わらなかったからこそ、『半沢直樹』はコロナ禍で沈みがちな世相を吹き飛ばす大ヒット作となったのではないか。

泣いても笑っても、『SUITS/スーツ2』もあと2回。シーズン3を目指すためにも起死回生の一手が待たれる。

  • 島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓

  • PHOTO濱崎慎治

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